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ちょっとそこの異世界まで  作者: 三毛猫


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16/335

お試しにも程がある 16

 「レジアスさん、行動早いよね。」

 「長官なんてやってるお偉いさんだからな。決断力あるんじゃないかな?」

 

 話しながら家まで帰る。シビックは先に到着していて、おやつを食べていた。

 「二人共お帰り!」

 「シビックもお帰り。これからレジアスんとこ行くけど、一緒に行くか?」

 「面白そう、行く行く!」

 「私、お風呂だけ入りたい。」

 「移動は直ぐ出来るし、いいんじゃないか?ちっとも休めてなかったしな。」

 「追い焚きしてくる!」

 疲れているだろうに、パタパタ走っていくみさと。

 「お前も楽しんできたからホコリまみれなんじゃないか?」

 「水浴びで充分だよ。

 小さい体だと直ぐ済むしね。」

 「泡まみれにして遊んでやるぞ。」

 「甘い生クリームなら好きだけど、お風呂の泡は目に入ると痛いもん。いらないよ!」

 「じゃあ湯船にゆっくり浸かってればいいさ。」

 「冷たい方が気持ちよくない?」

 「お風呂の良さがわからないか。

 まだまだだな、シビック。」

 そんな会話をしながら、俺達もお風呂に向かった。


 サッパリして水分も取って、みんなでレジアスのところに向かう。

 (レジアス、そっちに行きたいけどどこに行けばいい?)

 (拓海、魔法庁には来たことないじゃろ。

 直ぐ家に帰るから、そっちに来てくれ。)

 (わかった。少ししたら行くね。)

