お兄様と鷲蛇姫2
国王陛下の私室。そこは本棚と本の山だった。迷路みたいな本棚に、本棚に入りきらずに溢れている本の山。
出入口近くにソファが二台とテーブル、サイドテーブルに地球儀、それから壁に飾られている地図。オイルランプが数台。部屋の奥は見えないけれど、私の見える範囲には、それしかない。
「本ばかりだろう」
「はい。羨ましいです」
「羨ましい? 本が好きなら借りていって構わない。ここは兄弟兼用の図書室みたいなものだ。勝手に出入りして良い」
それは何とも衝撃的な発言。もう一つ驚きなのはフィラント王子が「レティアに紅茶と、俺達用に酒を持ってきます」と去ったこと。
妹として扱ってもらえるとはいえ、国王陛下と2人きり。フィラント王子が従者みたいに動いたことにもビックリ。私が行くべきだったとも思うけど、何せ城内の勝手が分からない。
どうぞ、と促されてソファに座る。国王陛下は背もたれによりかかり、ふぅと小さく息を吐いた。
「流星国では、随分と楽しんだようだな」
「は、はい。殆ど遊んできただけで……。すみません……」
浮かれ過ぎていた。確かに、単に楽しんできたとは怒られる。視線が彷徨う。どこを見ていたら良いのだろう。
「いや、疲れただろう。君の性格はなんとなく分かった。明日の報告会の内容は、私を良い意味で驚かせるだろう。来週あたりに労いと君を披露する晩餐会を開くので、今回の件は遊びではなく、立派な外交だったと自覚して、正しく話せるようになってくれ。ディオクにサポートさせる」
お疲れ様、ありがとうと続けると国王陛下は立ち上がった。与えてもらった言葉に感激して、思考も動作も停止する。
褒められた……。ユース王子やヘイルダム卿がもっともらしく話してくれる前に、報告会の前に褒められた!
「チェスを持ってくる。待っていてくれ」
「はい、かしこまりました」
嬉しくて、泣きそうになる。
立ち去った国王陛下が、迷路のような本棚の間へ消える。戻ってくるまでに、こっそりポケットから出したハンカチで、目元に滲む涙を拭った。
戻ってきた国王陛下の手にしていたのは、古い木彫りのチェス盤。それから、少々錆びた白銀色のチェスボックス。
「私は人見知りでな。これで友人を作りなさいと、誕生日に祖母が贈ってくれた」
着席した国王陛下がテーブルに置いたチェス盤には、鷲や薔薇が彫られている。それから、波のような模様に蛇。チェスボックスも同じような柄。
チェスボックスが開かれると、駒はチェス盤と同じ木製。黒のキングには赤い鷲、白のクイーンの駒には青薔薇。二つの駒だけ豪華な飾りで、他はシンプル。
鷲に青薔薇、それに蛇のような柄。アルタイル王家にまつわる装飾の施されているとは、特注品だろう。
「レティアはビルマの事を知っているようだったな」
「はい。新聞で読みました」
どういう内容だ? と問われたので素直に話す。
「概ね合っている。ビルマは彼の母が浮気して作った子で、父はそれを知っていても王子の座を与えたそうだ。父上の死は突然だったが、人はいつか死ぬと、遺言を残していた。そこに記されていたビルマの王位継承権は、第5位だ」
「第2王子なのに王位継承権第4位だったのはそういう……。えっ、あの、5位ですか?」
「そう。5位だ」
リチャード、ビルマ、ユース、フィラント、ディオクの五人兄弟。ビルマ王子は非嫡出子か。けれども、ユース王子はユース・セルウスで子爵。混乱してしまう。
「幼い頃、ビルマと良くチェスをした。それからユースともだ。レティアはちっとも。あの子とは歳が離れているし、我儘放題のお姫様として振る舞っていたからな。お兄様、暗ーい。それが口癖」
悲しげに微笑むと、国王陛下は黒いルークの駒を手にした。
