お試しにも程がある 142
「お安い御用だ。
クレスタ、他になければもう送ってくるけど、どうかな?」
クレスタは首を横に振る。
「何かあれば、水晶で連絡しますね。
後日、うちの魔道士連れていきますから、どうぞ宜しく。」
俺とデックス・ルクラで、ドワーフの国に戻る。
先ずは、デックスの作業小屋に着いた。
見慣れた景色に、ホッとするデックス・ルクラ。
そして、以前渡しておいた冷蔵庫を確認。
実は、面白そうということで、先に中に金属の箱型のものと、扉にも金属板の取付したそう。
ルーン文字の刻印もしてあり、デックスは便利に使っているとか。
「なくなっちまうのか。
まぁ、ルクラの嫁さんのためだもんな。
持ってけよ。」
「悪いな、デックス。」
そんなやり取りを聞いて、俺は提案する。
「2つにすれば、こことルクラの家と置けるよね。
どうかな?」
同時に2人に振り向かれる。
「出来るのか?そんなこと。」
「拓海だからな、何でもありなのか?」
「あはは。
ウエストポーチに入れれば、増えるよ。
じゃあ入れるよ。」
不審顔の2人を横目に、冷蔵庫をウエストポーチに入れる。
その後1つを取出し、元の場所に置く。
2つ目も取出してみせると、感嘆の声が上がった。
「スゲェな拓海、助かるぜ。」
「最悪出し入れすれば増えるなら、人増やさなくてもいいんじゃないか?」
デックスは素直な賛辞だが、ルクラには釘を刺す。
「それは駄目だよ。
俺が居なかったらどうすんのさ。
技術の継承のためにも必要だろ?
研究しながら作成は厳しいよ。
後任育成してそっちで作成して、自分達は研究したいんじゃないの?」
「お見通しかよ、やだやだ。」
「うん、人数は増やすよ、大事だし。」
開き直ったデックスに、白々しいルクラ。
「じゃあ、ルクラの家に行こうか。」
俺は考えた。
脳内共有できるなら、デックスとルクラが行ったことあるところに飛べるんじゃないかと。
ニヤリ。
「ルクラ、自分の家を想像してみてよ。」
「何だ、変なこと言うな。」
俺の言葉に反応して、考えてくれたようだ。
ナビ、行けるかな?
『可能です。
転移しますか?』
お願いします!
あっという間にルクラの家に着いた。
奥さんは出かけているらしく、誰もいない。
「ここ、ルクラの家で間違いない?」
「は、何で俺の家に?
何がどうしたんだ?」
見慣れた自分の家だが、キョロキョロするルクラ。
「冷蔵庫、何処に置く?」
「へ?じゃあ、この辺でも。
後で嫁さんに聞いて自分で移動させるよ。」
「ちゃんと嫁さんに言っとけよ。
内緒だぞって。」
「わかってるよ。」
置いた冷蔵庫の扉を開けると、デックスとルクラで入れたものがそのまま入っていた。
「増えるってこういう事か。
食べかけまでそのままだぞ。」
「デックス、それは持って帰れよ。」
中を覗き込む2人。
「俺は、嫁さん帰ってきたら説明したいから、このまま居るよ。
明日は、歩きだからゆっくり行くからな。」
「おぅ、わかった。」
そんな2人のやり取りで、思い出した。
「ルクラ、二輪型必要だよね。
これでいいかな。」
またしてもウエストポーチから取出し、床に置く。
「お前いくつ持ってんだよ、拓海。」
「俺用の刻印がないが、使って良いのか?」
「だって、デックスの家まで大変でしょ?
そのために作ったって聞いてたし。
どうかな?」
呆れ・感心・驚きと色々な表情ではあるが、嫌な顔はしていないようだ。
「そもそも俺のものではないし、改良版と比べるための試作品1号で置いとけばいいんじゃないの?」
「それもありか。
明日早く来いよ、ルクラ。」
「まぁ良いか、助かるよ拓海。」
良かった良かった。
忘れる前にもう1つ。
「それと、これはみさとからね。
かつサンド作ったので、作業の合間にでもどうぞって。
2つになってるから、デックス用とルクラ用で良いんじゃない?
奥様にも味の感想聞いてくれると嬉しいな。」
大きめの包みを、2つ出す。
ホントは2人に渡すはずだったから2人分ではあるけど、ドワーフはたくさん食べるしそれぞれで良いんじゃないかと勝手に思う。
「気が利くよな、みさとは。
ありがとうって言っといてくれ、拓海。」
「嫁さんと食べていいんだ、嬉しいよ。
ちゃんと感想聞いとくな。」




