お試しにも程がある 171
「次は何が出るかなぁ。
たっくん、まだまだ魔法試すでしょ?」
「そうだな、攻撃魔法を試さないとだよな。
思ったものがどう変化するか、人前では出来ないし。」
そう、考えた以上に効果のある魔法出ると、どう言い訳するかを考えなくてはいけなくなる。
最終的にはレジアスを巻き込もう、うん。
だが、残念ながら最終フロアに辿り着いたようだ。
ボスらしき腕4本の大きな魔物と、取巻きがワラワラ出て来た。
先程の3体合体よりも大きいので、同じ魔法が効くのか試したい。
周りの取巻きは、固まっててもらう。
石化にしたかったが、砂化してしまった。
難しい。
木魔法を残るボスにかけると、あっさり大木になった。
今度は紫色の実が落ちてきて、袋に吸い込まれた。
勿論、取巻きの魔石も回収。
終わったな。
「終わり?遊んで良い?」
みさとはまた砂山を作りたいようだ。
折角だし、それも実験しようか。
「良いよ、山にしたら離れてね。」
「はーい!」
みさとはリュックから竹箒(いつの間に仕入れた!?)を取出し、庭掃除さながらに山にした。
落ちていた葉っぱも一緒くたに山にする。
気が済んだようで、俺の元に駆け寄ってきた。
「たっくん、お願いします!」
「おぅ、再生っと。」
かけてみると、取巻きの大きいバージョンだが、個体数が多かったのでボスより大きくなっている。
葉っぱも取り入れたからか、ボス成分も含まれている。
腕が6本に増えてるし…
これ、再生だけじゃなく強化版が作られてる?上位魔法?
これも木にしちゃえ。
サクッと2本目の大木が出来た。
さっきより濃い目の紫の実が落ちて、吸い込まれる。
見ていたみさとは、ニコニコしながら拍手している。
「ねぇたっくん、両方砂化して合体させたら、もっと大きな魔物になるかな?」
「恐ろしいこと考えるね、みさとさん。
やってみたいの?」
「うん!」
出た、みさとの好奇心。
やらないと気がすまないよね、わかってる。
諦めとともに、2本の大木を砂化。
大量の砂を、みさとがせっせと1つの山にする。
再生したら、天井に届くんじゃなかろうか。
「確認だけど、再生したらまた木にすれば良いのかな?」
「その通り!何色の実が落ちるかな。」
無邪気な顔で見つめてくる。
杖を向けて再生・かなり大きな魔物になった。
慣れてきたので、そのまま木魔法。
広いフロアの天井を覆い尽くさんばかりの大木になった。
落ちてきたのは、大きくはないけど澄んだ紫色の実。
自動取込されてから、改めて取出す。
「さっきの赤い実よりは、ちょっと美味しそうかも。」
シビックが呟く。
「食べる?
1回増やしてからでいいならあげるよ。」
「味見だよ、味見。
ひと口頂戴。」
「いやお前、ひと口で終わるだろ。」
ウエストポーチで増やしてから、1つ渡す。
口を開けていたのでそのまま入れると、ポリポリ豆を食べているかのような音がした。
「うん、これならイケる。
貰ってたお菓子よりは落ちるけど、美味しいよ。」
んー、魔石にも品質があり、良いものは美味しいのか?
強そうな魔物倒した方が、美味しい魔石が落ちる?
シビックが美味しそうに食べるので、俺も取出して口に入れてみる。
何も味はしないし、硬くて噛めない。
「食の好みは人それぞれか。
俺には食べられないな。」
口から出して、拭いてからウエストポーチにしまう。
その動作を見ていたシビックは、しょんぼりした声で呟いた。
「僕にくれても良かったのに。」
「まだ食べるんかい!」




