哀愁。
本物の戦闘兵器との戦闘。
それはサナにとって初めての経験だった。
だがそこには
無知故の怖さ
そんなものは一切なかった。
アーマスを傷付けようとした。
その一つの事実が、本来使用禁止の戦闘スキルを解禁させた。
危なげもなく戦闘兵器を壊し
アーマスを連れて、マスターのいる所へ移動を始めた。
楽しみ。
悲しみ。
疑問。
怒り。
恨み。
何故そんなものを、機械の僕が感じたんだろう。
それに、あのレオパルドに放った貫通弾…
僕自身、使えることも、存在すらも知らなかったのに扱えた。
(なぁマキナ、戦闘中の僕はどうなっていたんだ)
『あの動きは、本来の戦闘兵器レオパルドは実行しない動作です。 近接戦闘はあまり想定されていないので、実践では距離を置くことが多いです。』
(じゃあ、僕はやはりおかしいのか)
『特殊個体であることに間違いはないと思われます。 初期機能から貫通弾を扱えるのは驚きでしたが。』
(それは自分でも驚いてる)
それとは別に、サナは自分で理解できないことがある。
何故マスターの位置が分かるのか ということ。
……これはマヒナに直接聞こう。
先の戦闘の事も、戦闘兵器レオパルドの事も。
「アーマス、着地するよ」
「うん」
フシュゥゥゥゥゥ………
足裏のブースターを使い、慎重に着地する。
「ここに?私たちの基地じゃない」
「多分どこかですれ違ったんだと思う
周りは草木で見えにくいし。ともかく、マヒナに会おう。」
ガチャッ……… ギィィィィィ………
あぁ、これだ。
「よ、サナ。久しぶり」
「えぇ、お久しぶりです。マスター」
「アーマスも、久しぶり」
「うん、マスター…うっ……」
やっぱり、マスターと一緒にいるのが 一番心が落ち着く。
この感じが心地がいい。
「御無事で何よりです。 ですが、あの爆発をどうやって…」
そう聞くと、マヒナは近くに置いてあった箱に座る
「一時的にレオパルドの装甲と同等以上の硬さを持つ膜を
纏う事が出来る装置を作って、それ使ったのよ」
「なぜそんなもの作ろうとしたんですか」
「ガリンに頼まれていてね、渡す分と俺自身の護衛の為に作ってたんだよ」
「…二個持ってるなら、僕に二個ともくれよ」
「二個持つ必要はないはずだよ
元々ガリンも一個だけと俺にお願いしただろう?」
「っ……」
なぜガリンはそんなに欲しがっているんだ?
そこまでならマヒナに最初から頼んでおけばいい話だが…
一つしか作らせたくなかった…?
いずれにしろ、今は分からないから考えるのはよそう。
ひとまず今は…
「マスター。」
「…」
一歩、たった一歩
サナはマヒナに近づいただけ。
それでマヒナは『気づいた』のだ
「なんでも答えるよ」
サナが自分に何を言い出すのか、何を聞いて・・・くるのかを
「僕は一体何なんですか、なぜ希望なのですか」
「サナ、その名の意味は希望、僕は君に
そう『名付けたように・・・・・・・』話したよね」
「…?実際マスターが付けましたよね?」
「実はな、処分場で会う前から、君には『サナ』という名前が
既に命名されていた。それも、他の戦闘兵器レオパルドから」
声にならない驚きの声が、サナの喉に留まる。
サナはずっと考えていたのだ
自分に与えられた名が『希望』を意味するのか。
なぜ自分に与えられたのか。
だがそれは、もうどうでもいいと思えるほどに
大きな『悩み』が生まれた。
同じ人間の感情を持った戦闘兵器レオパルドが他にもいる。
その戦闘兵器レオパルドと会いたい。
サナの頭の中にはそれしかなく
幼い少年のように、好奇心で動きたくなっていた
「マスター…」
「残念ながら会えないぞ」
「え…?」
サナは自分が考えていたことを、見透かされていた事
そして、会えないとあっさり断ち切られた事
それがなぜか、どうしようもなく悲しくなった。
「君に名を付けた戦闘兵器レオパルドは既に、レベル3の奴等に買われている
確かに会うことは出来るだろうが、人の感情はもうないだろうな」
「そんな……」
確かにそうだ
変なものが好きなマヒナの事だ。
感情を持った戦闘兵器サナ
リコールを逃れた生活補助機アーマス
そんな人間が、一機でも感情持ちなど逃すわけない
考えれば考えるほどに、やはり感情持ちに会うのは
もう無理なんだと、自覚していくだけの時間に、ただひたすら
哀しんでいた。
――――――ポタッ――――――
「へ…?」
「サナ、おめェさん…」
サナは変わっている。
「サナ?なに、この波長…」
それはマヒナに会う前から、そして
会った後からも、変わっている
「なんで、僕が……」
人間と同じように、涙を流すほどに『変わって』いた。
機械という壁を超えた存在に
サナは成り始めていた。
最強最弱の戦闘兵器
13話 ご覧いただき有難う御座います
今回から新章開幕です
また次回もご愛読、宜しくお願い致します!