お試しにも程がある 107
「スピード出るねぇ、楽しー!」
みさとは笑っているが、俺は恐怖しか無い。
ジェットコースターかよ!
シビック・みさと・俺の順に1つの橇に乗り、進んでいる。
偶に曲がって、真っ直ぐ進んで、また曲がっての繰り返し。
大分降りたところで、広間に出た。
扉じゃなくて良かった。
壁にぶつかる前に速度低下の魔法、ぶっちゃけ急ブレーキね。
前の2人はケタケタ笑っているが、俺は二度としたくない。
止まったところから立ち上がり、橇をしまう。
周囲を確認すると、降りてきた階段の他に3つの扉がある。
1つずつ確認かな。
因みにナビさんや、この先は分かる?
『左右は魔物がいます。
中央は出口に繋がっています。』
凄いな、ありがとう!
「みさと、中央は出口だから最後、右も左も魔物いるらしいよ。」
「了解!
じゃあ右から行く?」
「良いよ、慎重に進もう。」
迷いなく扉を開けるみさと。
慎重という言葉の意味を知って欲しい。
バーンと音がしそうな勢いで開けられた扉は、本当に音がした。
勢い良過ぎて、壊れたのだ。
「…ごめんなさい。」
「怪我はなかった?
力加減気を付けてね。」
そんなに楽しみだったのか?
「また探索できると思ったら、嬉しくて力入っちゃった。
気を付けます。」
ちょっとショボンとしたみさとは、倒れた扉を壁に立て掛けた。
折角だから、直しておこうかな。
みさとが扉を背にして辺りをキョロキョロした隙に、魔法で直しといた。
気付かないだろうな、とこっそりニヤニヤする。
「じゃあ、気を取り直して魔物倒そうか。」
わらわら出てきた魔物を、またもや剣の一閃で薙ぎ倒すみさと。
魔石回収は俺の役目。
もう魔物が出なくなって周囲を見渡すが、特に扉も階段もなし。
入って来た入り口からそのまま出る。
今度は左側の扉を慎重に開けるみさと。
同じく沢山の魔物が出てきて、みさとが薙ぎ払って終わり。
今度は、時間差で何度か出て来た。
ボーナスタイムか?
魔石は自動的に入るので、俺はそのまま見守る。
シビックも欠伸をしだした頃、ようやく魔物の出現は終わった。
「ふぅ、面白かった!」
息も乱さず、ゲームが終わったかの様なみさとの笑顔。
周囲を確認すると、目立たないよう壁と同じ色の扉が1つだけあった。
みさとは俺に振り向き確認、それに応えて頷く俺。
「慎重にね!」




