第10話
俺は魔法で暴走した奴らを鎮静化した
「とりあえず、彼らが目を覚ますまでに話を聞かせてもらえますか?」
「わかりました。話しましょうか」
騎士はようやく落ち着いたのか、話し始めようとした
「ちょっと待ってくれ。今からあなたが話す内容にこの馬車の中にいる人物は関係あるのか?」
俺がそう聞くと、騎士は悩みだしたが、
「よい、どうあがいたって僕が関係するんだ。僕込みで話すのが筋であろう」
その考えは馬車の中から現れた人物によって打ち砕かれた
「殿下!」
「殿下?」
「自己紹介がまだだったな、旅の者。僕の名はアウステカ連邦を統べる中央国家スリステムの第一王子、アガレス・フルム・スリステムである。」
その少年は俺の目的地の王子様だった
「王子様ですか...」
「信じられんのも当然だろうな。セルシウス!あれを!」
どうやらあの騎士はセルシウスというらしい
セルシウスは馬車から一つの袋を持ってきた。王子はその中から一つの印を取り出した。
「これは?」
「われらスリステムの王族のみが持つ、印だ。これで信頼を得れただろうか?」
『え、ちょっと待って。俺こんなん知らないんだけど?助けてヘルメース!』
『マスター、あれはアウステカ連邦の国旗と全く同じものです。そしてこの世界の王族は等しく自分の国の国旗が刻まれた印を持っています。おそらく彼が言っていることは本当だと考えていいでしょう』
『ありがとー!ヘルメス!』
『どういたしまして』
「あなたが王子であることを信じましょう」
「それは良かった。そういえば、忘れていた。そなたの名を聞きたい。名を何と申す?」
あー、どうしよう。俺下手したら死んだ人間扱いだもんなぁ。
そうだ!
「俺の名はヴェール・マーチスです。しがない旅人です。」
「ヴェール・マーチス殿か。その名、しかと覚えた。では、互いの自己紹介も終えたところで、僕らが襲われていた理由を話そう。」
「お願いします。」
「あれは、ひと月ほど前のことだった。僕らは王位継承権第1位である僕の命を狙った姉の強行から始まった。
姉は僕の命を取れば、継承権が2位である自分が王位を告げると考えていた。全くそんなことをしたところで王になれるわけがないのにな。さらに僕の護衛のほとんどが姉の陣営に引き込まれており、今ここに居る者ぐらいしか僕の味方はいなかった。けど僕がいなくなったところで現状王は健康そのものだ。そうそう簡単に王位が継承されるはずがないそう思っていた。」
「そう思っていた...ということは」
「そなたの思っている通りだ。私の直属の潜入部隊の情報によると王の体調は現在かなり危険な状態にいるらしい」
「最悪な状況ですね」
「それだけでは終わらん。元からアウステカ連邦の自治を行っているスリステムに反感を持つ国々がスリステムに宣戦布告してきた。」
「そして、王子は姉の部下もしくは敵国の間者の手によって殺されかけていたと」
「その通りだ。すまないな、国の事情に少しでも巻き込む形になってしまって。」
「大丈夫ですよ。それよりこの後はどうするつもりですか?」
「どうしたものか...まぁ、やれる限りはやるつもりだよ。そなたはアウステカ連邦に行くつもりらしいな。ならば中央にはいかず、海岸沿いを行くとよい、そこならば東の大陸に行く船があるはずだ」
王子は見た目は平気なようにふるまっていたが、足は静かに震えていた。それはそうだ。こんな重い問題こんな小さい子に任せていい問題じゃないしな。
しょうがない。
「王子、アウステカ連邦には美味しい物はありますか?」
「そなたは何を言っておる?」
「まぁいいですから」
「そうだな、うちの国の海鮮はうまいぞ。油も乗っておるし身も締まっておる。まぁいまは戦乱中だ。それなりの金を払わねば食べれぬだろうが...」
「それって戦乱が収まれば安く食えます?」
「まぁ戦乱が収まりしばらく経てばだが、安く食えるだろう」
「そうですか」
「さっきからなんなんだ?君は?」
「いえ、ただ王子のおかげで戦乱を収めに行く価値があると思った。ただそれだけです。」
「何をバカなことを!これは僕の国の問題で!」
「知ってますか王子?個々の森、ダンジョンなんですよ。だから俺全然うまい飯ってものを食えてないんですよ。まぁ、飯食わなくても死なない体になったんで食う意味は無いんですけど、それでも人間なわけで飯は食いたいんです。それもとびっきりうまいものが。
それが助ける理由じゃダメですかね?」
王子はそれを聞いた時少し間抜けな顔をしたが、すぐに腹を抱えて笑い出した
「フハハハハハハハ!!!そなたは何処までも変な男だな」
「王子、俺の協力受け入れてくれますか?」
その問いに王子は力強い目で俺の方を向き
「ヴェール・マーチス!そなたの提案受け入れよう!僕と一緒に戦ってくれ」
そう言って俺に手を指し伸ばしてきた
「お任せください」
俺は王子の手を取り、力強く握手をした。
こうして、俺と王子は戦乱を収めるための協力関係となった。