失恋した令嬢が大切に育ててきたマンドレイクに恋をして自覚するまでの話
初恋だった。
「ごめん、君をそういう風に見たことはないんだ。本当にごめん……」
彼は、誠心誠意謝っていた。
「い、いいの! ごめんなさい。私だって、急にこんなこと言って……」
まるで彼が悪者みたいになってしまった。悪いのは彼ではなく私なのに……。
「もし良ければ、僕と友達のままで」
「……うん、友達のままで」
こうして私の初恋は失恋に終わった。
♢
初恋だった。
彼に抱いたこの気持ちは。
次第にこの気持ちは抑えられなくなり……。
だから、意を決して告げたみたのだ。
そして、あえなく砕け散った。
悲しかった。泣きたくなった。
けれど、彼の前では泣けるはずがない。
好きになったのは私。
告白したのは私。
悪いのは私の方だから──
♢
彼と別れた後、私は独りで泣いていた。
場所は屋敷の敷地の隅っこにある温室。
そこには、珍しい花や植物が育てられている。
子供の頃、お父様が私のために用意したのだけど、私は草花になんて興味はなかった。
大人となった今でも、そうだ。
本は読まない。刺繍だってしない。
がさつで、男勝りで、可愛くない。
周りからそう言われて育ってきた。
だから、彼も私のことを異性として見ることができなかったに違いない。
彼のことが好きだと気付いた時から、努力はしていた。
髪だって伸ばした。お化粧だって頑張った。
けれど、やっぱり駄目だったのだ。
私は、しばらく温室の中で泣いていた。
ここには、滅多に人が来ない。庭師の出入りが一日に何度かあるだけで、私が中にいると分かると、入ってくることは決してない。
だから、この温室の中には私ひとりしかいない。
周りに音が漏れることもないから、私は大声で泣いた。
辛い。悲しい。苦しい。
こんなことなら、自分の気持ちを伝えなければ良かったと、後悔の念が押し寄せてくる。
自分は彼に嫌われてしまっただろうか。
分からない。
彼はこれからも友達のままでいて欲しいと言っていた。でも、彼に拒絶されてしまったのは事実だ。
だから、これまで通りの関係なんて私には出来ない。
なんてことをしてしまったのだろう。
――私が、彼との関係が変わることを望んでしまったから。
きっと私がした告白が、この先ずっと私と彼との間に爪痕として残っていくことになるのだろう。
……ああ、本当に私はなんてことをしてしまったのだろう。
そしてこうして自己嫌悪に陥っている。本当に馬鹿な真似をしてしまった。
次、彼と会った時どんな顔をすればいいのだろう。
私には、思いつかなかった。
「……会いたくない。ううん、会えない」
今の私に、彼に会う資格なんてない──
♢
泣き続けて、どれくらいの時間が経っただろうか。
あれほど沢山流していた涙はもう、枯れてしまった。
そして今の自分の心の中にあるのは、空虚感と喪失感だけ。
私はおもむろに顔を上げた。
すると、ふと目に入ってきたのは、ひとつの鉢植えだった。
それは、マンドレイクが植えられた大きな鉢。
万病に効くと言われている人の顔に似た根を持つ植物だ。
彼が前に一度ひどい風邪をひいた時。少しでも早く治してもらえるように、と。大切に育てた鉢だった。
当時私は、お父様に無理を言って商人から仕入れてもらい、温室でマンドレイクを育てたのだ。
といっても、仕入れたマンドレイクは小さな苗の状態だったので結局、育ち切る前に彼の風邪は治ってしまったけれど。
私は、マンドレイクの鉢植えの前に立つ。
当時と比べてマンドレイクはすっかり大きく成長していた。葉っぱは、鉢から大きくはみ出ているし、根の大きさは大人の腕ほどありそうだ。おそらくもう収穫しても問題ないだろう。
