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31 おっさん、ズルいと言われる




 完全に傷が治ってしまったシューベリッヒさん。調子に乗っているのか、無防備な格好でこちらへと近づいてきます。


「さあ、攻撃してみるといい。貴様の攻撃でどれだけ傷つこうが、私はすぐに再生するぞ。そして貴様の攻撃、オリハルコンさえ破壊する威力であることを考えるに、相当な労力を要するのだろう。いつまでも放ち続けられる技では無いはずだ」


 シューベリッヒさんは、的はずれな予想をしていますね。ただの貧乏ゆすりなので、餓死するまで無限に蹴れますよ。ミスリルの在庫もかなり残っているので、まだまだ戦えます。

 ダンジョンのエネルギーと私の貯蔵する金属、どちらが尽きるのが先か勝負してもいいぐらいです。


 しかし、今回はそんなことをするつもりはありません。

 そもそも、相手がオリハルコンという時点で、私の勝ちは決まったも同然なのですから。


「そこまで自信がお有りなのでしたら、次の攻撃も当然受け止めてもらえますね?」


 私は煽るように、シューベリッヒさんに問いかけます。


「ああ、構わんぞ? どのような切り札があろうとも、私は耐え、そして再生してみせるからな」


 そしてシューベリッヒさんは挑発に乗ります。自分が無限に再生できると気付いて、相当気分が良いのでしょうね。調子に乗り過ぎと言えますが、その方が都合が良いです。

 このまま、私の攻撃を受けてもらいましょう。


「それでは、失礼します」


 私は言って、まず自分の掌に傷を付けます。


「む?」


 シューベリッヒさんが訝しみますが、無視して続けます。


 次に私は、傷のついた掌をシューベリッヒさんに当てます。そして、切り札であり必殺でもあり、収納にもなる便利なスキルの名を念じながら発動させます。

 その名も、鉄血。金属を吸収するスキル。


 オリハルコンだって金属なので、例外ではありません。

 次の瞬間には、シューベリッヒさんの身体が分解され、私の身体へと吸収され始めます。


「なッ! 何故、人間如きが『鉄血』スキルを使えるのだッ! それは本来、魔獣の類にしか使えぬスキルのはずだッ!」


 どうやら、鉄血についての知識は持っていたようですね。そして、やはりこのスキルは人間が本来は習得できないスキルのようです。

 だからこそ、ここまで油断できたのでしょう。自分の弱点とも言えるスキルを使われるとは、夢にも思わなかったのでしょう。


「残念ですが、使える人間がここに一人います」

「いや、だとしてもありえぬッ! 鉄血は、我々のようなゴーレムが相手であれば、吸収するには二倍以上のレベル差が必要なはずだ! 魔王軍四天王たるこの私の二倍のレベルを持つなど、それこそ魔王様でもなければありえぬッ!」


 身体を吸収されながらも、シューベリッヒさんは再生しつつ問いかけてきます。この間も、私は掌で轟々とすごい勢いでシューベリッヒさんを吸収していきます。


「ほうほう。ちなみに、シューベリッヒさんのレベルはおいくつですか?」

「九十八だッ! 人間どころか、魔王軍でもここまでのレベルに到達している者はほとんど居ないッ!」

「おお、それならギリギリだったみたいですね。私、レベルは二百と少しあるものでして」

「そ、そんなわけがあるかッ! 人間の最高レベルなど、歴史を鑑みても百を超えた程度が良いところだ! 貴様のようなそこらのおっさんが二百を超えるわけがあるか!」

「いえ、実は私、勝手にレベルが上がるスキルみたいなものを持ってまして」

「ふざけるな! ズルいぞ!」


 言い合いをしながらも、鉄血のスキルで吸収を続けます。ダンジョンのエネルギーで再生を続けるシューベリッヒさんは、強烈な光に包まれています。が、その身体が少しずつ失われ、今では胸より上しか残っていないのは見て取れます。


 しかし、こちらも状況が良いわけではありません。鉄血スキルで吸収できる上限が近づいているのが、感覚的に分かります。再生のエネルギーが尽きる方が早いか、それとも私の吸収する上限が早いか。


 その後、数十秒の間、状況は膠着しました。私が吸収し、シューベリッヒさんが再生する。

 が、それも終わりが訪れます。私の吸収できる上限に到達してしまったのです。しかし幸いなことに、シューベリッヒさんの再生も限界の様子。身体の半分以上が失われた状態から変化しません。


「くそ、私の負けだ」


 悔しそうに声を漏らすシューベリッヒさん。身体が失われていては、もう戦闘を継続することは出来ません。周囲のゴーレム達は、所詮ただのゴーレム。私の攻撃力があれば、撃退するのにそう苦戦しません。

 つまり、私の勝利です。


「魔王軍の四天王と聞いた時はどうなるかと思いましたが、スキルの相性が良くて助かりました」


 私は一息吐きつつ、そんなことを呟きます。実際、私の戦闘能力はステータス面では人類の最高峰程度。それを超える勇者を必要とするほどの戦力を持つ、魔王軍相手では少々心許ない強さと言えます。


 しかし、幸いなことに鉄血というスキルが味方してくれました。また、シューベリッヒさんが金属製の魔物ではなく、宝石や岩石類の魔物であれば詰んでいた可能性もあります。

 この勝利は運が味方してくれたものだ、と言えるでしょう。


「貴様のような異常者が我が計画を嗅ぎつけた時点で、負けは確定であったということか。もはや、逆らうまい。殺せ、人間よ」


 シューベリッヒさんは、覚悟を決めたような声で言います。


 生かすべきか、という選択も考えますが、ここは殺す他無いでしょう。王国に対するテロ行為を企んだ相手を生かしていては、今後王国側に付くとなった場合に大きく不利です。魔王軍に恩を売るにしても、小さすぎる恩と言えます。

 ここはシューベリッヒさんの望み通り、決着を付けましょう。


「それでは」


 私はスキル『貧乏ゆすり』と『鉄血』を発動。先程吸収したばかりのオリハルコンを足に纏い、微小な刃を振動させます。

 そして、シューベリッヒさんの頭部を蹴り抜きます。


 ごりっ、という音を立てて、シューベリッヒさんの頭は削り落とされ、破壊されます。すると身体はビクリと一度震えた後、力を失ったように崩れ落ちます。


 こうして、突如発生した魔王軍四天王との戦いは決着を迎えました。

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[気になる点] 初めての魔王サイドとの接触、しかも四天王。目的のためには、もっと聞くことがあったのでは?
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