お試しにも程がある 125
「おい起きろ、ルクラ。
何時までボケてんだ、仕事だ仕事。」
デックスがルクラを揺り起こす。
やっと目に焦点が戻ってきて、デックスの方を見る。
「デックスか、何か凄い夢を見たぞ。
魔石が山のようにあったんだ、ザックザクだぞ!」
「ルクラ、これを見ろ、現実だ。」
デックスは、ルクラの顔を魔石の山に向けた。
「あわわ、ほ、本当だったのか!
ヤバいぞデックス、俺達はとんでもないところに来ちまった。」
「落ち着け、来たのは奴らだよ。
俺達はずっとここに居た。
実験用に使ってくれとさ。
だから、良いものを作らないとな。」
「勿論、作るからには良いものを作るさ!
じゃなくてさ、これ、これは本物なの?
色付きの石じゃないの?」
「鑑定はお前の方が得意だろ。
ほれ、どうだ?」
まだ疑うルクラの手に、一掴みの魔石を載せる。
ひとつひとつまじまじと見るが、どれも本物。
しかも、大きくて質がいい。
「凄いなこれ、とても良いものだ。」
「そうか。
それを生かすも殺すもお前の腕次第だ。
提供者は頑張れって言ってくれてるが、どうするよ。」
「腕の見せ所だな!
これで発展すれば、ルーン文字も更なる研究対象になるだろう。
親父殿を見返してやる。」
何か積年の恨みでもあるのだろうか。
俺が首を傾げたらしく、デックスが心を読んだかのように解説してくれた。
「こいつはな、結婚した嫁さんの父親に、ルーン文字なんて廃れるから研究にも値しないと言われたそうだ。
全く、自分の得意分野を貶されるのは、本当に嫌なもんだ。」
そうか、皆色々あるんだな。
「そうなんだ。
じゃあ、今回の仕事は渡りに船なんじゃない?
成果を出して認知させればいい。
出来れば、俺達の国でも使えると嬉しいな。」
「そうじゃな、是非売って欲しいぞ。
安全面も考えんとな。」
やっと前向きになってくれた、良かった良かった。
みさとは何故か、リュックをゴソゴソとしている。
「そうと決まれば、先ずは腹ごしらえでしょ?
デックスさんもルクラさんもご飯まだみたいだし。
一緒に皆で食べようよ。」




