お試しにも程がある 121
「やはり車はいいのぅ。
景色も最高じゃ。」
後部座席にいるレジアスは、我が家のように寛いでいる。
先日約束したドワーフの国に行くので、声をかけた。
進捗確認と言うよりは、材料提供に行くだけ。
動力源で魔石の話してたから、使うかなぁと思って。
ダンジョンで採れた魔石が、袋ごと増えてるのでじゃんじゃん実験してもらいたい。
「湖って、何も居なさそうだよね。
影すら無いし。」
「そう見えるだけかも知れんよ。
巧妙に隠しているだけで、実は国があったりな。
それはそれで行ってみたいのぅ。」
俺の呟きに、楽しそうに答えるレジアス。
海底都市か…確かに面白そう!
「何々、曰くでもあるの?」
「特に見たものは居ないそうだが、出ていった船が戻ってこないと言うのは事実じゃからな。
確認できたら大発見じゃ。」
「ムー大陸?それとも宇宙人?
どっちも凄くない?」
レジアスのワクワクを貰ったのか、みさとまで乗ってきた。
「水神様とかかもしれないよ。
高い所は罰当たりにならないかな。
ま、前回は何もなかったけどさ。」
適当な相槌を打つ俺。
こっそり前回よりスピード出してみているのは内緒。
タイヤは路面を走っていないのに、スピードメーターが上がっていくのはどういう論理なんだろう。
本当に不思議。
車に受ける風の抵抗をもって、スピード計算しているとか?
それとも空中でもタイヤが抵抗を感じているとか?
そんな事を考えながら、2人の会話を何となく聞いている。
「あれ、なんだろう?
ネッシー的な奴かな。」
「どれじゃ、みさと。」
「車の下の方…って、もう居なくなっちゃった。
気の所為だったかな。」
「ほれほれ、やはり何者かが居るんじゃよ。
私も見たいのぅ。」
ん?ナビ、ドラレコみたいに画像出せたりする?
『可能です。
全方位で画像取得してあります。』
おぉ、めっちゃ優秀!
先ずは脳内再生でお願いします。
出て来た画像を確認すると、ネッシーというか竜というか、何とも言い難い。
よく見えたな、みさと。
「多分これかな?
みさとが言ってた画像共有するね。」
みさととレジアスにも、同じ画像を脳内共有で見せる。
「あ、これこれ。
ネッシーっぽくない?」
「ネッシーとは何じゃ?
ドラゴンの様に見えるぞ。
拓海、戻って見てみるかのぅ。」
「いやいや、今日の目的そっちじゃないし。
ドワーフはどうすんの?」
「ドワーフは逃げんじゃろ?
こっちは次いつ見られるか分からんのじゃぞ!」
おいおい、本気か。
振り向きレジアスを見ると、目がキラキラしている。
あ、本気だった、レジアス。
「わかったよ。
同じ地点に戻って見つかったらでいい?
居なかったら最初の目的に戻るよ。」




