お試しにも程がある 133
「では、今日はお開きということで。
帰ろうか。」
「おぅ、色々試しとくから、楽しみにしといてくれ。」
沢山意見交換して、売れそうな商品も色々出たので、何処まで出来るか試すそうだ。
上手くいくようなら、売れること間違いなし。
売れ過ぎで製作が追いつくか心配な位だ。
先走っても仕方ないので、出来上がるのを待つしかない。
クレスタを家まで送り、唯一試作として作った切れ味の良くなる包丁も置いて行く。
「暫く使ってみないと分からないしさ、店の厨房で使わせてもらうよ。」
頬擦りしそうな勢いだが、包丁相手は怖いので止めて欲しい。
「結果名前決まらなかったけど、これも置いていこうか?
街中で乗り心地試したいでしょう。」
俺はウエストポーチから2輪車型の乗り物を出した。
「良いの?嬉しいなぁ。
気を付けて試すよ。
レジアス様もお試しになるのでしょう?」
「うむ、私も試すのが楽しみだ。
盗まれないようにだけ気を付けねばじゃな。」
「確かに。
折り畳んで持ち運べると良いかな。
後でデックスに聞いてみるよ。」
「それは良いね。
鍵が合えば誰でも使えちゃうから、気をつけないとね。」
「今日は時間ありがとう、クレスタ。
また行く時に声かけるから。
なるべく事前に声かけるけど、また急だったらごめんな。」
「いえいえ、いつも面白い提案ありがとう。
行く時は都合付けるから、必ず声かけてね。」
その後、レジアスを家まで転移で送る。
一緒に来たのは、試作品の包丁を渡すため。
1本しか貰わなかったけど、ウエストポーチで増えているのでこっそりお裾分け。
「無くさないのと、口外しないように宜しくね。」
「わかっとるわい。
こんな交流も楽しいのぅ。」
「次回もレジアス行く?
よかったら声かけるけど。」
首を横に振るレジアス。
「商売に関わるつもりは、毛頭ないのでな。
持運びは、私は袖に入るから良いが、やはり高い値段のものは狙われやすいから気を付けねばのぅ。
デックス達にも、宜しく伝えてくれ。
今日は楽しかったぞぃ。」
「それなら良かった。
デックス達にはちゃんと言っとくね。」
そう言って別れて、家に戻った。
家に着いてから、ウエストポーチから包丁を出し、テーブルに置く。
「はい、みさとの分の包丁ね。」
「え、まだあるの?」
「そりゃあねぇ、出し入れすれば増えるしさ。
みさとも使ってみたいでしょ?」
「ありがとう、たっくん。」
会話はなんてことない普通の内容だが、包丁を間にして微笑む俺達はちょっと不気味だったようだ。
「ねぇ、何を解体するの?
みさとも料理する顔じゃないよ?」
「やだなぁシビック、お料理にしか使わないよ。」
「そうだよな。
その気になったら、包丁以上に切れる剣あるしな。
そうだ、忘れないうちに、デックスに言っとかないと。」
(デックス、今いいかな?)
(あわわ、何だ拓海か、びっくりした。
何だ、どうしたんだ?)
(さっき俺の二輪型をクレスタに試運転用に渡したんだけど、無くさないように気をつけなきゃって話出たんだ。
言われてみれば、使えないようにロックとかかからないじゃん?
持運びできるように二つ折りにできないかなぁ。)
(何だ、そんな事か、出来るぞ。
何なら、軽量化も付けるか?)
(それ良いね!
二輪型は軽量化、三輪型は安定性も含めて少し重めかな。)
(そうだよな。
あの車もそうだが、下に重い物を置いて曲がった時も倒れにくくしてたしな。)
(そんなことまでわかるの?もしかして分解した?)
(バレたか。
一度分解して、確認後組み直した。
まぁ、大雑把な仕組みの部分しか分からんかったがな、ガハハハ。)
(凄いなデックス、職人を甘く見てたよ。
螺子とかパーツの外し方とか、色々あったろうに。)
(あぁ、戻すのも面白かったぞ。
よくあんなもん考えると、素直に思ったぞ。
俺も最終的には、大勢が乗れるものにしたいと思ってる。
大量に載せて運べれば、商売も楽だろうしな。)
もうトラックやトレーラーとかも考えてるのかな?
(大きな荷台を運べるくらいの、馬の代わりになるようなものを考えてるの?
確かに車なら出来るしな。)
(やっぱりそうか、良いぞ良いぞ。
まずは明日、片っ端から作ってみるからな。
出来たら連絡する、じゃあな。)
話から、デックスのワクワクが伝わってきた。
「次に行くのが楽しみだ。」