 「最初にレジアスん家行くからね。」

 「はーい!荷物も持ったよ。」

 「おじさんのとこだと、おやつ出るかな?」

 「そんな暇ないんじゃないか?忙しそうだったし。」

 「まぁまぁ、行ってみようよ!小腹空いたらおやつ出してあげるからね。」

 「流石みさと、わかってるぅ!」

 「じゃあそろそろ行くぞ。」


 レジアスの家に着いた。レジアスも来たばかりなのか、執事にお茶を頼んでいるところだった。

 「お待たせ、レジアス。」

 「来たか、助かるよ。

 向こうに行く前に、今後の流れを話しておくかの。」

 執事が皆のお茶+お茶菓子を用意したあと、レジアスは話し始めた。

 「早速じゃが、先日拓海が提案してくれた転移装置を設置することになった。

 どの地方も検問場所は2箇所はあるので、両方に設置する。

 門番の前で操作・転移先もその場所にする。

 装置を持ち運ばれないようにすること、操作についても相談したい。」

 「なるほど。

 魔法を組込んだ水晶を用意して、それが核だとはバレないように大き目の金属の魔法陣で蓋して、動かない様にしたらどうかな。」

 「そうじゃな。金属板も浮遊で動かされないように、措置が必要じゃの。」

 「そっか。それはそれで魔法で留めておこう。」

 「ねぇねぇ、下から掘られたりしないの?」

 「おぉみさと、よく気がつくのぅ。

 その辺はどうじゃ、拓海。」

 「むむむっ断固阻止せねば。

 掘り返せない魔法?やってみないとわからないな。」

 「現地で試すとするか。

 では、今度は使い方じゃ。

 金属板に魔法師が乗ることで利用できるようにすれば、同時に複数人でも利用できると思うが、どうじゃ?」

 「そうだね、乗って行き先を指定することで移動できるようにしたいね。

 なんか、プログラム組んでるみたい。面白いね。」

 「プログラムとな?」

 「利用できるように仕組みを整えるのさ。

 なんとかなるんじゃない?行った先でやってみようよ。」

 「まぁ、拓海頼みじゃからのぅ、宜しく頼むよ。

 他に何か懸念点はないかの?」

 「材料は何処から調達?成型も必要だよね?」

 「成型は魔法陣含め任せるが良い。

 材料も確保してある。」

 そう言うと、レジアスは袖をポンポンと叩いた。

 「ふむ。できてるならさ、うちのバッグに入れれば増えるよ。」

 ニヤリとレジアスを見ると、ニヤリと返される。

 「そうじゃった。私のは機密書類まで増えるといけないから止めといたんじゃ。

 拓海、出すから入れてくれんかの。」

 そう言うなり、どでかい金属の円盤がでてきた。重そう…

 みさとが手伝って支えている。てかよく入れたよ、レジアス。

 「車が入るんじゃから、これくらい入るじゃろ?出し入れして数増やしてくれると助かる。

 実はの、数が用意できないから一部でのお試しの予定だったんじゃ。

 増えれば、全拠点に設置できるのぅ。」

 ついでとばかりに、下に置く用の大きな水晶も出した。

 「いくつあるのさ?」

 「4セットあるぞぃ。

 出し入れ繰り返せば、増えるんじゃろ?便利じゃな~。」

 このおっさん、最初からそのつもりだったな!

 しれっと出し終わっているあたりも小憎たらしい。

 「頼むぞ、拓海。

 私はその間お茶でも飲んでるかの。」

 「わかったよ。

 てかさ、レジアスも増やせれば修繕用とかにすぐ出せるんじゃない?

 サービスで増やせるようにするよ?何処がいい?」

 「袖は駄目じゃよ!危険じゃ。」

 「じゃあさ、箱とか引き出しとかで増えるように設定する?

 色んな在庫持てるよ。」

 「それはありじゃな。ふむ、この箱で頼むぞ。

 後で私もやってみるか。」

 水晶だけでも潰れそうな、小さな箱を出してきた。

 「これなら、机の引き出しに入れられるから大丈夫じゃろ。」

 「まさかこんな小さいのに入ってるとは、誰も思わないよね。」

 「そういうことじゃ。持運びも便利そうだしの。

 鍵のかかる引き出しにも入るしな。」

 なんだかんだセキュリティもしっかり考えているレジアス、流石長官。

 「増えるようにも沢山入るようにもしたから、お試しどーぞ。」

 「相変わらず早いのぅ、助かるよ。

 後で研究楽しみじゃわい。」

 満足そうに次々物を入れていくレジアス。ちゃっかりポーションとか杖とか、羽根ペンも入れてる。

 「やっぱ欲しかったんじゃん。

 便利だよね~。」

 「そ、そうじゃな。

 増え過ぎても困るが、普段から使う物なら大丈夫じゃろ。中も見えるしな。」

 「あのモノクルは魔王様に渡したんでしょ?あれも増やせばよかったんじゃない?」

 「私はもう見えるから、他の者に見せる為に用意は不要じゃろ。寧ろ見せたくないわい。」

 「そういうもんか。

 検問とかであったら便利かなと思ったけど。」

 「それをする事で、こういった持ち運びができるということを広めてしまうじゃろ。

 要は使いどころじゃな。

 できる奴がいるかは別として、研究されても困るしのぅ。」

 レジアスみたいのが他にもいるかもってことか。

 「了解。

 みさとが頑張って出し入れしてくれたから、もう増えてるんじゃない?」

 「頑張ったよ!

 増えたのも取り出して両方入れたから倍速で増えた。

 確認お願いしまーす!」

 「ありがとな、みさと。てか早かったね。」

 「だって、早い方が良いんでしょ?

 いっぱいコピーし過ぎたかな?

