お試しにも程がある 117
「母ちゃん、お客さんだよ。
母ちゃんの料理食べたいって、作ってやってくれる?」
ソアラは家に着くと、大きな声で呼びかけた。
「あらあら父ちゃん、何ごとだい?
あーら、クレスタさん、いらっしゃい。
そちらがお客さんだかな?よく来たねぇ。」
「ポルテさん、こんにちは。
こちらはみさとさんと拓海さん。
例の街おこしの協力者です。」
「初めまして、ポルテさん。
みさとです、宜しくお願いします。」
「拓海です、宜しくお願いします。」
「あらあら、ご丁寧にどうも。
遠慮しないで入ってね。
お料理でしたっけね。」
「はい。
来る道すがら、ソアラさんからポルテさんの料理自慢聞いてましたよ。」
「あらやだ、父ちゃんたら。
田舎の料理だけど、食べてってね。」
「作るところも見たいので、一緒に作ってもいいですか。」
「あらぁ、助かるよ。
じゃあ一緒に来てくれるかい。」
お喋りしながら、2人で行ってしまった。
誰とでも仲良くなれるみさとは、凄いと思う。
あっという間に、男3人になってしまった。
思い出したように、クレスタが手を叩く。
「そうだ、豆腐の木枠返さないと。
ありがとうございました、助かりました。」
ゴソゴソと大きな袋から取出し、緩衝材にしていた布も外す。
「大事な仕事道具なのに、返すの遅くなってすみません。」
「いやいや、気にすんなって。
どうだい、旨かったかい?」
「はい、とても美味しかったです。
今日来てくれたみさとさんに料理してもらいました。
でも、そのままでも美味しかったですよ。」
「そら良かった。
豆の甘みがわかるからな。」
受け取った木枠を大事そうに擦りながら、ソアラは満面の笑顔だ。
「大豆もですが、水もこの辺りは美味しいんですか?」
俺は気になったので、聞いてみた。
「おぅ、あんたも詳しいな、拓海さんよ。
この辺は、山からの水が綺麗で事欠かんよ。」
「やっぱりそうなんですね。」
某グルメ漫画で、言ってた気がする。
ほんとに違うもんなんだ、凄いな。
知ったかぶりは程々にしとこう。
隣には、驚いた顔のクレスタ。
「みさとさんも凄いけど、拓海さんも詳しいんだ。
流石だねぇ。」
「いや、何となく聞いてみただけだから。
みさとやクレスタみたいに広く詳しくはないよ。
そういえば、豆腐だけじゃなくて大豆と枝豆も話聞くんじゃなかった?」
「そうそう、忘れてた。」
汗汗、話逸れて良かった。
それ以上は抽斗無いし。
「ソアラさん、さっきみさとさんとここに来るまでにしてた話なんですが、豆腐だけじゃなくて大豆自体も名産で扱っていい感じですかね?」
「そうだな、大豆から作られるもので括って良いなら、その方が色々あるぞ。
豆腐だけじゃ、地味だろう。」
まぁ、みさとは色々考えてるみたいだけど。
食材の幅が広がるのは良いな。
「是非そうしましょう!
首都の街に持っていけるもの増えるのは、こちらもありがたいです。
すみませんが、もっと大豆について教えてもらえませんか?
不勉強で申し訳ありません。」




