声。
僕はずっと気になっていた事を全て、この男に聞くと決意し、いろんな事を質問した。
そして謎の男は『マヒナ』と自分の名を名乗った。
名前は割とすんなり教えてくれた
他の事も教えてくれたが、マヒナの感情には混乱も、憎しみも、悲しみが見えた
だがなぜか、その中に『幸福』があった。
質問を続けていると僕に名前を付けると言い出し
―サナー
マヒナはそう僕に名付けた。
どんな意味かと聞いた。
マヒナは椅子に座り、僕の顔を見てニヤリと口角を上げ答える―
「マヒナ、今僕に名付けた『サナ』はどういう意味ですか」
―希望―
「『サナ』というのは≪希望≫という意味がある」
「希望……僕は欠陥品ですよ……そんな大きなものにはなれません」
名付けてくれたのは正直、かなり嬉しい。
なぜなら、処分が決まったレオパルドには、本体番号すら割り振られることがない。
『レオパルド』という大雑把で、物騒な『文字』しかないからだ。
でも、希望なんてものには僕はなれない。その本音が強すぎてつい口に出してしまった。
「大丈夫だよ、サナならラカスの希望、そのものになれる」
マヒナに真剣な眼差しを、僕の顔に向けながら言う。言葉を聞くだけでわかる。本気で言っている……だからこそ、僕ではダメだと思ってしまう。
「僕が希望になれる根拠なんて無いのに……なぜ言い切れるんですか……」
マヒナは静かに答える。
―弱き者―
「え?」
「マヒナ、この言葉の意味だ」
ラカスの言葉でマヒナとは『弱き者』という意味になる。
ますます謎だ、そんな意味の名前をなんで胸を張り、誇らしげに答えたのか。
「弱き者……俺はそんな意味をつけられた。だが今では胸を張って大声で名乗れるんだ!」
「なぜですか?」
マヒナは勢いよく立ち上がり答える
「『弱き者』がラカスの内戦を生身で生き延び、今では全国最強の戦闘兵器を従えている! どうだ?! 弱いと思うか!?」
外で巡行し警戒中の敵機レオパルドにも聞こえそうなほどの大声、そしてドヤ顔でそう答えた
「い、いや、確かに弱くはないと思いますが……別に僕はマヒナに従えているわけでは……」
そう答えるとマヒナは悩んだ表情をしながら、その場に座りこみ、落ち着いた声で話しかけてくる。
「なぁ、今からいう事を真面目に聞いてくれ」
「……? わかりました」
短い時間ではあるが、マヒナと会ってから始めて見せる、これまでにない真剣な表情。
何を言われるのか分からず、なぜかこっちが緊張してしまう程の真剣な表情。
そしてマヒナは口を開く―
「戦闘用人型AI レオパルド、君の名前は『サナ』意味は希望、これからサナは俺のレオパルドだ、俺の指示に従え」
「……いや、ですから従う気はn」
―ドクンー
その瞬間、全身が硬直した。
1ミリも動かせる気がしない。故障でもしたのかと疑う程に。
そして、僕にしか聞こえない声が頭の中に響く―
―マスターを認識しました。これよりアップグレード、及び機能開放を行います―
「マ……マヒ……ナ……何を…………」
「再起動したらわかるさ」
「サ……イ……キ……ド…………」
そして考える事さえできなくなった。
……
…………
………………
―アップグレード、及び機能開放が完了しました。これより再起動を行います―
カチカチカチ……
ピッ
―最新版のアップグレードを発見。容量が膨大な為、ダウンロード方法を≪システム起動中に自動ダウンロード≫に切り替えます―
ピッピッピッ
カチッ
ピ──……
時間で言えばほんの数分の事だった。
だが、実感では何時間、何十時間、もしかしたら何日も経っているのかもしれない。
まさか時間どころか、僕が壊れてしまったのではないのか?
そう疑うほどだった。そして頭の中ではない、耳に装着されてる聴覚機能から音声を拾う。
「そろ……ろ、……動……んじゃ……か?」
「えぇ、……定では6……なので」
視覚機能も復活し始め、聴覚機能もちゃんと動きだし、身体も動かせるようになってきた。
「おはよう、サナ」
「マヒ……ナ? 一体何gイッ……!?」
頭に電気を流されたような痛みが走る。
なぜ僕の体に痛覚が? そんなことを考えている余裕なんて無いほどの痛みが走った。
「まだ起動した直後、動くのはもちろん、喋らないようがいいよ」
さっきも聞こえた声、女の人だ。ボーイッシュな声をしていて、人間が声だけ聴けば性別はどちらかわからないだろう……
まぁ……見た目だけでもわからないだろう……小さい。『ナ二』とは言わないが。
頭が痛く、さっきまで軽かった体が急に重く感じる。
上半身だけ無理矢理起こして、女の方を見る。
「ッ……あなたは誰ですか……?」
「まぁ警戒するなって、私は敵じゃないからね」
「敵ではない証明はできますか……?」
「俺が保証するよ」
「マスt……マヒナがですか?」
危ない。マヒナのことをマスターと呼びそうになってしまった……
僕はマヒナのレオパルドになったわけじゃ……
再び僕にしか聞こえない声が頭の中に響く。
―現在、本機体『サナ』のマスターは『ナ・マヒナ』と登録されています。故に『ナ・マヒナ』をマスターと呼ぶのは正しいです。―
「なんなんだ……この声……」
「お、サナの中にも一応あるんだな」
「そのようですね、一応、サナの機体は最新版のレオパルドですから」
「やはり最新版にして正解だったな」
この2人はこの声が聞こえてる……? というより知ってるという感じだな。
今はわからないこともある、ついでに聞こう。
「あの、この声は……それとあなたの安全性の証明を求めます」
「ならライが答える方が話が早そうだな」
「えぇ、では……」
上半身のみ起こしている僕に気を遣うように、硬い床に正座し、僕の顔を見て話しだす。
「私の名は『トライ・ドア』そして、レベル2の技術者。君たちレオパルドを造っている技術者の一人」
「技術者……僕たちを造った人たちの一員……」
マヒナがやけにレオパルドについて詳しい理由が分かった。なるほど、と頭の中で理解した
マヒナはこの『トライ・ドア』という女と仲が良く、レオパルドの情報をもらっていたのだろう。
「サナも私の事をライと呼びたまえ」
「わかりました。では、この声の事を……」
「あぁ、それは―」
―ドォォォォォォォン!!!!!!! ―
外で何かが大爆発する音が鳴り、慌てて3人で外に出ると、そこには―
第5話 声。
読んでくださりありがとうございます。
更新ペースは毎日1話以上を心がけているので、更新時間は安定していないです…
小説を書くのが慣れてきたら、一日何話、何時更新など決めたいと思います
ぜひ、ご意見、ご感想の方もよろしくお願いします!!