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ちょっとそこの異世界まで  作者: 三毛猫
15/263

お試しにも程がある 15

 「楽しかったね、たっくん。」

 「そうだね、魔王様にまで会えると思ってなかったけど。」

 「実験も成功して良かったんじゃない?」

 「何となく出来るかなとは思ってたからね。まぁ、迷子がでなくて良かった。」

 既に家の車庫・なんだかすごく久しぶりな感じの我が家。

 「お風呂入れてくるね!」

 そう言って動き始めたみさと。

 俺は、家の中で変わったことないか見て回る。結界も張ってあるし、荒らされた形跡はなし。良かった良かった。

 こっそりお茶でも入れとこうかなとキッチンに行くと、シビックがテーブルの上でうつ伏せになっている。

 「どうした、シビック。風邪でもひいたか?」

 

 ジト目で見返され、静かに喋りだした。

 「僕も飛びたいなぁ…大きくなって。」

 「うーん、気持ちはわかるけど見つかったら大事だぞ?」

 「車みたいに不可視化出来ないの?」

 「なるほど!やってみるか。試しに今かけてみていいかい?」

 「やってやって!」

 やっと起き上がっていつもの元気なシビックになった。

 シビックにかける前に、自分には不可視化しても見られるように念じておく。

 これで済むなら、魔法って言えなくない?

 『以前からかかっていますので、更に強化版にしました。』

 そーだっけ?まぁナビがお墨付きをくれたので、大丈夫かな。

 「じゃあいくよ!」

 不可視化をかけて、見えなくなったシビック。生物にもかけられるんだ、凄いな。

 「僕見えなくなった?どぉ?」

 「みんなには見えないけど俺は見えてるからな。まだ外に行くなよ。折角だから俺も乗りたいけどどうかな?」

 「良いよ!みさとはどうする?」

 「もうすぐ来るから聞いてみよう。」

 「呼んだ?」

 いいタイミングで戻ってきたみさと。

 シビックと空中散歩しに行く話をすると、大喜び。

 「前回は一人で乗ったから、たっくんと一緒は初めてだね!」

 「そうだね。落ちないようにもしないと。」

 「シビックくんは何処行ったの?」

 キョロキョロするみさと。ちゃんと見えなくなっているな。

 見えないのを良いことに、シビックはみさとの周りを飛び始めた。

 それを察知してみさとが手を伸ばすと、あっさりシビックは捕まった。

 「ねぇ、ほんとに見えてないの?大丈夫?」

 「うわぁ、シビックいた!びっくりした。」

 「あ、見えてないのに捕まえたんだ。凄いねみさと。」

 「風が動いたし、何だろうと思ってね。このいたずらっ子め!」

 「みさと、待って!不可視化かけたのは拓海だよ!僕が出来る訳ないじゃん。」

 「ん?たっくん共犯?」

 「人聞き悪いなぁ。シビックが大きくなって空飛びたいって言うから、騒ぎにならない様に不可視化かけてみたんだよ。

 だから一緒に乗りたいなって話。」

 「そっか!じゃあ行こうよ。」


 皆で裏庭に行き、人がいないこと確認。

 シビックが大きくなって、二人で乗って落ちないように魔法をかける。もちろん不可視化もかけて、大空に飛び立った。

 「シビック凄〜い!気持ちいい〜!」

 「車とは違っていいね。街が小さく見えるよ。」

 「やっぱ自由に飛べるのいいなぁ~。私も飛べないかなぁ。」

 「みさとは遠くに行き過ぎて帰り道わからなくなるから駄目だよ。

 帰って来るの1週間後とか嫌だからね。」

 「見える範囲ならいいじゃん!」

 「何処かで落ちたらどうするの?魔法覚える?」

 「ねぇ、折角気持ちよく飛んでるんだから背中で喧嘩しないでよ。」

 「喧嘩じゃないし…」

 「ごめんごめん、シビックは自由に飛んでていいんだぞ。

 運転しないとこんなに自由なんだな。

 これはこれでいいなぁ。」

 「そろそろさぁ、僕ひとりで飛んでもいいかな?楽しめた?」

 「楽しかった!また乗せてね。」

 「ありがとうシビック、じゃあ転移で帰るからゆっくりしておいで。」

 「ご飯作って待ってるよ。」

 「わ〜い!お腹空かせて帰ろう!」

 シビックは宙返りやスクリュー回転し始めた。

 慌てて俺は転移魔法で家に帰った。

 

 「楽しかったね!」

 「たまにはいいかな。」

 「お風呂できてると思うよ。」

 「じゃあ入ってからご飯にしよう。」

 「シビックくん、大きくなった途端大はしゃぎだったね。」

 「最近ずっと小さかったしな。

 文字通り羽を伸ばすのもいいんじゃないか?」

 「家の中じゃ狭いしね。」

 「好きな時に大きくなられたら、たまったもんじゃない。

 帰ってくるまではゆっくりしようか。」


 そんなタイミングを見計らったように、ドアノックの音が来客を知らせる。

 「こんにちは!いるかい?」

 お隣のカムリさんだ。チーズとバターが売れて大忙しと言ってたな。

 「こんにちは、カムリさん。ご無沙汰してます。どうしたんですか?」

 「いやなに、新商品考えているんだかアイデアがなくてね。

 みさとちゃんならどうかなと思って頼りに来たのさ。」

 「カムリさんこんにちは。

 牛乳を使った新商品ですか。いちごミルクとかコーヒー牛乳とかどうかな?

