お試しにも程がある 165
「助かったわ、みさとちゃん。
これ、今日の講習代ね。」
そう言うと、ターセルは金貨を1枚手渡した。
「えっ、こんなにですか?」
「そうよ、相談料と、材料費と、調理方法教えてくれたり、諸々のお礼よ。
受け取って。」
「こんなに、困りますよ。」
オロオロしながら俺を見るみさと。
「ターセルだけじゃないよ、うちからも貰っとくれ。」
「勿論俺もだ。
助かったよ、みさと。」
カムリ・ラッシュからも、同じく金貨1枚を手渡された。
「みさと、正当報酬ということで貰っとけば。
今後も皆さん相談しやすくなるでしょ。」
俺の言葉に、3人共頷く。
「みさとちゃん、新しいもの作るって、大変なのよ。
それを教えてくれるなんて、凄く価値があるのよ。」
「そうそう、みさとの料理は美味しいし斬新だし、何より売れるからね。」
「お客さんに喜んでもらえるものを提供できるのは、また来てもらえる呼び水だから。
真似する人が出てきても、元祖が1番と言われるように頑張るよ。」
3人からの言葉に、みさとも決心がついた。
「皆さん…わかりました、ありがたくいただきます!」
ぺこりとお辞儀をして、感謝を示す。
そして3人は、仲良くクレスタのところに向かった。
その日の数時間後、クレスタから念話が来た。
(拓海さん、クレスタだけど、今いいかな。)
(どうしたのクレスタ、大丈夫だよ。)
(デックスさんとこに転移をお願いしたいんだ。
うちの魔道士を連れて行きたくて。)
(了解。
今から行っていいかな?)
(お願いします。
デックスさんには、僕から聞いとくので。)
「みさと、クレスタのとこ行くことになった。
デックスのとこ行きたいんだって。」
「そうなんだ。
一緒に行こうかな、差入れしたいし。」
こうして、クレスタのところに向かった。
クレスタの元に向かうと、念話しているクレスタともう1人男性がいた。
おそらくデックスとの念話が終わったのか、話しかけてきたクレスタ。
「拓海さん・みさとさん、来てくれてありがとう。
早いうちにね、うちの魔道士だけで転移出来るようにしたかったんだ。
紹介するね、彼がうちの専属魔道士のピクシス。
ピクシス、こちらがいつも話してる拓海さとんみさとさんだよ。」
紹介されたピクシスは、俺達に向かって挨拶する。
「初めまして、ピクシスです。
お二人の話は予予伺ってます。
宜しくお願いします。」
「初めまして、俺は拓海、妻のみさとです。
こちらこそ、宜しくお願いします。」
俺は手を差し出し、ピクシスと握手をする。
「クレスタ、もう向かって良いのかな?」
「うん、デックスさんにも行くよって言ってあるから大丈夫。」
「じゃあ行こうか。」
クレスタ・ピクシスも含めて、転移する。
デックスは今日も作業小屋の方にいた。
「デックス、来たよ。」
「おぅ拓海、来たか。
クレスタ、製作は順調だぞ。」
「それは良かった。
デックスさん、包丁かなり売れそうですよ。
量産頑張ってね。
そうそう、うちの魔道士、ピクシス。
彼も転移できるから、今度は彼と来るからね。」
「初めまして、ピクシスです。
宜しくお願いします。」
「おぅ、俺はデックス、あっちはルクラ。
量も運ばないといけないから、宜しくな。」
「はい、頑張ります。」
ドワーフを目の前に、緊張の面持ちのピクシス。
クレスタからは何処まで聞いてるんだろう。
量も回数も距離も大変だろうな。
「みさと、差入れって言ってたっけ。
渡すんでしょう?」
「そうそう、さっき試しで作ったやつ一通り持ってきてみた。
お茶の時間にでも食べてくださいね。」
みさとは、リュックから色々取出した。
皆で味見した量なので、デックス達ではおやつくらいかな。
デックス達に持ってきたものだが、反応したのはクレスタだった。
「みさとさん?僕の知らない物ですが、どうしたんですか?」
「これ?あぁ、ターセルさん達が出店で出したいからなんか無いってことで、それぞれ作ってみたやつですよ。」
「卵・チーズ・豚肉かぁ。
出店用だから持って食べられるようにね。」
「お店で出すなら、サンドイッチはスープつけるとか、チーズ巻はケチャップかはちみつつけるとか、肉巻きおにぎりは黄身をつけるとかね。
これは、味見の時にも提案してますよ。
あれクレスタさん、肉巻きおにぎり出してた気がしましたが、無かったっけ。」
「生姜焼き入れたおにぎりは出しましたよ。
後は丼ですね。」
「肉巻きおにぎりのタレは、焼肉丼のタレですよ。」
「ふむふむ。
御三方の売行き見て交渉するか。
まぁ売れるよね、これは。
先に交渉しといて武道大会終わってから店のメニューにするか…」
すっかりお仕事モードに入ったクレスタ。
「もうひとセット分出しときますので、皆さんで仲良く食べてくださいね。」




