第14話
side:アガレス
「この魔力量、貴様本当に人間か?」
「人間ですよ。あなたと違ってね」
「ほう、それはどういうことかな?」
僕は彼が姉にそういった時何を言っているのか分からなかった。
しかし彼は話を続ける。
「どうもこうもあんた機械神だろ?あいにく俺のスキルはあんたの隠蔽スキルのレベルの上を行っていたようで」
「それで貴様ごときがどうにかできるとでも?」
僕はヴェールの言っていることが分からなかった。そのことを聞こうと思った次の瞬間
「どうにかなりますよ。とりあえず外行きましょうか」
そういったヴェールのは加速し姉上を蹴り飛ばした。蹴り飛ばされた姉上は壁を突き破り外に放り出された。
突然のことに僕は驚き急いで彼に問いただした
「そなた!さっきから何を!?」
「まぁ、外みりゃ分かりますよ」
そう言われ外を見るとさっきまで姉上の姿をしていたものは姿を変え全身が機械で出来た怪物になっていた。
「な、なんなんだあれは?」
その声は既に戦闘状態に入ったヴェールの耳には届いておらず、彼は宙を飛び、機械神との戦闘を開始した。
戦闘は壮絶なものだった。過去に勲章をたずさった冒険者と騎士団長との試合を見たことがあるが、宙を舞う二人の戦いはその数倍も速く、目で追うのが誠一杯だった。見る限りヴェールは防戦一方のようだった。
しかし、ヴェールが魔法を使いだすと空気が一変した。大気が揺れた。そう例えるのが一番合っているだろう。ただ、あの魔力で戦闘を行えば街は...
ヴェールにはこの街から離れたところで戦闘してもらわねば...
「ヴェール!」
私がそう声をかけようとしたが、ヴェールもそれを分かっていたようで、ヴェールは機械神に勢いよく突撃し、そのままはるか高くまで飛んで行ってしまった。ヴェール。健闘を祈ります。あとはこの国の問題だ。ここからは僕の番と行こうか。
「騎士たちよ!今ここで起きたことを理解しているか!!僕の姉になりすまし国を支配していた者はわが友、ヴェールが討伐に向かった!トップであった姉上がいない今、この国を導かなければならないのはこの僕だ。やらなければいけないことはいくつかある。まずは民にこの状況を伝えよ!国に混乱を招いた原因はわが国潜んでいたものが起こした事件だ。これはこのような状況に今日まで気づかなかった我々の落ち度だ。このことを民に謝罪しなればならない。
次に、姉上が偽物であった以上、本物の姉上がどこかにいるはずだ。簡単に見つかるわけもないし、もしかしたら死んでいるかもしれない。騎士たちには迷惑をかけることになる。この命でいいのなら今すぐにでも差し出そう。だが、どうか今頼んだことだけは果たさせてくれ。その後であればどのような仕打ちを受けても構わない。頼む。」
頭を下げる僕の前に、騎士団長のアルスターが歩み出た
「王子、頭を上げてください。今回起きたことにより民は、騎士は多くの犠牲を強いられました。このことに腹を立てているものは多くいることでしょう。ただ、私はあなた様の今の宣言、心に響きました。こんな先の短い老獪の命程度であればどうぞお使い下さい。」
そういってアルスターは片膝をつき僕に頭を下げた。
「アルスター...」
驚く僕の前に財務大臣のケリーが歩み出てきた
「そうですよ。王子。元より私たちはこの国に忠誠を誓った者たちです。最後までお付き合い致しましょう」
その言葉を皮切りにここに居るすべての者が片膝をつき頭を下げた
「僕はふがいない王子だ。だが、君たちの忠誠には必ず応えよう!」
「「「「「「はっ!!!!!」」」」」」
その時上空で爆音が響き、その音が鳴り終わった数秒後ヴェールが戻ってきた。
「よっ!無事ですかい?」
「ヴェール殿!」