 多かったら、レジアスさんの予備の箱に入れてね。」

 「助かるぞぃ。

 早速だが、行くかの。」

 「何処に?」

 「まだ話してなかったか。

 各集落の検問所じゃよ。

 みさとが頑張ってくれたので、国中間に合うぞ。

 ありがとな、みさと。ほれ拓海、行くぞ。」

 「扱い違くない?まぁ良いけど。

 移動続きだと思うけど、みさとも行く?」

 「手伝えることある?なければお散歩というかお買い物行きたいなぁ。」

 俺はシビックを確認、頷くシビック。

 「買い物行っといで。

 シビックも一緒に連れてってね。」

 「みさと、おやつ買う?」

 「いいよシビック、目新しいの見つかると良いね。

 ご飯の買い物もするから、終わったら連絡して。良かったらレジアスさんも晩御飯一緒に如何ですか?」

 「おぉ、楽しみが出来たわぃ。

 早く終わらせてお邪魔させてもらうぞ。」

 「じゃあ、ぱぱっと終わらせて戻るからね、みさと。」

 「仕事は丁寧にやってね!気を付けて行ってらっしゃい。」

 挨拶を交わすと、レジアスに連行された。


 「 静かになっちゃったね、シビック。」

 「賑やかな二人が居なくなったからねぇ。」

 「じゃあこっちも出掛けますか。」

 執事に声をかけ、でていくみさと。

 レジアスの家は街の中心部近くなので、買い物もしやすい。

 まずはお目当ての胡麻を探す。既にナビに相談して、店もマーキングしてある。

 「ナビさん便利だよね。迷わなくて済むし。」

 「拓海が聞いたらびっくりだと思うよ。

 ねぇ、こっちで合ってるの?」

 「多分大丈夫だよ」

 キョロキョロしながら歩くみさとに、ナビが声を掛ける。

 『道が違います。10メートル後ろに戻り、右に曲がって下さい。』

 「あ、違うって、こっちだって。」

 「みさと、最悪帰りは背中乗せて帰れるからね。」

 「やだなぁシビック、私透明化出来ないよ?」

 「こんなこともあろうかと、拓海がこれくれたよ。」

 いつの間にやら、シビックはチョーカーようなもの(首輪!?)着けていて、きれいな石も嵌めてある。

 「いつの間に!可愛いねぇ。

どしたのこれ?」

 「僕は魔力あるから、この石あれば透明化できるって、拓海が言ってた。」

 「凄いね!さすがたっくん。

 でも大丈夫、今日は使わなくて済むよ。」

 「ホントかなぁ。」

 「あ、あれあれ、あのお店。

 いい香りしてきた。」

 少し進むと、香ばしい香り。店先で、みさとは店員に声をかけた。

 「すみませーん、この胡麻、全部下さい。」

 「え、お嬢ちゃん、胡麻って高いんだよ。お金持ってるの?」

 「ありますよ。金貨何枚ですか?」

 「ち、ちょっと待ってね、量るから。

 全部って言った?」

 「はい、全部って言いました。

 美味しいですよね。」

 「そーだねー、この袋にあるだけでいいかい?」

 「まだ在庫あるなら欲しいですが、無くなると困りますかねぇ。」

 「ははは…裏見てくるので、待っててもらえますか。」

 「お願いします。」


 店の中に消える店員。暫くすると、4人がかりで大きな袋を2つ持ってきた。

 「これで全部だけど、良いかな?」

 「ありがとうございます。お幾らですか?」

 「店で開いてる袋も含めて、金貨3枚だ。」

 「じゃあこれでお願いします。」

 みさとは布袋から金貨を取り出し、店員に渡す。

 「確かに頂きました。持って帰れるかい?」

 「大丈夫ですよ。あ、唐辛子もありますよね、忘れてました。

 それも1つ袋で下さい。」

 「お嬢ちゃん、お店のお使いかい?荷台はあるのかい?」

 「この子力持ちなので、大丈夫ですよ。」

 咄嗟にシビックを挿して、誤魔化す。

 リュックに入れるのは人目に付かないとこでしなきゃねと思い出した。

 「こっちは銀貨15枚だ。」

 「銀貨ね…これか、お願いします。」

 「毎度あり。重いから気を付けなよ。」

 「ありがとう。また来ますね。」

 シビックと2袋ずつ分けて持ち、人が少なそうな所に入る。

 人目が無いのを確認して、リュックに詰める。

 「危ない危ない、さっきまでたっくんたちが危険性について話てたの忘れてた。

 さぁ、次の買い物行くよ、シビック。」

 「あっちに美味しそうなお菓子売ってたから、行ってみようよ。」

「そうなの?良いねぇ。」

 またもキョロキョロしながら路地を出る。甘い良い香りがする方に足を向ける。

 

