お試しにも程がある 137
「じゃあやってみるよ。」
材料はクレスタの家にあるもので、全て揃った。
「さて皆様お立ち合い。
切れない包丁でお困りではありませんか?
研がなくても切れ味が変わらない包丁って良いですよね。
そんな夢のような包丁が、これです。
何と、あのドワーフ謹製、しかもルーン文字の効果で切れ味抜群!
早速試してみますよ。」
ここで、普通の包丁と俎板とさつま芋を出す。
「先ずはさつま芋。
固いですよね、手が痛くなりますよね。
普通の包丁から試しますよ。
うん、固くて切りづらいね、両手で切っても大変だ。
では、ドワーフの包丁で切ってみますね。
はい、サクサク切れますね。
じゃあ次に、もっと硬い南瓜にしましょう。」
俎板の上の細切れさつま芋をボウルに避け、丸ごとの南瓜と交換。
「立派な南瓜ですねぇ。
中も詰まってそうです。
では先ず、普通の包丁からですね。
はい、途中で止まってしまいました。
全く歯がたちません。
包丁は立ったけどね。
それではお待たせ、ドワーフ包丁で切ってみますよ。
はい、サクッと切れました。
先程の包丁は立ったままですよ。
折角なので、何処まで切れるかやってみましょう。」
半分になった南瓜を断面を下にして安定させる。
「はーい、サクサク切れます。
玉葱やキャベツじゃないですよ、南瓜ですよ。
何と、こんなに薄く切れました。
見て見て、ペラッペラ。」
1切れ持って揺らしてみる。
「さぁ、このドワーフ包丁は固いもの専用ではありません。
今度は柔らかいものです。
トマト、切りづらくないですか?
皮が固かったり、柔らかくなりすぎて包丁が入らなかったり。
一応ね、普通の包丁でも試しますよ。」
南瓜から包丁を力を入れたように見える体で引っこ抜く。
「南瓜、固いですね。
抜くのも一苦労でした。
柔らかいものなら、この包丁でも行けると良いんですが…うん、潰れました。
残念ですが、後で美味しく調理してもらいます。
さてさて、ドワーフ包丁、行きますよ。
これもきれいに切れます、流石ですね。
軽い力でも切れちゃいます。」
包丁を持つ手だけで、トマトを切ってみせる。
「これだけ切れると、私の腕が良いと思われるかもしれませんね。
そこで、ドワーフ包丁の上からトマトを落とします。
普通切れないですよね、それだけじゃ。
じゃあ行きますよ。」
包丁の刃を上に向けて、切っ先だけ俎板に付け持ち手は浮かせた状態で、トマトを落とす。
切れたトマトを見て、驚くクレスタ。
「えぇっ、嘘!」
「はいそこの貴方、信じられないでしょう?
やってみましょうか。」
「え、僕が?」
「そうそう、是非お試し下さい、こちらへどうぞ。」
言われるがままに、クレスタは拓海の方に行く。
トマトを持たされ、同じように上から落とす。
「うわ、ほんとに切れた。」
「ほら出来た!スパッと音がしそうなくらいよく切れますね。
私の腕じゃ無かったでしょう?
面白くてトマト切り過ぎないでくださいね。
折角出てきてもらったので、他の物も試しませんか?
南瓜でもキャベツでも、固いパンでもお好きなのどうぞ。」
「じゃあ、キャベツにしようかな。」
「お客さんお目が高い!
丸ごとのキャベツ用意しました。
好きに切って大丈夫ですよ、後で美味しく調理してもらいますから。」
クレスタは裏返して、芯のところから切ってみる。
サクッと包丁が入り、驚いた表情。
良いお客さんだ。
「すごーい!」
無心に千切りキャベツを作っている。
「お客さん手慣れてますね。
力入れ過ぎて俎板切らないで下さいよ。」
「俎板を?まさか切れないでしょう。」
「じゃあどうぞ、お試し下さい。」
「えぇ、じゃあこの端っこあたりで…切れた!嘘でしょ。」
「はい、切ったのは私ではありません。
ね、切れたでしょう。
これくらい切れ味良いんです。」
切れた俎板の端を持ち上げ、周囲に見せて見せる。
「これだけ切れ味の良いドワーフ包丁は、勿論1本ずつ職人の手作りです。
ここに入ってるルーン文字も、同じく1本ずつしか入れられません。
なので、1日に作れる本数は数が限られます。
本日持ってこられたのは、10本のみです。
さて、最後にお値段ですが、ちょっとお高いです。
銀貨20枚です。
が、今来てるお客さんに限り、15枚で販売出来ます!
銀貨15枚です、10本限りです。
今だけですよ、さぁ如何でしょうか?」




