お試しにも程がある 103
「辛かったけど美味しかった!」
晩御飯の麻婆豆腐・春巻・玉子スープを完食し、いつも通り口を拭いてもらうシビック。
麻婆豆腐は一度リュックに入れたので、お代わりも出来た。
炊飯器で炊いたご飯では足りなかったようで、リュックから追加を出した。
「お豆腐久し振りだったね。
やっぱり美味しい。」
「そうだな、今度作り方をクレスタに…
そうか、戻れるか先に試さないとな。」
「向こうは向こうで楽しかったよ。
また行きたいと思ってるくらい。」
「寧ろ、俺は向こうで生活したいよ。
戻って来といて何だけど。」
戻れると聞いて戻ってきたけど、あっちもこっちも捨てがたい。
「今日は取敢えずゆっくりして、明日休みだから色々試そうか。」
風呂上がりの麦茶を飲んでいると、みさとがゴソゴソし始めた。
「何してんの?」
「あのね、もう一度向こうに行けるなら、化粧水とかシャンプーとかもあったら良いなって思ってたから、入れてみた。」
「成程ね。
確かに、向こうのはあまり泡立たなくて使った気がしなかったもんな。
それ採用!
それなら…」
俺も持っていきたいものを物色。
洗車用の洗剤、某社の黄色い高圧洗浄機、ハンディ掃除機、拭き上げ用タオル、洗濯用の洗剤も有りだな。
待て、掃除道具しか必要ないのか、俺?
みさとと2人で持っていきたいもの探しをしているうちに、シビックは寝てしまった。
色々あって疲れたかもな。
改めてみさとは、自分の財布を出せるだけ出した。
出るわ出るわ、毎日増えてたからそうなるよね。
紙幣と硬貨を掻き集めると、1つの財布には入り切らない金額になった。
「何か、お金持ちになった気分?
いくつかに分けないと入り切らないよ。」
「仕方無いんじゃない?
入る分だけ入れて、しまっておきなよ。」
「それしか無いよね。
明日、使えるか試しても良いよね?」
「そうしよう。
使えたら、小金持ちくらいにはなるんじゃないか。」
俺とみさとは、顔を見合わせて苦笑した。
「空っぽのお財布、どうしよっか。」
「うーん、同じものがこれだけあると、ブランド物でも偽物と思われるよね、きっと。
纏めてしまっとくしかないかな。」
「リュックじゃなくて、クローゼットの隅に置いとくね。」
「そうだな、また増えたら大変だ。
あれ、俺の財布も同じ事になってるのか?」