 冷やしながら撹拌は難しいからアイス系はなしかな。

 あ、キャラメルはどうかな?甘くて美味しいよ!」

 「キャラメル?何だいそれ。」

 「柔らかい飴みたいな…分かりづらいから食べてみて!」

 そう言うとキッチンに向かうみさと。カムリも一緒に連れて行く。


 「材料は牛乳・砂糖・バター。

 焦がし過ぎないように根気よく混ぜる。

 ある程度したら火から下ろして、広げて冷まし固める。

 冷えたら一口大にして包めば終わり。」

 事もなげにやって見せるみさと。

 冷やしている間には、いちごミルク・バナナミルク・コーヒー牛乳も作ってお試し。ミキサーないから、細かく刻んだものを牛乳に入れて瓶でシェイク。

 キッチンは甘い香りに包まれていった。

 

 「この飲み物は美味しいねぇ、流石みさとちゃん!

 瓶と果物と牛乳で出来るから、入れて渡して自分で振って完成させてね~って感じかねぇ。」

 「それ有りですね!自分好みに出来るし小さい子でもできるかも。」

 「コーヒーは半々くらいかな。

 あんまり苦いと嫌厭されるけど、これくらいならいい感じだよ。

 砂糖はお好みで決めてもらえばいいし、甘くないのも選べるしね。

 「食事やお菓子と一緒に飲めそうだねぇ。」

 「瓶だと持ち運びもできていいね!まぁ、材料用意すれば自分でもできちゃうけど。

 切ったり潰したりが手間くらいかな。

 どう?カムリさん。」

 「もちろん採用!

 そのキャラメルとやらも早く試したいねぇ。」

 「たっくん、冷やせる?」

 「いいけど、急速冷凍になるよ。」

 「凍らない程度でお願い!」

 「はいはい、やってみるね。

  カムリさんとこは冷蔵庫あるよね?」

 「拓海君に作ってもらったからあるよ。

 実はさ、部屋ひとつ分くらいの大きいのが欲しいと思ってるのさ。

 どうだい、できそうかい?売ってくれると嬉しいんだけど。」

 「じゃあこのあとそっちに行こうか。

 見てみないとわからないしね。」 

 「そうかい、ありがとね。

 いや今日は来てよかったよ。最近留守がちだろう?」

 「何回か来てくれたんですか?すみません。」

 「いやいや、こっちは相談事だからね。」

 監視カメラ的な物を作れば、来訪者がわかるか。知り合いに何回も足を運んでもらうの悪いしね。

 

 向こうは向こうで便利だったんだな。魔法はないから判断難しいけど。スマホとか全然触ってないし。あー、ゲーム途中だったなぁ…


 そんなこと考えているうちに、キャラメルは冷えてきた。みさとが包丁持ってきて切り分ける。

 一口サイズのものを皆で口にいれる。

 「なにこれ、美味しいねぇ!」

 「なかなか上手く出来たみたい。良かった。」

 「流石みさと、上手だね。」

 「早速だけどさぁ、これ売り出していいかい?」

 「その前に、これを包む紙を用意しないとね。温度高いと溶けやすいし、くっつかない紙があるといいんだけど。」

 「チーズ包む紙じゃだめかね。」

 「どんなのですか?」

 「これさ。つるつるしてて、油も付かないんだよ。」

 「これはいいですね!試しに包んでもいいですか?」

 「もちろん!帰れば沢山用意あるから、使ってみて頂戴。」

 みさとは手頃なサイズに切って、いくつか包んでみる。

 少ししてから開けてみると、きれいに取れる。

 「これなら問題ないんじゃない?どう、たっくん。」

 「大丈夫そうだね。カムリさん、どうですか?」

 「いい感じだね。包むのに手間がかかりそうだけど、やってみようかね。」

 「これで売れるなら、パンケーキ・生クリームにかけてもいいし、チーズケーキに入れてもいいよね!美味しそう。」

 「そんなことにも使えるのかい?」

 「硬さを調整すれば、ソースとかジャムみたいに使えるよ!プリンのカラメルの従兄弟かな。

 もちろん、カラメルの濃いバージョンで混ぜたりかけたりでもいいし。」

 従兄弟か再従兄弟か知らないけど、作る工程は少し似てる。成る程ね。

 「チーズケーキの新味出せるのはいいねぇ。また売れて忙しくなるよ!