「私は人が嫌いだった。私の周りは嘘だらけで、信じられる者は殆どいない。国王になんてなりたくない。本があって、たまに親しい者とチェスが出来れば良い。ずっと、そう思っていた」
「そうなのですか」
妹だから、身の上話を教えてくれる、ということみたい。黙って聞こう。いや、少しの相槌や素直に問いかけだ。
「ビルマやユースは、グズグズしている私をよく怒った。父は私を叱り、ビルマやユースを褒めた。頭だけ良い私と違い、二人とも何もかもに秀でていたから当然だ」
国王陛下は、反対側の手に白いナイトの駒を手にした。
「同じ兄弟ですから、長男の陛下に期待していたのでしょう」
「その通り。しかし私は無理だと逃げた。この部屋に閉じこもった。そのうちビルマは私とチェスをしなくなった。馬鹿にしだした」
声や目に刺はない。ビルマ王子を責めるのではなく、自分を責めているように感じる。
「ユース様とは、チェスを続けたのですか?」
「そうだ。しかしユースは……。ある日、ふと気がついたらユースは騎士になっていた。馬小屋掃除をしていて、フィラントと呼ばれている。気がついて声を掛けようとしたが、首を横に振られた。それでユース王子と呼ばれているのが、ユースではないからピンときた。交代したのだ、と」
「交代ですか? そのユース王子ではないユースが、今のユース様ですか?」
おもむろに頷くと、国王陛下は手に持つナイトの駒を見つめた。
「ユースは誰にでも、いつも優しかった。自分の影武者に同情したのだろう」
「影武者と交代……ですか……。影武者……」
「ユース王子は曲者に殺されかけて、ショックでおかしくなったと言われていたが、そのはずだ。別人だからな。私はしばらく観察した。珍しく部屋から出て、朝、昼、晩と確認したが、ユースはいつもフィラントだった。騎士見習いとして、殴られていたり、馬のクソまみれ。ユースの性格なら、たまに戻ったりなんてしなかったと思う」
それが、無表情気味で、何を考えているか分からないフィラント王子の裏の顔。
ユース王子がフィラント王子を大好きな理由。双子騎士、騎士と王子の二役の噂は、これが捻じ曲がった話なのか。
「私は偽物をここへ呼んだ。彼をここに招いてチェスをした。彼はもうボロ負け。ずっと怯えた顔をしながら、必死に笑っていた。絶対ユースではないと睨んだが、口封じされたらとか、本物のユースが怒るとか、色々と考えて何も言えなかった」
「見逃してくれたと思ったのでしょうね。ユース様……。陛下をとても大切に思っているようですから」
「私はな、単に誰にも言えなかっただけだ。偽ユースはそれからほぼ毎日ここへ来るようになった。あれこれ私に聞いた。どうしたら兄上の役に立てるか。国王を支えるには何が必要なのか。それから怒られた。外に出ないと国王になれない。自分がいるから大丈夫と言いながらな。まあ、あいつはそのうち、一方的に無駄話をするようになった」
クスリと笑うと、国王陛下はナイトの駒をテーブルの上に置いた。
「それがユースだ。この話は割と多くの者が知っている。私がユースを弟だと思っているという話だ。フィラントはもうユースではなくて、フィラントだ。長年交流が無かったし、戦場での経験で子供の頃とは随分と性格が変わったから、距離感もまだ掴めない」
「兄弟関係を教えてくれて、ありがとうございます。ディオク様はどんな方なのです?」
「元レティア王女は、お兄様暗ーい。お部屋から出てくれば良いのに。いつもそれ。歳も離れていて、思い出はあんまり無い」
国王陛下はボサボサの髪を手で撫でつけた。
「レティア姫はビルマやユースとはそこそこ親しかった。今のディオクはユースに似た性格なので、ユースの背中を見て成長したのだろう。今は私も認めてくれたのか、ここに来て、かつてのユースのように勝手にペチャクチャ喋って帰る」
