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29 異常事態の原因




 私は子供たちと有咲さんから離れ、少し広々とした空間に出ます。もしも本当に敵がいて、こちらを探しているとしたら。すぐに戦闘に入る可能性もあるので、こうした広い空間の方が都合が良いと言えます。接近する敵を発見するのも楽ですし、戦闘でも動きを阻害されません。


 そしてしばらく、広い空間で待ち続けます。敵が来るとすれば、恐らくダンジョンの深部からです。なので、子供たちの隠れている場所より深部に近い、この空間で待っていれば先に遭遇するはずです。


 小一時間ほど、じっと待ち続けました。すると、何やら騒々しい気配がダンジョンの奥の方から迫ってきます。


「ほう、待ち構えているとは、豪胆な奴だな」


 そして、声が響きます。


 現れたのは、数十体のゴーレムと、人間のような形をした一体のゴーレム。喋ったのは、人間型のゴーレムです。


「始めまして。私は乙木と申します。お名前をお伺いしても?」

「自分から名乗るとは、謙虚なことだ。いいだろう、この私の名をその魂に刻むが良い」


 人型ゴーレムが、やたらと大きな態度で話しだします。


「我が名はシューベリッヒ! 魔王軍が四天王の一人、オリハルコンドールのシューベリッヒだ!」

「これはどうも、シューベリッヒさん。幾つかお尋ねしたいことがあるのですが」


 私が訊くと、シューベリッヒさんは何やら呆れて困惑するような雰囲気を見せます。まあ、ゴーレムなので表情は分からないのですが。


「魔王軍の四天王だぞ? 何故驚かん?」

「はあ。まあ、可能性はあるかな、と思っていましたので」


 王都のマルチダンジョンを管理しているのは、王国の騎士たちです。そんなダンジョンの管理者の目を盗み、異常事態を発生させる。それは並大抵の存在には不可能なことです。

 だからこそ、人為的な異変ではない可能性も考えました。が、実際はこのとおり。魔王軍の精鋭による、破壊工作であったわけです。


「それよりも、シューベリッヒさん。このダンジョンの異常事態を起こしたのは、貴方ですか?」

「察しのとおりだ。私がこのダンジョンの魔物を生み出すエネルギーを最深部に集め続け、高位のゴーレムを大量に生み出した」

「なぜ、このようなことを?」

「言うまでもない、貴様ら人間への復讐だ!」


 復讐、と言ったシューベリッヒさん。魔王軍は、人間をかなり恨んでいるのでしょう。声から憎悪がありありと読み取れます。


「やがてこのダンジョンは強力な魔物で満たされ、ダンジョンの外へと溢れ出すだろう。そうなれば王国の壊滅は免れぬだろう。これこそが我が悲願! 貴様ら人間共への復讐なのだ!」

「そのためには、目撃者が居るのはマズい、というわけですか」


 十分な数の魔物を生み出す前に異常事態が発覚すれば、ダンジョン内は制圧されてしまうでしょう。シューベリッヒさんの目的を達成する為には、一連の流れが全て秘密裏のまま進む必要があります。


 この計画に、どれだけの時間をかけるつもりかは分かりません。が、それほど長い時間のかかるものでは無いのでしょう。

 マルチダンジョンに入る冒険者は数多く居るのですから、今よりも大規模な異常が発生すれば、目撃者の数も増えます。そうなると計画の途中で騎士団に邪魔をされ、魔物は一掃されてしまうでしょう。


 それでもこの計画を実行している以上は、成功する見込みがあるのです。つまり、騎士団が異常事態を把握するよりも早く、魔物を溢れさせる自信があるのです。


 そう考えると、この異様な魔物の発生状況は、ここ数日のうちに起こったものとして考えて良さそうです。

 さらに言えば、ここで私が倒された場合、異常事態は急速に進行。ダンジョンから溢れ出す可能性は極めて高いと言えます。


 ここでシューベリッヒさんの企みを潰して置かなければ、王都は大変なことになるでしょう。


「となれば、戦いは避けられませんね」


 私は、臨戦態勢を整えます。

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