彼の風邪が治った後も、私はマンドレイクの世話を続けた。定期的に水と肥料を欠かさずあげたり、本を読み聞かせたり、歌を歌い聞かせたこともあった。
私一人では枯らしてしまっていたかもしれない。でも、庭師のお爺さんのランドルフさんに手伝ってもらって、何とかここまで大きくすることが出来たのだ。
――また彼が病気になってしまったら、きっと役立つだろうと思っていたから。
けれど、それももう必要無くなってしまったのかもしれない。
私は、マンドレイクの葉をおもむろに掴む。
マンドレイクは引き抜くと、金切り声のような悲鳴をあげて近くにいる者の命を奪うらしい。
――それならば、今の私になんて都合がいいのだろうか。
彼に拒絶されたまま生きていくなんて、到底出来ない。
そして、私は勢いよくマンドレイクを引き抜いたのだった。
「――えっ……」
だが、どうしてかマンドレイクは声を上げない。
「どうして……?」
私は驚愕する。マンドレイクは引き抜けば、悲鳴をあげる。そのはずだった。
手に持つマンドレイクのつぶらな瞳がおもむろに私を見つめてくる。
そして、
「――お前が泣いているから」
「えっ」
「だからよ、俺が啼けるはずねえじゃねえか……」
目の前のマンドレイクが喋った。しかもテノールが効いたなかなかのイケボだった。
驚く私にマンドレイクは話しかけてくる。
「とにかく、元気出せよ」
「えっ」
「俺でも食べて元気出せよ。絶対おいしいから」
マンドレイクは「絶品だぜ、俺はよお」と囁くようにしてイケボで自分自身を推してくる。
「いやああああ!!」
混乱した私は、マンドレイクを地面に叩きつけた。
「ぐはっ! おい、何をするんだ!」
地面に伸びているマンドレイクが声を荒げる。
しかし、私は構わず温室から逃げ出した。
♢
次の日、私は恐る恐るといった様子で温室の中を覗いた。
地面には、昨日叩きつけたはずのマンドレイクの姿は見当たらない。
周囲を見回すと、なぜか鉢に戻っていた。
どうやら庭師のランドルフさんが、あの後来て鉢に綺麗に戻してくれたらしい。
後でお礼を言っておかないと。
マンドレイクは私が来たことに気がついたのか、根の一部を両腕のように使って体全体を持ち上げる。そして、目と口部分だけ土から露出させた。
「よう、昨日は手酷くやってくれたな……」
マンドレイクは怒っていた。圧倒的イケボで怒っている。
「ご、ごめんなさい!」
私は即座に謝った。確かに驚いたとはいえ、地面に叩きつけたのはやりすぎだったと思う。
私の謝罪に対して、「いや、別に構わねえさ」とマンドレイクは根を横に振って応える。
「葉と根が少し痛んだ程度だ。食べる分には別に支障はない」
だから、とマンドレイクは言葉を続ける。
「昨日の落とし前ってやつだ。俺をおいしく食べてくれ」
葉部分を突き出して、ほら食えよ、とマンドレイクは言う。
何だか怖くなった私は、温室から逃げ出した。
♢
次の日、私は昨日と同じように恐る恐る温室へと入る。
「おい、てめえ、良い度胸だ……二度も逃げるとは、流石に俺も堪忍袋の根が切れたぜ」
マンドレイクは大層ご立腹だった。
私は逃げ出した。
♢
「……とりあえず、まずは落ち着いて話をしよう。別に取って食いはしない。というかお前が俺を取って食ってくれ」
マンドレイクは冷静に声音で言葉を紡ぐ。
私も恐る恐るだけれど、ゆっくりとマンドレイクの鉢に近づいた。
土部分から目と口を露出させてマンドレイクは私をじっと見つめる。
「大丈夫か? 逃げないか? 準備オーケーか? 駄目なら、泣くぜ俺は」
イケボで、心配そうにこちらの様子を伺っている。
私は恐る恐ると言った様子で、疑問に思っていたことを訊く。
「あなた、喋ることが出来るの……?」
