お試しにも程がある 123
「お土産ね。
前に魔石が動力源になるかもって言ってたじゃん?
試しに使えるかなと思って持ってきた。」
俺はウエストポーチから袋を出し、デックスに手渡す。
「え、まさか魔石?
おいおい、何持ってきてんだよ!」
袋を受け取ったデックスは、慌てふためく。
何か駄目だったのかな?
不思議に思いレジアスの方を見る。
頭を抱えたレジアスが居た。
「拓海よ、魔石の相場知っとるかのぅ。
かなり値が張るもんじゃ。
数にもよるが、普通は買うか魔物倒して手に入れるかじゃ。」
デックスもルクラも大きく首を縦に振る。
「でも、自分で採ったし、ねぇ?」
「ねぇ、じゃねえよ!
実験で使うのに用意するの、大変だったんだぞ。
そんなもんポンと渡すんじゃねぇ、怖い怖い。」
「折角持ってきたのに。
そうだ、実験にだけ使って、本番用は購入でどうかな?」
俺の提案に、レジアス・デックス・ルクラは固まる。
「なぁデックス、この人何処ぞのボンボンなのか?
魔石くれるとか聞いたこと無いぞ。」
「言いたいことは分かるぞ、ルクラ。
悪い奴じゃないんだ。
ただちょっと、箍が外れてると言うかなんというか…」
「え、何かやっちゃった?
レジアス、俺のフォローして!」
そんなやり取りを、みさとは微笑ましく見ていたようだ。
「ねぇねぇ、先ずはさ、使えるか見てみたらどうかな?
全部使えるかも分からないでしょ?」
「そ、そうだよね、みさと。
出して良いかな?」
ウエストポーチから布を取出し(毛布だった)、その上で袋を逆さまにする。
ジャラジャラと音を立てて、魔石が滝のように出てくる。
出切って山になった様子を見て、袋をしまう。
「デックス・ルクラ、どうかな?
実験で使えそう?」
みさとは中身を知っているから、ニコニコ見ているだけ。
レジアス・デックス・ルクラは、またもや固まってしまった。
魔石にそんな力あったっけ?
大きなため息をついたレジアスは、デックスの肩に手を置く。
「デックスよ、諦めて受け取っておけ。
これはただの石だ、そう思うが良い。」
「いやいやレジアス、そうは言ってもよ、限度ってもんがあるだろ。」
「あはは、そっか、ただの石か、色付きの石か。
あははは…」
「ルクラ、戻ってこーい!」




