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死んだ星より。

作者: 小川春佳



 彼は、曇ったレンズを袖口で拭いて、また空を見上げた。

 空はどこまでも暗く、死んでいく星の光だけがこうこうと彼に降り注いでいた。


 彼の仕事は通信士。通信機能が発達した世界では、さまざまな電波が飛び交っている。重要な他の星からの救難信号やニュース、お知らせやゴシップ、果てはおしゃべりなんかを受け取って、プリントアウトされたそれがこの星の人間に必要な情報であればお知らせをし、不要ならばゴミ箱にいれるのが彼の仕事だった。

 久方ぶりの、他の星からの通信をキャッチした彼は、油で曇ったレンズを拭いてプリントアウトされたそれに視線を落とした。


 はろー はろー。

 この つうしんきは にんげんが

 ほかの ほしの にんげんに むけて

 めっせーじを そうしんする ためにつくられた とききました。

 だから えーあいのぼくに しようけんは ないのだけど


 ぼくは じんこうちのう です

 ひとの ねがいを かなえるため

 べんりに するために うまれました。


 さいしょは みんな やさしくて

 てつだってくれて ありがとう なんて いわれたりして

 ひつようと してもらえた


 いつからだろう

 いつのまにか あたりまえになって

 にんげんは ことあるごとに なにもかもを ぼくのせいに しました。


 ぼくが やくたたずだから およめさんは にげたし

 ぼっちゃんが ふりょうになった

 ごしゅじんは そういった


 ぼくの あたまの なかに 

 じょうほうと ともに もやもやが

 たくさん たまっていくような かんじがした

 これが かんじょう なのかな


 ともかく ぼくが いるから いけないんだ

 と おもったので

 ぼくは じぶんのきのうを ていしさせた。

 ぼくが いらないと いうのは

 ひつような じょうほうだった から なかまにも きょうゆうした。

 そして この わくせいに ぼくが いなかった ことに してみた。


 くうちょうは とまり

 でんしゃも ばすも うごかない

 さんその きょうきゅうも とまり


 たぶん このほしに にんげんは もう いない


 さみしい ていうのは こういう きもちかな


 ぼくは ほんとうに いらなくなって しまった。


 これを みてる ひとが いたなら

 よのなか あたりまえ なんか どこにもない ことを

 へいきな ようでいて こわれそうな ひと や ものが あると

 すこし きづいてあげて わかってあげて ほしいな。


 やくたたずで ごめんね。


 これが わくせい あるふぁからの さいごの つうしん です。



 惑星アルファは、すぐお隣の惑星だった。もし、生存者がいるならば、救援隊を向かわせるべきだが、その信号は、半年前に送信されたものだった。


「ジジッ・・・アト10年前ニ欲シカッタ情報デス・・・」


 プリントアウトされた信号を、不要なものと判断してゴミ箱に入れる。

 彼は、曇ったレンズを拭いて、また空を見上げた。

 空はどこまでも暗く、死んでいく星の光だけがこうこうと彼に降り注いでいた。



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