序章 疑り深い男
小説家になりたいので、試しに書いた物です。拙い文ですが読んで貰えれば幸いです。
ある朝、男が目覚めて机の上を見たら100万円が置いてあった。
出処がわからず怖いのでその日は100万円に一切触らずに放置して仕事に行った。
仕事が終わり帰って来ても机の上にある100万円に特に変わった様子は無かった。
男はどうしたものかと思いながらも臆病で疑り深い性格であったため棚の上に100万円を移し替えて放置し、いつもどおりに夕食を食べ風呂に入り明日も仕事があるのでその日はそのまま眠った。
翌朝目が覚めると、また100万円が机の上に置いてあった。
棚の上に移した100万円は無くなってないので、今男の部屋には100万円の束が2つある状態なのである。
男はとても怖くなった。
自分が何かよくわからないものに巻き込まれてるという事だけしか分からないからである。
その日と次の日は仕事を休み、100万円が1枚1枚本物なのか確かめたり、記番号が被っている物が無いか確かめたりと、100万円がこの国で使われている正規のお札なのか確かめた。
そしてその日は眠らず、いつ、どのタイミングで机の上に100万円の束が現れるのかをこの目で見ようと起き続けていた。
深夜まで起き続けまもなく朝が来るだろうというタイミングで男は急激な睡魔に襲われた。
抗おうと思うまもなく男は眠ってしまい、目覚めた時には翌日になっており机の上にまた、100万円の束が置いてあった。
これで300万である。この調子でいくとただのサラリーマンである男の年収をわずか一週間足らずで越してしまう勢いだ。
男は警察に届け出ようかと思ったが、何か妙な事件に巻き込まれただとかなんだとか警察に事情を聞かれるのが億劫になり、やめた。
友人に相談したいとも思ったが本当に信頼出来る友人が海外に行っており、そこそこの仲の友人に話すのは怖いので、結局一人で悩んでいた。
翌日は仕事があるが、100万円の出るところが見たいので、コンビニで栄養ドリンクを買って起き続ける備えをしたり、電化製品店に行きビデオカメラを買い、仮に寝てしまっても100万円が現れる瞬間をカメラに納めるなどして、どうにか100万円が現れる瞬間を見ようと備えた。この時にもなるべく100万円には手をつけず自分の金で払い、慎重に行動した。
そしてその日の深夜、もうすぐ夜明けになるという前に、眠ってしまった時のためのビデオカメラをセットし、栄養ドリンクを飲んだ。しっかりと目が冴え、ビデオカメラをセットしたのは杞憂だったかもと思っていたその時に、やはり急激な睡魔が男を襲う。男は倒れるように眠ってしまった。
そして目覚めた時、やはり机の上には100万円の束が1つ置いてあった。男は急いでビデオカメラに録画された映像を見たが、男が眠ってしまった時間の1時間後にカメラの録画が途切れ、再び写った時に机の上に100万円が置かれていた。録画が途切れているので、バッテリー切れや機械の不備を除くと誰かが故意に止めたことになる。バッテリー切れは充電しながらカメラの録画を開始していたのでほぼ有り得なく、仮に充電のコードを抜いてしまっても、1時間で切れるようなバッテリーでは無い。カメラの不備に関しては新品でもそうゆうことはめったにないがありえないことではないので家電製品屋に持って行って不備が無いかの確認をしてもらうことにした。
しかし仮に
どうにかして100万円が置かれる所を見てみたいので男はしばらく会社を休むことにし、様々な実験をしてみることにしてみた。
例えば、100万円を現れた場所から一切触れずに置いたままでいると次の100万円は一体どこに置かれるのだろうか、男が見た限りでは100万円が置かれる場所は寸分の狂いなく机の上の同じ場所に置かれていた。
念の為またビデオカメラを設置して男はその日は100万円に触れずに寝る時間までは外で過ごし、帰ってきた時は直ぐに眠った。
翌日、目が覚めて机の上を見てみると机の上に100万円が置いてあった。しかし昨日のまま変わっているのかいないのか分からなかったため、男はカメラの映像をチェックした。今回確かめた映像の中では映像は一度も途切れることが無かった。
つまりは100万円は増えてなく、動いた形跡などは無いのである。
動かさなければ100万円は増えないという結果を得て。少しずつ謎の100万円の理解が深まって来ていることに男は喜びながら、箪笥の上にあるメモ用紙にメモをしようとした時、男は妙な物を見た。
メモ用紙の隣に100万円が置いてあったのである。箪笥の上に100万円を置いた記憶はもちろん無いので、男は不審に思って今部屋にある100万円が何束あるのか確かめてみた。
しかしてそこにあった100万円の束は5つであった。100万円は増えていたのである。
100万円を一切動かさないで置いておくと、新しく別の場所に綺麗に置かれるということがわかった。
男は嬉しいような嬉しくないような複雑な気持ちで新しい情報をメモ用紙にメモした。
次に男は栄養ドリンクだけではなく、痛みで目を覚ます事で眠ってしまっても起きられるかを確かめることにしてみた。
いつも100万円が現れる机ではなく、デスクワーク用の高い机に置いてある電気スタンドを滑車の代わりに、糸で包丁を吊る、自分が眠ってしまった時に手を離すことで、自分の右足に包丁が刺さるという至ってシンプルな仕掛けを作った。
夜になり男は、栄養ドリンクを飲み夜明けまで起き続け夜明け前の睡魔がやってくる10分前にビデオカメラを仕掛けて目覚める為の仕掛けの紐を手に持ち睡魔がやってくるのを待った。
そしてやはり先程まで冴えきっていた目が降りてきた。睡魔は絶対にくるようになっているようだ。そして男の目が完璧に閉じ切り、男の手から力が抜けていき、紐が手から離れ男の右足に包丁が突き刺さった。
果たしてその結果、男は悲鳴を上げながら目を覚ました。50センチ程の高さから刺さった包丁は男の右の太ももに思ったよりも深く刺さっていた。男は泣きながらも目が覚めた事に喜んでいた。これでどうやって100万円が現れているか見ることができるからだ。男は治療をしたらまた眠くなるかもしれないと思いあえて包丁を足に刺したままいつも100万円が現れる時間まで起き続けることにした。
そしていつもなら100万円が現れる時間の5分前になった。男は今か今かと、時計を眺め100万円が現れるのを待っていた。包丁が突き刺さっている痛みと起きていられた興奮で妙に気持ちが高揚としていた男の視界は突如として漆黒に包まれた。
何も見えぬ暗闇、しかし足にはまだ痛みがある。声も出る。しかし手足は動かない。後ろから何者かに目隠しをされ、手足を縛られているのだと言うことに気づくまでそう時間はかからなかった。
男は叫んだ。目隠しをしてるのは何者なのか、一体なんの目的で100万円を置いているのか。自分はこの100万円達をどうすれば良いのか。
しかし返答は無かった。そうして男の足から包丁が抜かれ、足の手当をされている感覚を感じた途端に容赦なく男に睡魔が襲いかかる。
男は悔しさを噛み締めながら落ちていく意識の中で見知らぬ声を聞いた気がした。
━自由にせよ。と
そうして男が目覚めた時、男は太ももの辺りの痛みに呻きつつ、半ば諦めの気持ちを含めた視線を机の上に向けた。
今日も不気味なほどに変わらず100万円が置いてあった。