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26 撤退道中




 緊急事態により、私たちは撤退を余儀なくされました。

 しかし、問題は出口までの距離です。


 実は今回、ダンジョン探索は一泊二日を予定していました。そのため、ダンジョンをかなり奥の方まで進んで来ていたのです。これから帰るとして、日付が変わる前に帰るのは不可能でしょう。

 私一人ならなんとかなりますが、子供連れです。そして子供たちは夜には眠くなってしまいます。寝ぼけて動きの悪いところでダンジョン内の魔物と遭遇、となれば結局危険に晒すことになります。


 複数の危険要素を比較し鑑みた結果、やはり徹夜でダンジョン内を強行軍で進むのは良くないという判断に至りました。

 というわけで、不安は残りますがダンジョンでの野営です。



 子供たちを不安にさせないため、様子がおかしいので冒険者ギルドへ報告に戻ろう、という単純な話で方針は説明してあります。

 なので、子供たちは危険に怯えること無く、普通に野営の訓練だと思って行動しています。

 というか、キャンプ感覚なのでしょう。楽しげに会話をしています。


「へぇ、じゃあティアナとティオもダンジョンに来るのは初めてなのか~」

「うん。冒険者の経験なんて、ママの知り合いの手伝いって形で、ダンジョン以外のところに同行したことがあるぐらいかな」

「それにしては、とても慣れている感じに見えました」

「そんなことないよ。わたしもティオも、けっこういっぱいいっぱいだった」

「でも僕たち、昔からなんだか、余裕があるとか度胸があるとか、よく言われるんだよね」

「そりゃ、二人ともすっげー美人だからだろ? 顔が良いから何やっても様になるんだよ」


 子供たちの会話に、さりげなく有咲さんも混ざっています。

 現在は野営の準備も終えて、魔道具で作られた加熱器具と鍋を使って調理をしているところです。

 洞窟のように閉鎖された空間で、移動もせずに大きな火を使うのはあまり良くありません。なので、調理には魔道具を使います。高価な品で、シュリ君から餞別に貰った冒険者セットに入っていたものです。


 普通の冒険者はこうした道具は持っていないので、洞窟では保存食を食べることになります。あるいは、最初から日帰りでダンジョン探索に挑むか。

 なので、こうして温かい食事が出るというのは稀なことなのです。

 もちろん私は皆さんに教える義務があるので、その辺りの説明も既に済ませてあります。


 あとは鍋が煮えるのを待つばかり。乾燥野菜と干し肉と固形調味料を突っ込んで煮るだけの料理ですが、保存食そのままよりは遥かに美味しい代物です。


「そろそろ鍋も煮えたようですね。食事にしましょう」


 私が呼びかけると、皆さん「はーい」と声を上げて応えてくれます。私は小さな器に鍋からスープを注いで、順番に皆さんへと渡していきます。

 食前の挨拶をするような状況でもないので、皆が受け取った時点で食事を始めてしまいます。


「はー、温まるな~!」


 ジョアン君が幸せそうに声を漏らします。


「疲れが吹き飛ぶみたいだね」

「うん。おじさまの作ったスープ、美味しいです」


 ティアナさんとティオ君も、嬉しそうにスープを食べています。


「今日はいろいろあったから、その分おじちゃんのスープが美味しく感じますっ!」


 ローサさんもスープを味わい、微笑みをこぼします。

 こうして子供たちが喜んでくれると、作った甲斐があるというものです。


 ちなみに、ローサさんが言ったいろいろというのは、スチールジャイアントゴーレムの件だけではありません。

 実は撤退を決めてからの退路でも、何度か強力なゴーレムと遭遇しました。最も強力だったのは、ミスリルゴーレムの群れでした。十数体のミスリルゴーレムと遭遇したときは、さすがに皆さん表情を強張らせていました。

 まあ、ミスリルは私が鉄血スキルで吸収できるので、全部一瞬で無力化しましたが。


 そうした撤退道中の戦いもあり、皆が疲れています。だからこそ、温かいスープは疲れた身体に染み渡り、癒しとなるのでしょう。

 ちなみに、そうした数々の戦闘のお蔭で私以外の全員のレベルが上がりました。今では子供たちは全員がレベル四十台。有咲さんに至っては七十台まで到達していたりします。

 ここまで来ると、もう普通の冒険者よりも強いぐらいのステータスになります。最低限の知識さえ学べば、すぐにでも冒険者になれるでしょう。


 とはいえ、今はまだ知識的には素人。野営には危険が伴います。今日は異常事態も発生しているので、より私が周囲を警戒しなければならないでしょうね。

 こういうときは、不眠症スキルで眠らずに済むことが本当にありがたく思います。

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