「出来るさ。お前が教えてくれたんだ」
「えっ、私が……?」
マンドレイクの彼が言うには、今まで私が本を読み聞かせたり、歌を歌い聞かせたりしていたら、自然に言葉を覚えたらしい。
後は、人の言葉を話せるように何度も練習してここまでのイケボになったのだとか。
「ただの金切り声からここまで上手くなったんだ。凄いだろう?」
「確かに凄い……」
私は感心する。
金切り声からイケボ……。私には、その過程が想像つかない。
「まあ、そんなことは置いておこう。それで、どうなんだ? お前は俺を食べてくれるのか?」
彼はそう私に問いかけてくる。
「おすすめは、シチューだ。鶏肉やブロッコリー、白菜や玉ねぎと一緒に入れてコトコト煮込むんだ。もしかしたら、お嬢様のお前には舌が合わないかもしれないが、それはまあ、やみつきになるぜ?」
味は保証すると、マンドレイクの彼は言う。
私は目の前の彼が煮込まれている場面を想像する。
そして、思ってしまった。
「え、何だか食べたくない……」
いくら万病に効く薬草だと言っても、こうして言葉を操っている以上、気味が悪くて料理として出されても食欲は湧かない。
むしろ、げんなりしてしまう。
「な、何だと! 俺はおいしいんだぞ!! 珍味なんだぞ!?」
彼は憤慨していた。
「食べろ! 一口でいいから俺を食べろ! そしたら、やみつき間違いなしだ!! 思わず頬が蕩けて、ぼとりと落ちてしまうほどなんだぞ!!」
「え、なんか怖い」
本当にそうなりそうで、私は一歩後ずさった。
「おい、待て。分かった。今日はもう食べろとは言わない。だから、落ち着いて話し合おう」
明日からは言うらしい。
なぜそこまでして食べて貰いたいのだろうか、私には分からない。
けれど、話をするだけなら少しくらい付き合ってみようと思う。
そして、私はしばらくマンドレイクの彼と話をするのだった。
♢
「今日も来たか、こっちに来てくれ」
「今日も食べてくれなんて、言うの?」
「もちろん言う。おすすめは、スープだ。シンプルだからこそ素材の良さが輝く。最高食材である俺が入ったスープだ。どうだ? 食べたくなったか?」
「え、いやどうだって言われても……」
反応に困る問いかけをされる。
鍋の中に浸かるマンドレイクの姿を思い浮かべる。「あぁ〜、極楽ぅ〜」と気持ち良さそうに入っている光景が頭の中に浮かんでくる。
え、やだ、絶対食べたくない。
正直言ってこれ以上想像したくなかったので、話を変えることにする。
「あなた、どうして叫ばなかったの? マンドレイクなら、引き抜けば普通叫ぶんでしょう?」
「言っただろ。お前が泣いていたからだよ」
「私が泣いていたからってどういうこと? それであなたにとって叫ばない理由になるの?」
マンドレイクの彼は「なるさ」と頷いた。
そして「お前の泣き顔に惚れちまったのさ」とイケボで囁く。
「だから、俺はお前においしく食べてもらうと決めたというわけだ」
どういうわけなんだろうか。私には「だから」の後が繋がっていないように思える。それに彼を引き抜いた時には、私の涙はすでに枯れていた。
……というか、なぜ私は植物に好意を向けられているのだろうか。何だか無性に納得がいかなかった。
「生憎だけど、私には好きな人が……い、……る」
そうだ、私には好きな人がいた。けれど、もう――
マンドレイクの彼は、目を伏せるようにして言った。
「駄目だったんだろう? まあ、仕方ないさ。そういうこともある。気にするなとは言えないが、まあとにかく元気出せよ」
マンドレイクの彼の言葉に私は驚く。
「知ってたの?」
「知ってるさ。いつもと違って泣きながら帰ってきた。なら、誰だってある程度は思い付くだろう?」
なんて察しの良い人面植物なのだろう。
