お試しにも程がある 168
「気を取り直して行きますかね。」
「でもさぁ、踏破しちゃったら、反対側行けないんでしょ?
ちょっと残念。」
俺とシビックの会話を聞きながら先に進んでいたみさとが、未練ありそうな発言。
「まぁまぁみさと、次の迷路も楽しめばいいじゃん。
クリア後直ぐ入ったら、まだ来るなとか言われそうだけど。」
「どうやって直すんだろうね?
ツクール的な感じかな。
罠増やされないと良いね。」
「罠増やされても問題ないでしょ、俺達ならね。
他の人には難易度増す感じかな。」
「他にもダンジョンあるなら、行ってみたいなぁ。」
「そうだな。
ダンジョン巡りも面白そうだ。
冒険者ギルドで聞いてみようか。」
のほほんとそんな話をしつつ、着実に魔物を倒しどんどん下に降りていく。
みさとも、剣は思い切り振らないように注意しているらしい。
他の剣にしないのは、あくまでも使いたい気持ちが優先なんだろうな。
「ねぇみさと、その剣他となんか違うとこあるの?
使ってみてどうかな。」
魔物を倒し終わってから聞くと、立ち止まって改めて剣を見つめ、みさとは首を傾げる。
「んー、切れ味良いのは間違いないかな。
後ねぇ、魔物の接近が以前よりわかりやすいかも。
気の所為だったらごめんね。」
「ほぅほぅ、成程ね。」
あ、鑑定すればいいか。
確かに宝剣になってる。
魔物の接近も罠の感知もしやすくなってるな。
身体強化も入っているけど、みさとには感じなかったか。
「良い剣貰ったね、みさと。」
「うん!
オデッセイ様に感謝だね。
たっくんの杖の方はどうなの?」
「あの水晶のついてる杖?
折角だから使ってみようかな。」
俺はウエストポーチから、貰った杖を取出す。
みさとは、剣を鞘に収めシビックを受け取る準備をする。
俺、杖を使っての魔法は使ったこと無いんだけどな。
後でレジアスに見せたらどうなるかな。
取敢えず鑑定。
効力増加・持っている人への魔法と物理攻撃無効化も付いてる。
伏字の部分もあるので、気になるところではある。
間違いないのは、ぶっ飛んだ性能であること。
こんなの簡単に渡しちゃ駄目じゃないかな、オデッセイ様…
みさとのも凄かったけど、シビック預かるお礼にしては過剰だと思う。
シビック、可愛がられているな。
「さて、使ってみますか。」
少し進み、待望の魔物が出て来た。
ダンジョン内だし炎系は良くないかな、取敢えず凍らせてみようか。
詠唱は出来ないから、魔物に向かって杖を振ってみる。
瞬間、魔物の氷像が出来た。
「え、何これ。」
「たっくんすごーい!」
待て待て待て、イメージした以上の効果を発揮している。
これが杖の力?ヤバいじゃん。
効力増加というか、倍増だな。
「シビック、今の普通だと思う?」
「拓海、杖の効果入ってると思うよ。
想像以上だったんじゃない?」
「そうだね。」
シビックは淡々と応えるが、それに冷静に応えてみせた俺はかなり動揺している。
これ、世に出しちゃいけないレベルだ。
使う人の能力の倍以上ってことかな。
そんな事を考えてるうちに、みさとが氷像をツンツンしている。
呆気なく崩れ落ちた。
「あれ、氷ってこんなに簡単に割れるんだっけ?」
俺が思っていたことをみさとも思ったらしく、先に言われた。
壊れた氷像の欠片を手で掬うと、つぶつぶと言うかサラサラと言うか、フロントガラスを割ったときみたいな粉々になっている。
「普通の氷じゃないよね。」
「上級の氷魔法になったんじゃない?」
「そんなのあるの?
知らなかった。
レジアスに聞いてみよっと。」




