お試しにも程がある 169
「これ、冷たい通り越して手が痛いよ。」
「みさと、触るのやめなさい。
この魔物の性質かな?」
俺も改めて触ってみる。
手は濡れないし、確かにピリピリする。
これって…
「ドライアイス?」
バラバラになった物たちから、白煙が立ち昇る。
こんなのでも鑑定できるのか?
元の魔物は、毒持ちではない。
今の状態は、ドライアイス。
俺、ドライアイスになるように考えてなかったけどな。
「ねぇシビック君、鑑定使えるよね。
この杖の最後が伏字になってて俺は読めないんだけど、読める?」
「ん?上位魔法になるってやつ?」
「あーそうなんだ、勝手に上位魔法になるんだ。」
なんてこった。
気を付けて使わないと、大惨事になる。
残念だけど、封印かな。
でも待てよ、勝手に上位魔法になるなら、どんな物があるか試したら面白そう!
「シビック先生、上位魔法って難しいの?」
「天界では普通に使われてるからな、よくわかんないや。」
基準そこかよ!
「人間では使わないのかな、使えないのかな。」
「でも拓海はできたんでしょ?いいじゃん。」
後でレジアスに相談だ。
保留ということで、杖はもう少し使ってみよう。
壁に魔法かけたら、また怒られるかな。
魔物でてこい。
進んだ先で出て来た魔物に、今度は風魔法。
竜巻か鎌鼬みたいな感じかなと杖を向けたところ、細切れになった。
ちょっと大きな賽の目がその辺にゴロゴロ落ちている。
血が出ていないのが不思議だが、現実感がない。
後ろのみさとに目を向けると、パチパチと拍手している。
「たっくん凄いね、瞬時に細切れだね。」
「うん、ありがとう。
ここまで意図してはいなかったんだけどね。
これも上位魔法になってんのかな?」
「上位魔法って凄いんだね。」
シビックを見るが、欠伸している。
「上位って言ってもさ、使用している魔法の1つ上ってことじゃない?
例えば5段階中3までしか使えないなら4になるし、5まで使えるならホントの上位魔法になるし。
拓海は5まで使えるからホントの上位魔法になるだけだよ。
誰もが上位魔法使えるようになる杖ではないから、安心して。」
「流石シビック先生、勉強になります。
例えがわかりやすい。」
「おやつくれてもいいんだよ。」
「了解、レクチャー料だな。」
俺はウエストポーチから、3つおやつを出して渡した。
シビックは器用に持って、もぐもぐしている。
残るは土と木か。
火はヤバそうだから、外でやろう。
渡したおやつが終わったらしく、追加をみさとが与えている。
「色々教えてくれてありがとね。
私も食べたいから、一緒に食べようか。
たっくんも一休みしない?」
水分補給も必要なので、そろそろいい時間かも。
「そうだね、そうしようか。」
俺の返事を聞くやいなや、座っておやつとペットボトルを人数分取出す。
シビックも上手に飲めるようになっている。
みさとは、歩きながら飲むのが苦手なので、座ってから蓋を開ける。
以前は蓋が硬くて開かなかったことがあるが、今では力を入れ過ぎないように気を付けて開けている。
先に開けたものをシビックに渡し、みさとは自分のものに取り掛かる。
俺も自分のを開けて、水分を取る。
おやつも齧りながら、周りをキョロキョロ。
「大分降りてきた筈だけど、まだ魔物出るかな。
土と木の魔法も試したい。」
「出るでしょ、きっと。
ラスボスフロアに着いてないし。
今回はたっくんにお任せだよ。」
「おぅ、任せろ。
どんなふうに魔法が変化するかも楽しみだ。」
「上位魔法止まりだよ。
超位魔法にはならないから大丈夫。」
「「えっ?」」