あはは、と呑気に笑う国王陛下は、どことなくユース王子に似た空気を醸し出している。
「祖母がな、ある日こう言った。もうすぐ亡くなるという夜のことだ」
国王陛下は黒いルークの駒を、白いルークの駒にコツンとぶつけた。それから、寂しげに微笑む。
「勇気を出し、もっと王太子らしく強くなりなさい。ビルマの行末は、貴方次第なのですよ……。その時は、意味が分からなかった」
小さなため息と、白と黒のルークの駒で、何が言いたいのか察する。
「ユースのことは放っておきなさい。戦場で民の剣になりたいとは国務放棄。ビルマと別の弟や、それからまだ小さい妹と仲良くするのよ」
「それって……。あの、祖母とはルシル王妃ですか?」
「そうだ。それで最初に戻るが、父上の遺言書には色々と記されていた。5人の息子に向けてだ」
「5人……。先代国王陛下もルシル様と同じように……」
「信用や絆とは積み重ねて築くもの。父上はそう記していた。内乱罪に問われたビルマは王子ではなくなり、ユースは自らの出自を公表して子爵になった。しかし、王子と呼ぶ者は多い。それで私も名誉王子、フィラントと双子王子として扱うことにした。特に諸外国にはな」
それがユース・セルウス子爵がユース王子だという理由。少しの沈黙のあと、国王陛下は口を開いた。
「なので……私は君とも親しくなりたい。ゆっくり、少しずつだろうけど積み重ねだ」
顔を上げると、国王陛下は真っ赤な顔で俯いていた。
「その、だから、何だ。もっと早くこういう話をするべきだったのだが、何から話して良いか分からなくてエトワールに相談していた。チェスなら得意だと聞いてな」
得意だと聞いてって、まだそのチェスは始まっていない。
クシャクシャと髪を掻く仕草と、照れたようなぶすくれ顔も、ユース王子と良く似ている。顔立ちは違うのに、そっくりな表情。思わず笑ってしまった。
確かに、ユース王子は国王陛下の弟だなと感じた。ちょっとした仕草や話し方が本当によく似ている。
「家族になりたいとは、とても嬉しいです」
「ああ。ビルマはあちこちから苦言を呈されていたけれど、私が励んで立派な姿を見せていれば……。そう思うとな」
国王陛下がチェスの駒を並べ始めたので、私も続く。
「過去は変わらぬが、未来は違う。レティア、色々な噂や話を聞くだろうが、すぐに鵜呑みにはせずに家族に頼って欲しい。あと自己卑下や王女に相応しくないという言動も慎むように。足を引っ張られる」
「はい、ありがとうございます。あの、私に何か出来ることがあれば、また何かしたいです。大蛇連合国に知人が出来ました。お兄様や国の為に役に立てることは何でも励みたいです」
先手有利なのに、国王陛下は私の方に先手側の白駒を並べてくれた。
「妹というのはピンと来ないが、ユースと結婚と聞いて、エトワールと同じように思えば良いのかとしっくりきた。親しげにお兄様と呼んでくれる女性が2人になるとは、今までより更に落ち着く。気を張って国王の言動を取るのはかなり疲れる。話し相手やチェスの相手で十分だ」
「息抜きのチェスなら、いつでも呼んで下さい。いえ、私が来ます。私も……勝手にペチャクチャ喋りにきます。……リチャードお兄様」
ここまで言って良いのか、ドキドキ、ドキドキして手汗もびっしょり。ユース王子と結婚、という単語だけでも動悸が凄いのに更にだ。
「是非そうしてくれ。エトワールは違うが、クラウスなんて突然現れる。隠し通路なんて教えていないのに変な子でな。あれはユースやディオク以上の破天荒になりそうだ」
国王陛下は笑っていたのに、急に眉間に皺を作った。
「フィラント、戻ってきたのに何故そんなところにいる」
国王陛下の視線を追うと、フィラント王子は出入り口の扉前に直立していた。手にお盆を持っていて、姿勢がすごぶる良い。
