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ちょっとそこの異世界まで  作者: 三毛猫


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お試しにも程がある 178

 「買い物?こんな時間に?」

 「そう、皆で買い物に来たんだ。

 そっちももうすぐ始まるんだろ?

 みさともお仕事ご苦労さん、頑張っとくれ。」

 「はーい!」

 どうやら3人は、事前に知っていて包丁買いに来たようだ。

 開始を待つように、3人でおしゃべりし始めた。

 それに触発されたかはわからないが、何か準備しているので気になって立ち止まる人も増えてきた。

 中休み始まって少しして、やっと開催。

 笑顔で登場のチェイサーは、よく通る声で実演販売を開始した。

 「さぁさぁ皆様お立会い!」

 音楽を流しているわけではないが、明るい雰囲気になりテンポよく進める。

 包丁の切れ味を試している時にはかなりの人集りが出来ていた。

 俺は観客の方を漠然と見ていたが、シビックは1点に向けて顔を動かす。

 その時、みさとから念話も来た。

 (たっくん、聞こえる?

 一番後ろでさ、迷子っぽい子供に男の人が話しかけてるんだけど、なんか様子がおかしい気がする。)

 (そうなの?)

 (みさとの見立て通りじゃないかな。

 あの男からは悪意を感じる。)

 (シビックがそう言うなら、人攫いかもな。

 もしかして例のかも。)

 その間にもチェイサーの実演は進み、殆どの客の目はチェイサーに釘付け。

 丁度お試しになりたい人はという流れの時だった。

 「一番後ろの、白いリボンのお嬢さん、お試しになりますかぁ?」

 みさとは大きい声で語りかける。

 同時にシビックもパタパタ飛んでいき、その子のもとに向かう。

 一瞬にして、子供に注目が集まる。

 近くにいた男は、バツが悪そうにその場を離れた。

 シビックがその女の子を壇上まで連れて来る。

 大きな拍手が上がり、女の子は笑顔でチェイサーと話し始める。

 台が高いので、みさとが女の子を抱えてトマトを落とせる位置にする。

 無邪気にトマトを落とすと、スパッと切れた。

 ここでも大歓声が上がる。

 半分に切れたトマトを、チェイサーがパクリ。

 もう半分は女の子が欲しがったので、どうぞと手渡した。

 女の子はトマトを食べつつ、バナナも食べたいので落としたいと言う。

 笑いが起こり、実際に試してそれも綺麗に切れてこれまた大歓声。

 切れたバナナは、女の子に進呈。

 ここでみさとは、女の子を少し上に抱き抱え、観客に向かって声を掛ける。

 「このお嬢さんの親御さんいらっしゃいますか?

 試し切りはお嬢さんには危ないので、お手伝い頂けますか?」

 その声に、父親が手を挙げ、壇上に向かう。

 女の子も「お父さん!」と言って抱きついてるので、間違いないだろう。

 落ち着いたところで、女の子は父親の作業が見える位置でみさとが抱き抱え、父親はチェイサーと共に試し切りを更に進める。

 パイナップル・固いパン・俎板と進み、観客はヒートアップ。

 ここぞとばかりに、チェイサーが畳み掛ける。

 「ドワーフ謹製・ルーン文字も入ったこの包丁、用意は20本しかありません。

 お一人様2本までとさせて頂きます。」

 値段を言ってさぁどうぞとなった時に、同時に3人が手を挙げた。

 「うちは2本買うよ!」

 「俺も2本くれ!」

 「私も2本下さいな。」

 カムリ・ラッシュ・ターセルの順で、次々購入の声が上がる。

 「ありがとうございます、どうぞこちらへ。

 残り14本になりました。」

 その後、一斉に列ができ、あっという間に完売した。

 「数量少なくてすみません。

 明日も同じ時間に行う予定なので、お越しください。

 割引なしの通常価格であれば、クレスタ商会での販売もする予定だそうです。

 そちらもどうぞ宜しく!」

 大きな拍手に送られ、チェイサーは壇上から消えていく。

 観客は、楽しい催し物だった、次回は買うぞなど口々にして、その場を離れていった。

 壇上の親子も何事もなく帰っていった。

 後片付けをして、全て持ってクレスタの事務所まで戻る。

 売上金も狙われること無く、無事に帰ってきた。

 「あの、途中で流れかえてしまってごめんなさい。

 あの子が危ないと思ったから、声掛けちゃいました。」

 事務所に着くなり、みさとはクレスタ達に謝った。

 驚く3人に、俺からも追加を伝える。

 「どうやら人攫いらしかったんだよ。

 父親ではない男が近寄っていて、声をかけたら離れていったし。」

 「そうだったの?全然気づかなかった。」

 「問題ないっすよ。

 ていうか、子供を壇上に呼ぶのはありっすね。

 周りも疑う目が少なかったし。

 いい雰囲気で進んだと思うし。」

 「みさとさん、犯罪が防げたのはとても良いことです。

 謝ることではありません。

 寧ろ、ありがとうございました。」

 クレスタ・チェイサー・マークツー、それぞれで声をかけてくれた。

 ホッとした俺は、余分なことを口にしてしまった。

 「明日はこんなことないといいね。」


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