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ちょっとそこの異世界まで  作者: 三毛猫
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お試しにも程がある

 その日もいつもの様に、拓海はみさとを駅まで迎えに行った。

 在宅勤務になって1年以上、電車通勤のみさとの送り迎えは拓海の日課だ。

 一人息子も就職し、二人きりの生活になり半年。恋人同士に戻ったかの様な夫婦水入らずの生活。

 今日の夕飯は何か考えつつ、駅でみさとを待つ。しばらくして、通勤用の大きめのリュックを揺らしながら駅の階段を降りてくるみさとが見えた。

 「ただいま!お待たせ!お腹空いた!!」

 車を走らせ、今日あったことや夕飯の話など、他愛ない話をしていたその時だった。信号待ちで止まった瞬間、眩い光に包まれた。雨が降っているわけでもなく、雷とは思えなかった。視力が回復し周囲を見渡すと、何もない真っ白な世界に、車に乗った自分達二人。

 「雷怖かったね。」

 「いや雷じゃないし。ここ何処だろう。」

 「何言ってんの?たっくん信号変わるよ?」

 「何処に信号あるって?みさとこそ周り見なよ。」

 二人で車に乗ってはいるが、道があるとも限らない。降りてみようかと拓海が思った頃、間抜けな声が聞こえてきた。

 「君達どこから来たの?」

 「…日本」

 「地球!」

 「まさかさっきの実験で来ちゃったのかなぁ。この世界の人達じゃなさそうだし。」


 困った顔したお子様は、背中に羽が生えていた。天使?と思わなくもないが、天使の輪は見当らない。

 「取り敢えず、君達の住むところから考えたら異世界かなぁ。まぁ、ゆっくりしてってよ。」

 「ゆっくりしてってと言われてもねぇ?」

 「ねぇ。」

 「ここは魔法と剣の世界。

折角だから、君達過ごしやすいようにちょっとチート気味に設定してあげるよ。

だから、ゆっくりしてって。ね!」

 「この子、返す気ないみたいね。」

 「てか、帰れるの?」

 「これから探すから大丈夫!!それまで遊んでって。」

 「「…」」

 「そーいえば君達、名前は?」

 「星野拓海」

 「みさと!」

 「拓海君とみさとちゃんね。

じゃあ、魔法と剣どっちが良い?」

 「魔法!」

 「剣!」

 「おぉ、丁度良く割れたね。

拓海君は杖、みさとちゃんは剣渡すね。

まず魔法は、杖も呪文もなく使える様にしたから。でも、杖あった方がぽいでしょ?

剣は、それじゃ無くても大概使えるから安心して。

後は…金貨10枚の袋渡しとくね。この世界で暫く過ごせるよ。そうそう、言葉わからないと困るから、わかるようにしとくね。

ところでさぁ、この四角いの何?乗り物?」

 「車って言うんだよ。運転はたっくんしかしないけど。この世界には無いのかな?」

 「ない所に飛ばす予定。動力源は?」

 「ガソリンでエンジン動かしてる。こっちじゃ給油できないのか。どーすっかなぁ。」

 「無くても動くようにしとくよ。後は大丈夫でしょ?そろそろ飛ばすよ?」

 「えっ?まだ説明聞きたいよ!!」

 「お前の名前はなんだよ!」

 「言ってなかったっけ?僕はこの辺りの管理者、ベゼルだよ。宜しくね!じゃーねー。」


 そして唐突に、知らない野原に放り出された。


 「行っちゃったね。」

 「仕方ないなぁ。帰れるまで生活してろってことだろ?キャンピングカーじゃないんだから…」

 「町があるか走ってみる?ガソリン無くても走れるんでしょ?ラッキー!」

 「待て待て、今まで培ってきたオタク知識フル活用して、万全の体制にしてから動こう。魔法ってワクワクするなぁ。

 魔法耐性・物理耐性・状態異常無効・熱耐性・時間対策も必要かなぁ。万が一があるから、空気が無くても死なないとか?不老不死で病気にならないのはどーかな?車も含めて付けとこう!」

 「ねぇ、この子どうするの?走れてもさぁ、周りからしたら未知のものじゃん?盗られないかなぁ。」

 「バックにでも仕舞っとく?ほら、何でも入るバック的なのにすれば持ち歩ける!」

 「たっくんのウエストポーチから出てきたらビックリだよね。私のリュックもその機能欲しい!」

 「おぅ!ついでに車も何でも積めるようにしようか。」

 「魔法ってホント、何でもありだね。」

 「何処まで効いてるかわからないから、試したいけどね。」

 「お腹空いた。」

 「おぅ、町があるか探してみよう。」

 「ナビ使えたり?」

 「まさかぁ…出た!」

 「一番近い町は?」

 「ステージアだって。」

 「美味しい物あるかなぁ。」

 「取り敢えず近くまで行って、近くなったら車しまうね。」

 「歩きかぁ…明るいうちに着きますように!」



 その頃のとある場所では。

 「ねぇジェイド、日本て知ってる?」

 「何それ?美味しいの?」

 「じゃあ地球は?」

 「お前どうしたの?伝説の場所に行きたいの?」

 「だよねぇ。

実はさ、遊んでたらそこの人連れてきちゃったみたいで。」

 「おいおいベゼル、やっちまったなぁ。人型なの?見に行こうかな。」

 「帰る方法見つけたら連絡するって言っちゃった。どーしよ。」

 「暫く連絡取れねーな。頑張れ。」

 「住みやすい状態にはしてあげたつもりだけど…」

 「それでステータスのおかしいバランスブレイカーが居たんですね。おかしいと思いましたよ。」

 「げっ、エリシオン!」

 「あんなの居たら気付きますよ。あれ、どうするんですか?」

 「それはまぁその内…ね?」

 「ベゼル、暫く頑張れ。」

 「そんなー!ジェイドも手伝ってよ。」

 「俺の得意分野じゃないんで、無理無理。」

 「また変な実験でもしてたんじゃないですか?」

 「変じゃないよ!隣の世界まで攻撃届くか試してたんだよ!」

 「バカだなお前。」

 「右に同じです。早く返してあげなさいね。」

 「善処します。」

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