「声を掛けるタイミングを失いました」
「そうか。あー、その、いつからいた?」
「フィラントはもうユースではなくて、フィラントだから。そこからです」
「あー……。それはまた……」
「それなら今夜は良い3人ですね。あまり交流のない兄妹ですもの」
国王陛下はゆっくりと首を縦に振ってくれた。フィラント王子が澄まし顔で私の隣に腰掛ける。
お盆にはブランデーとブランデー用のグラスが3つ。そのうち2つだけ丸い氷入り。それから、紅茶の入ったティーカップが1つ。
迷っていると、フィラント王子は氷入りのグラスにブランデーを注いだ。氷無しのグラスには、ほんのわずかにブランデーを注ぐ。
「形だけでも乾杯と思って」
フィラント王子に、どうぞとごく少量のブランデーの注がれたグラスを渡された。フィラント王子はグラスを手にして、私のグラスに軽くぶつけた。国王陛下も続く。
一口分なので、ブランデーを一気飲み。喉が熱くなり、目がチカチカした。国王陛下は微笑ましそうに笑ってくれた。フィラント王子は相変わらずの無表情。
「ワインは飲めましたが、ブランデーは得意ではなさそうです」
「ん? ワインは飲めるのか。それならワインを持ってくるか。少し待っててくれ」
「いえ。美味しそうな紅茶がありますので……」
立ち上がろうとしたフィラント王子を制止する。
「ワインは次回の楽しみにします」
「そうか。そうしよう」
中腰になったフィラント王子が再度ソファに腰掛ける。
「ワインなら部屋の奥に沢山ある。ゴブレットも常備されている。まるで酒場だ」
「ユースですか?」
「いやユースとディオクだ。レティア、飲むか?」
二日酔いの気持ち悪さを思い出したけれど、ワインが美味しいことはもう知っている。ユース王子はお酒好きなので、一緒に飲みたいから慣れたい。
「はい。ありがとうございます」
「赤ワインだらけだが……あれだ。確かデートで使えと押し付けられたフルーツワインがある。飲みやすいだろう。奥の方だったはず。デートなんてしないのにな」
ぶつぶつユース王子への文句を言いながら、国王陛下は本棚の迷路の中へ消えていった。
「余ったブランデーもこの部屋に置いていくか」
微笑むと、フィラント王子はブランデーを口に含んだ。品のある飲み方。ユース王子と良く似た顔立ちで、夜で部屋が暗いから何だかユース王子と2人きりのようでドキドキする。
「エトワール様はお酒を飲まれますか?」
「誘われるけど、いつも酌をする方だ。私は注ぎたいのです、とよく分からない事を言っている。本人はあまり飲まない」
「そうですか」
「コランダム様に誘われると飲み過ぎるらしい。いつも白ワインだそうだ」
その意味は「コランダム王太妃は白ワイン好き」である。エトワール妃もかもしれない。
程なくして、国王陛下が戻ってきた。私に持ってきてくれたのはさくらんぼのワイン。ゴブレットはユース王子のものだと言われた。
銀色のゴブレットは空に鳥が飛ぶ柄で、鳥は鷲のように見える。空は昼と夜どちらも彫られていて、星の煌めく月夜から雲が流れて太陽の輝く空と変化している。
このような品がユース王子の好み。ついジロジロ眺めてしまった。さくらんぼワインはとても甘くて飲みやすい。
誰と誰が対戦するかという話し合いは譲り合いなり、私達はチェス盤やチェスボックス、駒の観察会を始めた。
模様が気になり、質問したらアルタイルの伝承とともに説明してくれたのが面白くてチェスをせずに盛り上がる。
楽しくて、ワインが美味しくて、ふわふわと心地良い。
「はあ、あのユースが……。恋人の1人さえ作らなかったユースが……ようやく結婚か……」
不意に、国王陛下が愉快そうに笑った。
「恋人の1人さえ? ユース様、酒と女が好きだと……」
女が好きなのに、恋人の1人さえ作らなかった?
