お試しにも程がある 111
「あの店におにぎりなるものが置いてあってな、とても美味かったんじゃ。
多分お主らが一枚噛んでいると見たが、どうなんじゃ?」
レジアスからの念話で家に来てほしいと言われ、皆で到着したらこれだ。
知らないメニューがあって衝撃だったのかもしれないな。
「そうだね、みさとがメニュー提供しているよ。」
「おにぎりなら、セプターさんでも知ってるんじゃない?
お米あったとこで育ってるんだし。」
「コルサ、セプター呼んできてくれんか。」
「畏まりました。」
即座に対応、流石執事。
いや、決してレジアスを褒めたくないわけではない!
「ねぇレジアス、おにぎりだし好きな物入れれば良いんじゃないの?」
「何を言っとる、拓海。
あの絶妙な組合せを食べたいのじゃ。
勿論、他にもあるなら教えて欲しいがのぅ。
どうかな、みさと。」
「あはは、良いですよ。
さっきたっくんが言ったみたいに、好きな物入れるのもありなんで、それはそれで試してみて下さいね。」
レジアスの我儘にみさとが答える間に、セプターが入って来た。
「お待たせしました、レジアス様。
お呼びとのことでしたが、何でしょう。」
「セプター、よく来た。
お前さん、おにぎりというものを知っとるかのぅ。」
「おにぎりですか、懐かしいですね。
よく塩むすびや味噌むすび食べましたよ。
偶に焼いてあったりとか。
それがどうしたんですか?」
「何、仕事場近くの店で、色々な種類のおにぎりとやらが出ていたのでな。
お前なら知っているだと思ったのじゃ。」
「成程、確かに知ってます。
そんなに種類あったのですか?」
「その辺は、またみさとに教わって欲しいんじゃが、どうかのぅ。」
セプターがキラキラした目で、みさとの方を向く。
「是非、教えて下さい!
地元の食材でレジアス様に喜んでいただけるのは、とても嬉しいです。」
ニコニコしながら、みさとも答える。
「じゃあ、一緒にやりましょうか。」
2人仲良く、キッチンに向かう。
ひと仕事終わった顔のレジアスに、俺は問いかける。
「話は変わるけど、この間ドワーフの国に行ったんだよ。」
「何やっとんじゃ、拓海。
変なものに首を突っ込んでは居らんじゃろうな。」
「人聞きの悪い事言わないでよ。
平穏無事に帰ってきたんだから。
そうじゃなくて、そこで魔石の話を聞いてさ、動力源になるとか。
扱いは山向こうの耳長が得意って言ってたから、エルフ族の事かなとか。」
「確かにな、どちらもそのとおりじゃ。
何を企んどるんじゃ?」
「レジアスは俺を何だと思ってんだよ。
ちょっと興味湧いたから調べてみようかなと思っただけだよ。」
「それだけなら良いんじゃが。」
ジト目で見て来るレジアスに俺からもジト目で返した。
レジアスめ、みさとには絶対こんな事言わないくせに。
「丁度この間受けた依頼が、魔石をなるべく多く集めて欲しいってやつだったんだよ。
この国で使われるのかな?って疑問に思ったんだ。」
「魔石のぅ。
魔道具に使われるのは知っとる。
加工は、以前居たドワーフに師事したものが引き継いどるとか。
じゃが、半分以上は国外に売り出しておるはずじゃ。」
「そうなの?
特産品て訳でもないんでしょ?」
俺の問いに、レジアスは腕を組みながら答えた。
「特産品というかは知らんが、加工技術持っておるドワーフと、持ってるだけでその力が使えるエルフとで取り合いらしいぞ。
ダンジョンで魔石採れるのはこの国が多いとは聞いとる。」
「熾烈な戦いなんだね。
この国は恩恵受けてるの?」
「ドワーフでもエルフでも変わり者はおるみたいで、稀にこの国でも見かける。
定住か商売で来てるかは知らんがな。
そういった者からの情報は貰っている。
以前起きた争いは、それが原因じゃと。」
あ、これってもしかして…
「レジアスがとっちめた話に繋がるやつか!」
「う、うむ。
そういう見解も出来なくはないな。」




