お試しにも程がある 156
「楽しかった、最高!
シビック、ありがとな。」
「偶にはこんなのもいいかな。
僕も楽しかったし。」
戻ってきた聡太は、興奮冷めやらぬ雰囲気。
そして手には、シビックの鱗を1枚持っている。
「あれ聡太、良いもの見つけたな。」
「これ綺麗だけど、シビックの鱗でいいのかな。
貰っても良い?」
聡太はシビックに問う。
「自然に落ちたやつだから、良いよ。」
「やったぁ!
ご利益のありそうなお守り。」
「ご利益って何だろね、たっくん。」
「きっと食いっぱぐれないのと健康じゃないかな。」
「どっちも大事だね、うん。
聡ちゃん、向こうの世界で人に見せちゃ駄目だよ。」
「わかってる、大事にしまっとくよ。」
デックスと同じように、キラキラした目で色んな方向から眺める聡太。
「聡ちゃんのバッグじゃ入らなさそうだね。」
ちらっと俺を見るみさと。
「みさと、自分でやらせた方がいいんじゃないか?
子供扱いは良くない。」
「たっくんだってさっきまで散々子供扱いしてたくせに。」
「聡太、俺達のみたいに何でも入るバッグにするなら、自分で試したらどうだ。」
「父さん達のは、父さんやったんだよね。
じゃあ、何でも入って、増えるのも良いと思ってたんだ。
あとは、他の人から見られてもわからないようにとか、盗まれても戻ってくるようにとかかな。
あと、入れたものをうちの机の引き出しからも取り出せるようにしたいな。」
付与したい効果を考えつつ呟く聡太。
「やだこの子、たっくんより上手だわ。」
「流石現代っ子というところか。
発想が豊かだな。」
俺もそうだが、魔法が発動しても光も何もでないので、変わったかがわからない。
「出来たかは、実際に入れて試してみれば良い。」
聡太は素直に、先程貰ったばかりのシビックの鱗を入れる。
ショルダーバッグより大きいものだが、難なく入った。
更に取出してみて、もう一度手を入れてもう1枚取出す。
「2枚になった、出来てるよね?」
「うん、出来てる。
良かったな。」
俺は鑑定で確認、言った通りの効果がついていた。
「じゃあ出来た記念に、これをあげよう。
忘れた頃にザクザクになっているといいな。」
ウエストポーチから、今日購入したままの金の延べ板を1枚渡す。
小さいものだが、塵も積もれば何とやら。
比較的値崩れはしにくいはずだから、忘れた頃に換金すればいい。
「ありがとう、父さん。
こんなの持ってたんだ、やるなぁ。」
「お前を迎えに行く前に買ったやつ。
その前の日も買ったかな。」
「おぉ、小金持ち!」
「ほら、増えてたあれで買ったんだよ。」
「あぁ、自販機使えるか試したってやつ?
これ自販機なんだ、そっちがびっくりだよ。」
「金貨とかも売ってたぞ。」
心温まる親子の会話を楽しんでいると、みさとがお茶の用意をしてくれてた。
「一休みしない?
それから、お散歩でも行こうか。
見て回りたいでしょ?聡ちゃん。」
「見たい!
さっきは上から見たけど、長閑な感じだったね。」
「そうだな、街中行けば賑やかだけど、この辺りは農業の方が盛んかな。」
「静かなとこ選んだもんね、たっくん。」
お茶もおやつも4人分用意。
シビックの隣りに座った聡太は、フォークで器用にケーキを食べるシビックに魅入ってしまう。
「可愛いなぁ、俺にも来ないかな、ドラゴン。」