 やっぱり大きい冷蔵庫必要だねぇ…」

 俺を見てくるカムリさん、わかってるよ行きますよ。

 「じゃあ、早速カムリさんとこ行く?」

 「そーだね、行こう!」

 「助かるよ、値段も言っとくれね。」

 「大きさ見てからね。」

 シビックにおやつと共に置き手紙をして、出掛けた。


 以前見たときより格段に大きくなってる建物。中を見ると、最早工場。その中の大きめの一室を希望された。

 「魔法使える人居るなら、温度調節出来るようにもできるよ?」

 「残念ながら居ないんだよ。ずっと同じ温度でいいから、少し低い温度で頼むよ。」

 「わかった。チーズケーキや生クリーム・バターの保存かな?」

 「そうそう、作り置き難しくて。」

 「今度は販売する店の方にも冷蔵庫必要になるね。」

 「おや、そっちも販売するのかい?宣伝は任せてよ。」

 「直接はやらないけど、考えとくよ。」

 そう言いつつ、大きめの水晶を天井に付けて、永続的に動くよう魔法を組込む。

 直ぐ様部屋はヒンヤリして、寒いと思える程になった。

 「助かるよ。今まで通り商品置いとけるし、冷蔵庫よりたくさん置けるよ。

 お茶用意するからゆっくりしてって!」

 

 お茶とお茶菓子を持って、カムリが入ってきた。俺達の前とカムリの前と、それぞれ置いていく。

 「いやー助かったよ!ありがとね。お代はちゃんと言っとくれ。」

 「どれくらいが妥当なんだろうね。よくわからないから決めてくれていいんだけど。」

 「じゃあ大奮発して金貨5枚でどうだい?何かあったら調子見に来てくれるだろ?」

 「毎度あり。それでお願いします。

 カムリさん商売繁盛してるんですね。」

 「おかげさまでね!これでもっと稼げるよ。

 冷蔵庫普及したら、もっと売れるかもね。」

  カムリはそう言いながら奥へ戻り、金貨を持ってきた。

 「支払いはこれでいいかい?」

 「確かに頂きました。」

 「カムリさん、このクッキーバターきいてて美味しいね!」

 「そうだろう?こっちはチーズ入れてみたよ。仕事に来てくれてる人たちにおやつで出してるのさ。」

 「これ売ってるの?」

 「いやいや、おやつだしね。その日食べるくらいで湿気ないうちにしないとだし。」

 「そっか。美味しいのに。」

 「カムリさん、バターやチーズの取引先の人に試してもらえば?

 小分けにしたら店先にも置きやすいし。

 数量限定にして売り切るくらいしか出さないとか。」

 「数量限定にすれば、買えなかった人は次こそってなるかもね。私ならそうするな。」

 「なるほどねぇ。少し多めに作って、やってみようかねぇ。」

 「さっきのキャラメル入れたクッキーも美味しいよ!」

 「何でも使えるねぇ。試してみるか。ありがとね!」

 「こっちのチーズ入ってる方は、香ばしいね。甘過ぎないのもいい。」

 「そうだろう?チーズは細かくしたのが入ってるんだよ。」

 「カムリさん、チーズだけで焼いてカリカリにして食べたことある?」

 「チーズはとろけるからカリカリにはならないだろ?」

 「それがね、なるのよ。試しに作ってみる?」

 和気あいあいとキッチンに消える二人。

 それも商品になるのかな。俺は味見係なのでお茶飲みながらゆっくり待つことにした。

 

 そんな中、レジアスから念話が来た。


 (拓海よ、今いいかのぅ?)

 (どうしたのレジアス?)

 (先日話してた例の転移魔法陣じゃが、検問の外に設置でまとまったわい。

 試しに設置したいのじゃが、手伝ってもらえんかの。)

 (わかったよ。今から?)

 (便利なモノは早い方がいいじゃろ?早速行かんか。)

 (みさとの用事終わってからで良ければ、向かうよ。)

 (もちろんじゃ。連絡待ってるぞ。)


 やれやれ、相変わらずせっかちだ。

 試すのは俺も吝かではないので、みさとに声をかけに行く。


 キッチンはチーズのいい香りでいっぱい。

 みさとが切り分けているところだった。

 「いい香りだね、進捗はどう?」

 「いいトコに来たねたっくん、味見してよ。」

 先に試していたカムリからはサクサク良い音がする。

 「これは美味しいねぇ、お菓子みたいだ。」

 「甘くないお菓子があってもいいよねぇ。」

 「俺、これ大好き!

 みさと、家でも作ってよ。」

 「いいよ。」

 「相変わらず仲いいねぇお二人さん。

 じゃあ、これも売れるかやってみるよ。

 ありがとね、みさとちゃん!」

 

 一区切りついたようなので、みさとにレジアスの件を伝える。

 みさとがカムリに念の為確認。

 「カムリさん、他は大丈夫かな?」

 「あぁ、助かったよ。

 みさと・拓海、ありがとね。さらに儲かるようになるからね!」


 


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