名前。
敵のレオパルドとマスターは、本当に僕たちを襲う気は無く、逃げることに成功。
他2機のレオパルドに見つからない様に、慎重に男の住処へと向かう。
しばらく歩いて…
一軒のボロい家に着く
中に入ると、どうして崩れていないのか分からない程にボロい……と思っていると、実はこの男以外の人間、機械に対して偽の視覚情報を送る装置の影響で内装がボロく見えているだけで、本来の内装はかなり綺麗でちゃんとした家だった…
だが、今のラカスには家に来るような人はいない。
なのになぜそんな装置を作り、使っているのか―
この男は廃棄レオパルド処分場の唯一の出口をドアに改造するなど、物造りは得意そうな感じがする…
だから、なにか理由があるのかもしれない。
男は背の低い椅子に座り、俯きながら口を開いた…
「たまたまだ」
「……え?」
「いや、たまたまだって」
「たまたまでそんな装置はできませんよ…」
「本当は、処分場で脱出する時使うため作ったんだけどね。視覚を偽装させるは大々的すぎるからダメだと気付いたんだ、それでドアの方がいいなって」
「な、なるほど…」
やはりだ、この男には驚かされる。
大した理由でもないのに凄い装置作ってるし、それを自分の家で使おうなんて普通思わないのに、この男は自ら進んで使って…僕にはわからん…
家の中での視覚偽装も解け、安全なところにいる…
僕は自分の中で覚悟を決めた。
気になっている事を全て聞こうと。
「あの、いくつかあなたに質問していいですか?」
「ん?あぁ、俺に答えられる事であれば答えるよ」
「あなたの名前はなんですか?」
「そういえばまだ名乗っていなかったな…」
男は立ち上がり、なぜか胸を張り、めい一杯空気を吸い込み答えた
「俺はマヒナ。ナ・マヒナだ!」
なぜ誇らしげなのか今の僕には分からなかった。だが、本来なにか誇れる理由があると思っていた
「そういえば、君に名前を付けようと思うが、いいか?」
「なぜAIである僕に名前を?」
「敵にもレオパルドがいる。それなのに、君を呼ぶときレオパルドと呼ぶのはややこしい、それにいつまでも『君』と呼ぶのもねぇ…」
そう言ってマヒナは考え始めた
「いや、あの名前考える前に質問に答えてもらっていいですか?」
「主旨はそうだったね、いいよ、答えながら考える」
聞きたいことを全て聞く覚悟は決めた。だが、なんて聞こうか。そこまでは考えていなかったと思うのと同時に、やはり僕は『欠陥』なんだなと自認した。
処分場にいたことについて問う。
「なぜレオパルド処分場にいたんですか?」
「それを答えるにはまだ早いかな。」
話している声のトーンが急に下がった。
感情は…落ち着いてはいる、だが何か穏やかではなさそうだ…今は深追いするのは避けよう。
処分場で僕だけが動くのを知っていたのかも聞きたいが、関係ありそうだから今はやめよう…
『反抗』について問う
「なぜ僕が初めて外に出る時『反抗』という言葉を使ったんですか?」
少し落としていた顔を上げ、僕の目を見て答える。
「本来レオパルドは外に出る事を許可されていない。」
敵機のレオパルドを思い出しながら問い続ける。
「なぜ許可されていないんですか?」
「本来のレオパルドは戦争用に改造されている。だが元のプログラミングで変えられないものが幾つかあった、その中の一つに『マスターの認識方法』というのがあった」
まるで自分で体験したかのようにマヒナは語りだす。
「レオパルドに使われている元のプログラムにあるマスターの認識方法は『初めて見た人間』だ、普通の人型ロボであれば割とよくあること、だがそのプログラムが戦闘用AIであるレオパルドにもある。どういうことかわかるな?」
「はい…他国に戦争で勝るほどのAIが、一般国民を見てしまうと…」
「そう、その人をマスターと認識してしまう。そしてそれを悪用されてみろ。少なからず、対応され拘束、確保されるまでの間、レオパルドは大暴れだ。」
ラカスの内戦、先のレオパルドαを見たから分かる、一日で約7300人を殺すほどの兵器。それを一般国民が持ってしまうと…ましてや、レベル1の者だったら…
考えるだけで恐ろしい。
「だから俺は『反抗』という言葉を使ったんだ。分かってもらえたかな。」
「はい、では続けて別の質問を。」
「おう」
残った国民がなぜ捕まっている可能性が高いのか、そしてなぜ、予想地点を『あそこ』と言ったのか問う。
「なぜ国民は捕まったと思うんですか?」
「さっきも言ったが、レオパルドは戦争用に造られた。もちろん戦争以外では本来使わない。順当に行けば大量虐殺はなかった…だが、攻撃方法がバレてしまった以上、残った者を捕らえる必要があるんだろうな、敵国の内通者がいる可能性も捨てきれないしな」
ふと浮かんだ疑問をぶつけてみる
「レオパルドがいれば戦争に勝てるのであれば、攻撃方法を知った者を全て殺してしまえばよかったのでは?」
「ひでぇ事言うな…まぁ確かにそうするのも手だが…俺にもわからん」
「そうですか…」
ここまででも、だいぶ衝撃的だったし、質問するのも満足してしまう程内容が濃い回答だった。
だが僕には絶対聞かなければいけないことがある。
――レベル0とはなんなのか――
「マヒナ。」
「なんだ?」
「レベル0とはなんなのですか」
「君に答える必要があるかい?」
「共にラカスのレベル3を倒す身、互いの事は知る必要があると思いますが」
「んー…俺は君のマスターじゃないからな…よし!名前を決めた!」
「あの、質問に…」
「いいから受け取れ。君の名前は『サナ』だ」
「…どういう意味ですか」
マヒナはまた背の低い椅子に座り、俯いた。
この状態のマヒナは普段落ち着いている。だが今は違う。
心臓の動きが速い。かなり高揚しているようだ。
そして、再び俯いた顔を上げ、僕の顔を見てニヤリと口角を上げ、こう答える――
第4話 名前。
読んでいただきありがとうございます。
今回は全3話までとは少し書き方を変えてみました
なんと、前回の3話時点で100人以上の方に読んでもらえました…
ほぼ自己満で書き始めたの『最強最弱の戦闘兵器』ですが
今では色んな人に読んでほしいという気持ちで書いています
これまで読んでくれた方はもちろん、ご意見、ご感想、アドバイスをくださった方
本当にありがとうございます。
これからも『最強最弱の戦闘兵器』をよろしくお願いします。