私は感心する。
「別に大したことじゃない。お前が俺に水をやりながら、好きな相手のことをいつも話してくれていたからな」
「え、そうだったかしら……?」
「そうだよ」
よく覚えてると、彼は言った。
「お前が話してくれたことは、何もかも全部覚えてる。だから、お前が抱いていた想いがどれほどのものだったのかも……」
だから元気出せよと彼は言い、次にイケボでこう言葉を続けた。
――「ツラいなら、俺食べる? 脳が弾けるおいしさだぜ」と。
私は、無言で温室を去った。
♢
「昨日は悪かった」
マンドレイクの彼は、今日会って最初にそう謝罪の言葉を告げてきた。
「茶化したかったわけじゃないんだ。ただ、俺はお前を元気づけたいだけなんだ」
マンドレイクの彼は悪気があってそう言ったわけではないらしい。
私は彼を許すことにした。
「いつかお前にはきっと良い相手が見つかる」
「そうかしら」
「そうだよ。お前は良い女だ。俺に肥料と水を欠かさず定期的にやってくれるし、言葉も教えてくれて、そして俺をここまでおいしく育ててくれた」
「そ、そうかしら……」
それは素直に喜んでいいのだろうか。
「だからお前に食べて貰えるなら、とても嬉しい」
まるで微笑むようにして、彼はそう言った。
♢
マンドレイクの彼と毎日話している内、私の中で何かが変わっていった。
最初は泣いてばかりいた私は、次第に笑みを浮かべる機会が多くなっていったと思う。
あれから想いを告げた彼とも何度か会った。
今でも彼と私は、彼が望んだ通り友達同士のままだ。
不思議なことに、それが辛いとは思わない。
マンドレイクの彼と言葉を交わしている内に、気持ちの切り替えることが出来るようになったのだろう。
それが良いか悪いかは分からない。けれど、結局はこれで良かったのだと私は思う。
♢
二週間もすればマンドレイクの彼とは、気さくに話せる間柄になっていた。
「どうだった? 仲直りしたのか?」
「仲直りというか、彼とは別に仲が悪いわけじゃないから」
「そうなのか? 人間のことはよく分からんな。あ、何だかお前に食べられたら人間のことを理解出来そうな気がする」
「意味不明なこと言うのやめて」
「ごめん」
話していてマンドレイクの彼は、時々無神経なことを言うことがあるけれど、それは結局のところ全部私のことを思ってのことだった。その後は、必死になって私に謝ってくるのが定番だ。
話していく内に私は彼のことを次第に知っていく。
彼はとても不器用で、真面目で、優しくて、イケボだった。
♢
あれから私が、マンドレイクの彼と言葉を交わすようになって半年が過ぎた。
彼はいつものように私が温室に入ると、「よう」と言葉をかけてくる。
「おい、遅いぞ。枯れてしまったらどうする。味が落ちるだろ」
「知らないわよ。肥料と水大量にやって根を腐らせるわよ」
「おいやめろ」
最近は私に対して遠慮がなくなり、軽口を叩くようにもなった。私も次第に軽口を返すようになる。
「おい、いつになったら俺を食べてくれるんだ。もう半年だ。いい加減、俺を食べてくれ」
そう言って彼はいつものように私に対して、自分自身を勧めてくる。
「おすすめはソテーだ。バターで炒めて、塩と黒胡椒をふりかけるんだ。思わず頬が落ちるほどの絶品だぜ、俺は」
彼はいつものように自分を勧めてくる。
最近私は、意識的に想像しないように頭の中のイメージを瞬時に消し飛ばす技術を身につけた。
浮かんできたイメージを即座に消滅させた私は、彼の言葉を無視して訊く。
「……前から思ってたんだけど、その知識、誰から教わったの?」
「ああ、庭師のランドルフだよ。あの爺さん、いつも俺を見て、舌舐めずりしながら呟いてる」
ランドルフさん……!!
