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23 戦闘と採取




 ジョアン君を先頭に、探索を進めていきます。周辺警戒についてのノウハウを教えつつ、基本的にはジョアン君の判断に任せて行動します。

 そうして探索を続けていると、幾つかの鉱床を発見。スキル『鉄血』で金属資源だけを回収し、すぐに次を求めて移動します。


 やがて幾つか鉱床を見つけたところで、ようやく魔物と遭遇しました。


「おや、これは珍しいですね」


 現れたのは、ミスリルプレートゴーレムと呼ばれる魔物です。この近辺ではごく稀にしか出没しないはずですが、運が良いのか出くわしました。


 本来、この近辺はロックゴーレムやアルミプレートゴーレム、アイアンプレートゴーレムが出没する地域です。が、極稀にこうした例外的なゴーレムも出没します。中でも珍しいのがこのミスリルプレートゴーレム。ミスリルという希少な金属を表面装甲に使用した、頑丈かつ魔法耐久力も高いゴーレムです。

 なお、中身は他と同じくロックゴーレム。なので、危険度は極めて低いと言えます。


 言ってしまえば、この魔物はボーナスのようなもの。希少なミスリルを入手できる上、弱い魔物ですからね。しかも上位魔物なので経験値も豊富。いいこと尽くめです。


「戦闘に入りましょう。ジョアン君、まずは君が指揮してみて下さい」

「分かった!」


 私が指示すると、ジョアン君は武器を構えます。

 ちなみに、武器は棍棒です。先端部分を金属で補強したもので、打撃力が高くなっています。ゴーレム相手に剣を使うのは刃こぼれして勿体無いですし、威力も通りづらい。なので、ジョアン君には棍棒を支給しました。

 技術が無くとも扱える武器なので、冒険初心者であるジョアン君でも取り扱いに困らないという利点もあります。


「でやあぁあっ!」


 ジョアン君は声を張り上げ、真っ先にミスリルプレートゴーレムへと飛びかかっていきます。棍棒を振り上げ、殴りかかります。

 ガン、という音が響きます。一撃を食らわせたジョアン君は得意げにしています。


 が、これは良くありません。


 ミスリルプレートゴーレムは、頑丈さだけは飛び抜けています。ジョアン君の一撃では、大したダメージになっていません。

 油断したジョアン君は、ミスリルプレートゴーレムの体当たりによる反撃を食らってしまいます。


「ぐわっ!」


 吹き飛ぶジョアン君。このままだと床や壁にぶつかってダメージを負ってしまうでしょう。見過ごす理由も無いので、私は素早く助けに入ります。

 ジョアン君の飛んでいく方向へと駆け出し、壁に衝突するより先に抱き止めて保護します。


「大丈夫ですか、ジョアン君?」

「あ、おっちゃん」


 ジョアン君は、恥ずかしそうにしながら顔をそらしてしまいます。恐らく、油断して反撃を受け、あげくフォローをされたことを恥じているのでしょう。


「私が守っています。だから安心して下さい。落ち着いて、よく見ればゴーレムの攻撃なんて簡単に回避できますよ」

「う、うんっ! 分かったよおっちゃん!」


 気を取り直したジョアン君は、再びミスリルプレートゴーレムへと向かっていきます。正面から攻撃する、と見せかけて側面に移動。そのまま足に棍棒を叩きつけます。

 ゴーレムは攻撃態勢にあったこともあり、簡単にバランスを崩します。


「お返しだ!」


 そして、追い打ちのジョアン君の体当たり。子供とはいえ、レベルとステータスのお蔭で成人男性を超える馬力があります。ゴーレムを転倒させるのは難しいことではありませんでした。


 ひっくり返ったミスリルプレートゴーレムは、じたばたともがきます。起き上がろうとしますが、そこをジョアン君は棍棒でタコ殴りにします。このせいで上手く起き上がれず、ゴーレムはされるがままとなります。

 やがて度重なる重い衝撃でプレートの内側にダメージが蓄積。所詮中身はロックゴーレムですから、数分もすれば活動停止してしまいます。


 見事なジョアン君の勝利です。


「よく頑張りましたね、ジョアン君」

「えへへ、おっちゃんが守ってくれたお陰だぜ!」


 鼻頭を擦りながら、照れくさそうにジョアン君は言います。そんなジョアン君の頭を撫でます。こうして褒めて伸ばすのが、私の基本的な教育方針です。


「いいなあ、ジョアン。おじさまに褒めてもらえるなんて」

「僕も撫でてほしいなぁ」

「羨ましいです」


 子供たち三人が、羨ましげに声を上げます。差をつけるのはよくありませんね。私は三人を手招きして呼び寄せます。

 そして、三人の頭も順に撫でていきます。


「ティオ君、ティアナさん、ローサさんも偉いですよ。新人ですと、攻め気に逸って前衛が戦っているところへ魔法を打ち込み、味方ごと攻撃してしまうことも多いのです。しかし、皆さんはちゃんと状況を見て、攻撃を我慢していました。よくできましたね」

「うふふ」

「えへへ」

「わ、私はまだそこまで考えてなかったです」


 私が褒めると、三人とも嬉しそうにします。ローサさんだけは謙遜しますが、しかし顔には笑みが隠せていません。


 人間というのは単純です。良いことがあれば頑張る。嫌なことや辛いことがあれば逃げる。ですからこうして、何らかの形でご褒美をあげる必要があります。でなければ、ダンジョン探索という面倒で大変な仕事にはすぐ飽きてしまいます。

 飽きてしまった子供に強制しても、覚えは悪く効率も悪いですからね。こうしてちゃんとスキンシップを取り、飴を与えるのは重要というわけです。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 指揮をしてみてと言ったのに突っ込むジョアン。 血気にはやる冒険者の行動そのものです。 言われたこととやってることがアベコベですね。 ここはおじさんが叱るべきところでしょう。 そうでない…
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