あれ亡くなったらしい恋人は? 国王陛下も知らない人らしい。なのにサー・ダグラスは知っている。ユース王子の謎が深まる。
「その通りだ。情報入手も兼ねているようだが、社交場という社交場で酒を飲んでは手当たり次第に食い散らかし……。あっ、いや、今のは、ああ知っている……いないのか……」
「リチャード兄上。飲み過ぎです」
「手当たり次第に……食い散らかして……」
恋人は1人もいなくて……。いや、いたらしい。でも、知られていない話で……食い散らかして? 食い散らかして? 恋人はいなくて、食い散らかしてって何⁈
ユース王子の女性関係にこれまで興味無かったから、頭からすっぽり抜けていたけれど、そうだ以前聞いた。
✴︎回想✴︎
「怖ーい。ねえ、バティスティーヌ夫人」
「ええ、最近ご無沙汰らしいわよ。旦那様も、愛人も、あのユー様ともね」
「あらあら、それで熱心に仮面舞踏会で、若い子に粉をかけているのね」
「こんな地味な娘、フェンリス様は単に揶揄って、ふざけて、目で愛でているだけでしょうに、嫉妬なんて怖ーい」
「両天秤にするなら、そうじゃないかもしれないけどね」
「初心そうで違うってことお?」
「昼は貞淑、夜はって基本だから、そうかもしれないでしょう?」
くすくすくす、うふふ、と笑いながら、バティスティーヌ夫人とマグロワール夫人も控え室を後にした。去り際、マグロワール夫人に睨まれて辟易した。
「言われたい放題ね、シャーロットさん」
「ええ……」
「フェンリスこと、ユース様と最近遊んでもらえないご夫人達、シャーロットさんの噂を耳にして、怒っている方もいるから気をつけて」
今のがそれか。フェンリスはユース王子の偽名らしい。最近遊んでもらえない、ということは、前は相手をしていたってことだ。夫人達ってことは複数。
✴︎回想終了✴︎
あの色気たっぷりのシルヴィア夫人とユース王子……。あれ、あのバティスティーヌ夫人とマグロワール夫人は? 彼女達も?
頭が爆発しそう。混乱もあるが、一番は嫉妬だ。あの会話の内容、食い散らかしてという言葉、つまりそういうこと。
あの時はロクサス卿の事で頭がいっぱいで、ふーんと思ったけど、社交界の貴公子ってこれだ!
上流貴族は、浮気も愛人もある程度認められているらしいって話を聞いたことがあるけど、まさにそれだ!
一方、私はキスすらされていない。チラリと自分の胸元を見て納得。掌サイズの寂しいお胸。
あの我儘ボディーで色気たっぷりなシルヴィア夫人と比べたら、私は確かに色気のない青臭い子娘……。
「色気の無い……青臭い……服を脱がす気なんて全く起きません……」
「レティア?」
いつの間にかユース王子が私の隣にいる。その他の視界はぼやぼやする。また離れた距離。
瞬間、私は唇を尖らせた。勝手に動いている。絶対に不機嫌そうな、やきもち丸出しの表情だろう。
「だからキスしてくれないのですか? ユース様。私だけ……」
ユース王子の胸元に手を添えて、グッと近づく。両腕を掴まれて、体を引き離された。
「いや、レティア」
心底困ったという、ユース王子の表情に大ダメージ。
「結婚しても浮気しますか? それがじょーりゅーですか? ゆーすさま」
「レティア……」
また困り顔。つまり拒否? 一生君だけだ。嘘でも良いのにそうは言ってくれない。
泣いていたら頭が痛くなって、気が遠くなり、暗闇に包まれた。
フィラント「俺はフィラントだ。ユースではないぞ。レティア、レティア。あー……」