今知った衝撃の事実。だから、割と庶民的な料理ばかり勧めてきていたのか。なんてことだ。
私は彼に次会った時、絶対注意しようと決意する。
意気込む私を尻目に、彼は「なあ」と言った。
「ランドルフを見習ってくれ。俺は食べられたいんだ。食べられるためにお前に育てられたんだ」
だから、俺を食べてくれと彼は懇願する。
それはまるで死にたいと言っているように思えて、かつての自分の姿と重なった。
思わず私は声を荒げる。
「だめよ! 自分から死にたいなんて思っては駄目!」
マンドレイクの彼はムッとした表情を見せる。
「お前だって同じ気持ちだったじゃないか!」
そうだ、確かに私は最初、死にたいと思っていた。
「でも、貴方は私を励ましてくれた! だからもう思わない!」
彼のおかげで、今では私は心の傷はすっかり癒えていた。
だから、もう平気だった。そのことについてとても感謝している。
そう、彼に対して正直に告げる。
「……それでも食べられたい。俺はお前に食べて欲しい。食べられるのならお前がいい」
そのためだけに自分は育ってきたのだと彼は言う。
彼の決意は固いらしい。
「……分かったわよ」
私は渋々頷く。
「ありがとう……これで俺は、ようやくお前のために……」
それに対して、彼は感謝の言葉を述べる。
感極まっているマンドレイクの彼をよそに、私はおもむろに彼の葉を力強く掴み、そして――
――勢いよく引きちぎった。
「アアーッ!! 俺のヘアー!!」
マンドレイクは絶叫する。
一応は悲鳴なのだが、イケボだったので私への影響は皆無だ。
私は構わず、彼の葉をそのまま口に入れ、そしてムシャァと豪快に噛みちぎる。苦味が口の中一杯に広がった。
「まっずい……」
「そりゃそうだろ……ちゃんと調理してくれないと……」
マンドレイクは「せめて火を通してくれよ……」と抗議してくる。
次に私は、間髪入れず捲したてるように言った。
「よし、これでいいでしょう!? はい終わり!!」
「なっ! これで終わりだと!? ふざけるな! もっと食えよ!! 好き嫌いは駄目なんだぞ!!」
「うるさいわね! 嫌いじゃないわよ!! むしろ好き! 不味いけど!!」
そう一方的に告げて、私は温室を後にする。
「ふざけるな!! 俺は不味くない!! 取り消せ!! ちくしょう!!」
後ろから、彼の文句の声が聞こえてくる。
けれど、私は彼に対して言葉を返すだけの余裕がなかった。
私は顔を両手で抑える。
今の私の顔は赤く染まっていたに違いない。
「私、どうしてしまったの……?」
おもむろにひとりごちる。
今まで彼を何だか不気味だから食べたくないと思っていた。
でも、今は純粋な気持ちで彼を大切に思っているから、だから彼を食べたくないと思ってしまう。
いつの間にか、自分の気持ちが劇的に変化している。
――それに、なぜか彼に対して咄嗟に好きだと言ってしまった。
それが、とても恥ずかしい。
自分は一体どうしてしまったのだろうか。
……いや、この気持ちは分かっている。一度経験しているのだから。
そうだ。自覚する。
私はマンドレイクに恋をしたのだ。
♢
次の日も私は相も変わらず温室に通う。
彼はいつものように私を出迎えてくれた。
「ようやく俺を食べてくれる気にはなったか?」
「ならないわよ、馬鹿」
そして、いつもと変わらず彼と私は他愛もない話をする。
「お前が出て行ったあの後、ランドルフが来て、小一時間俺を食べたそうに見つめていた。お前以外に食べられる気はない。注意しておいてくれ」
「ランドルフさん……っ!!」
彼と言葉を交わしながら、私は必死に考えていた。
――どうやってこの気持ちを彼に伝えようと。
彼を目の前にして、私は散々悩むのだった。