お試しにも程がある 139
「そうでした、いけないいけない。
お2人と居ると、商売の発想が色々出てきて楽しくって。
自分で依頼しておきながら忘れるところでした。」
頭をかきつつ、クレスタは笑顔で応える。
「今回頂いたメニューは、とんかつ以外はうちの子達でも出来そうなので、そちらは原価含めやってみます。
なので、とんかつ教えてもらえますか?」
「わかりました、材料あるなら直ぐやりましょう。
とんかつ出来れば、カツカレーもカツサンドも出来ますしね。
お肉を鶏肉に変えれば、チキンカツも出来ますよ。」
「え、万能ですね、とんかつ!
豚肉と鶏肉もあるか、直ぐ見てきます。」
フットワークが軽いな、クレスタは。
そうじゃないと、商売は上手く行かないのかな。
少しして戻ってきたクレスタは、笑顔でみさとに伝えた。
「肉は両方ありますので、是非お願いします、みさとさん。」
「はーい。」
2人がキッチンに向かったあと、残ったシビックは俺に言った。
「そろそろおやつの時間じゃない?」
「おやつか。
出しても良いけど、味見分は入るのか?
寧ろ昼に近いからガッツリご飯になる可能性もあるけど。」
「そこらへんは任せて!
ちゃんと入るから。」
ちっちゃい体で胸を張るシビック。
仕方ないなぁと思いつつ、適当に4つ位おやつを出す俺。
シビックが食べ終わったら、キッチンに行ってみるか。
順調に指南が終わり、思った通り試食が昼ご飯になった。
とんかつ・カツ丼・カツサンド・チキンカツのカツ丼とサンドもある。
序とばかりに、ロース肉で生姜焼きも作り丼にしてある。
調味料はソース・マヨネーズ・マスタード・おろしポン酢もある。
紅生姜と一味も用意されていて、色々試せそうだ。食べようとなった時に、デックスから連絡が来た。
(おい拓海、聞こえるか?
先ずは大きい包丁から試して出来たんだが、後で来れるか?)
(わかった、連絡ありがとう。
早めに行くよ。)
(おぅ、待ってるぞ。)
うむ、どうしたものか。
「クレスタ、大きめ包丁出来たって。
いつ取り行く?」
「え、直ぐにでも行きましょうよ!」
「試食はどうするんだよ。」
「あ…」
悩むクレスタに、みさとが提案。
「ねぇ、2人もこっちに呼べば良いんじゃない?
一緒にご飯食べようよ。」
「そうしましょう!」
天啓が聞こえたクレスタは、俺の方を向く。
「拓海さん、2人共こちらに呼べますか?」
「おぅ、連れてくるよ。
待ってて。」
即座に消える俺。
デックスは返事が来ると思っていたのか、出来上がった包丁を眺めていた。
「ルクラ、いい出来だな。」
「おぅ、試してもらうの楽しみだな。」
「来たよ、デックス。」
現れた俺にまたもや驚くデックスとルクラ。
「ぎゃあ、拓海、脅かすなよ。
早かったな。」
「うん。
それでさ、2人共。
その包丁持って昼ご飯にしないか?」
「唐突だなおい。
まぁ、そろそろ飯の時間だしな。
行くか、ルクラ。」
「おぅ、行こうか。」
「そのデックスが持ってる包丁でいいのかな?
大きめ作ったのって。」
「あぁそうだ、早く試してほしくてな。」
「じゃあ行こうか。」
今度は3人でクレスタの家に戻る。
戻ると、みさととクレスタで、2人のための席と食器も用意いているところ。
「おかえりたっくん、早かったね。」
最初に気づいたみさとが、声をかける。
「ただいまみさと。
クレスタ、2人を連れてきたよ。」
「おかえりなさい、拓海さん。
デックスさん・ルクラさん、いらっしゃい。
お昼ご飯、一緒に食べましょう。」