 その後ろから、付かず離れず着いてくる人影が3つ。

 みさとは気づいていないが、シビックはみさとが金貨で支払いしてる時から視線を感じてた。

 (やっぱり金貨での支払いは目を付けられるのかなぁ。

 みさとは全然気づいてないし、適当にあしらうか。)

 そんなことを考えながら、シビックはもらったお菓子を頬張る。

 みさとは、次に小麦粉を探しに行くようだ。


 そこでもまた大きな一袋で購入。

 この辺りは良い小麦が取れると、店の人が言っていた。ここでも、店のお使いと勘違いされる。

 「私が従業員っぽいってことかな?」

 「買う量の問題じゃない?

 周りは、手提げに入るくらいしか買ってないみたいだよ。」

 シビックにそう言われてみさとはキョロキョロすると、納得。

 お店の量りも、小袋が載る程度のもの。

 業務用に思われても仕方ないか。 

 

 買い物後、また人目を避けて小道に入ると、後ろから2人がついて来た。

 「おぅ姉ちゃん、店のお使いで金持ってるんだろ?重そうだから貰ってやるよ。」

 「黙って出した方が身のためだぜ。」

 そう言いながら刃物をちらつかせる男達。すると、挟まれる形でもうひとり出てきた。

 「逃げられねぇから大人しくしな。」

 脅してくる男達を、物珍しげに見るみさと。

 「ホントにいるんだね、こういう人たち。」

 「みさと、怖くない?面白がってる?」

 「そーだねぇ、いつもはたっくんが魔法でなんとかしちゃうから私出番ないし。

 やっと腕試し出来るかなと思ってね。」

 「そっか〜。無理そうなら手を出すからね。

 怪我すると僕が怒られるからやめてね。」

 「わかった、気を付けるね。」


 「おい、独り言は終わりか。

 そろそろ財布出せよ。」

 「お断りしまーす。」

 「痛い目みねーとわからねぇみたいだな。」

 「やっちまえ!」

 号令一下、3人で攻撃開始。みさとは動きを見て、受け流してる。剣を出したものか考えてるうちに、1人の鳩尾に拳が入ってしまった。

 倒れたのを見て、残り2人が躍起になる。

 みさとは面倒になり、残り2人も同じ方法で今度は狙って攻撃。

 終わった頃に、人が集まってきた。

 そそくさと小麦粉をリュックにしまい、倒れた3人を警備隊に引き渡して逃げるように立ち去る。

 まだまだ買物したいから、時間を取られるのはゴメンだった。

 

 気分転換におやつを仕入れてから、お肉と野菜を購入。

 やっと家路につけそうだ。

 ナビに道を聞きながら、てくてく歩き出す。

…確か時間かかるって言ってたな、ナビさん。

 そんなことを考えてると、シビックが声をかけてきた。

 「ねぇみさと、折角貰ったから透明化試したいんだけど、良いかなぁ?」

 「いいよ!私はこの間たっくんの魔法でも見えるようにしてもらったから、消えたかがわからないかな。

 周りがザワザワしなければ、成功じゃない?」

 「よし、透明化してから大きくなれば大丈夫でしょ!」

 シビックはノリノリで石に魔力を流す。

 みさとにはどういう仕組みか分からないが、じっとしているシビックを見つめる。

 少しして大きくなりだしたので、透明化したと考え周りをキョロキョロしてみる。

 何事もなく通り過ぎる人達を確認し、みさとはシビックに近寄る。

 背中に乗せてもらうと、みさとを透明化してからシビックが飛び立つ。

 周囲の疎らな人達は、突風が吹いてびっくりした以上の反応はなし。

 「意外にバレないもんだねぇ。」

 「成功だね、シビック!お家まで宜しくね。」


 

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