22 実戦経験と冒険のノウハウ
私のレベルに関しての一悶着が落ち着いたら、ようやく探索を再開出来ました。
ゴーレムの出現するエリアは、特に危険度が低いエリアでもあります。ゴーレムは知能の無い自動的な行動をする魔物ですので、罠を張ることや奇襲をすることがありません。なので、冒険の初心者にはこれ以上ない修練の場所となっています。
マルチダンジョンが人の手の入った難易度の低いダンジョンであることもあり、新人冒険者はまずここで経験を積む、というのがセオリーだそうです。
当然、私もそうした前例に習います。
まずは私がゴーレムを倒してパワーレベリング。新人冒険者並みのステータスになるまで五人を育てます。そして安全に配慮しながら、五人にダンジョン探索を任せてみます。細かい部分を指示しつつ、教えていきます。
そうすれば、五人ともレベルにふさわしい実力が得られることになるでしょう。
冒険者志望のティアナさんとティオ君はもちろん。有咲さんにもそうした自活能力は持っていて欲しいです。また、ジョアン君とローサさんも、冒険者として生きる術を選択肢として持てるのは将来を考えると良い話でしょう。
もちろん、あくまでも冒険者は夢追い業。一攫千金が狙えるとは言え、職業としては理想的ではありません。四人には、もっといい将来を提示してあげるつもりですが。
何にせよ、最悪の場合に備えた保険というのはあって損はしません。
というわけで、一通りレベル上げが終われば五人に探索を任せてみることになりました。
というわけで、まずはレベル上げです。
およそ半日ほどダンジョンを探索すると、五人のレベルは見違えるほど高くなっていました。
【名前】美樹本有咲
【レベル】32
【筋力】C
【魔力】S
【体力】C
【速力】C
【属性】なし
【スキル】カルキュレイター
【名前】ジョアン
【レベル】25
【筋力】D
【魔力】E
【体力】C
【速力】D
【属性】なし
【スキル】不屈
【名前】ローサ
【レベル】24
【筋力】F
【魔力】C
【体力】E
【速力】F
【属性】土
【スキル】なし
【名前】ティアナ
【レベル】25
【筋力】E
【魔力】B
【体力】E
【速力】E
【属性】氷
【スキル】なし
【名前】ティオ
【レベル】25
【筋力】E
【魔力】B
【体力】E
【速力】E
【属性】風
【スキル】なし
おおよそ、予想通りの成長です。ジョアン君の体力が高いのは、恐らく不屈というスキルの効果でしょう。
そして有咲さんのレベルの上昇だけ早いのは、勇者であることが関係しているのかもしれません。
「これだけのステータスがあれば、この辺りのゴーレム相手なら危険は無いでしょう。そろそろ皆さんに探索を任せてみましょうか」
「よっしゃ! まかせとけ、おっちゃん!」
ジョアン君が自信げに胸を張って言います。
将来的なことも鑑みると、実際にジョアン君に任せるのが良さそうですね。
「では、ジョアン君をパーティーのリーダーに任命しましょう」
「リーダー?」
「はい。私以外の五人に指示を出しながら、冒険を先導する役割です。お願いできますか?」
「わかった! おっちゃんが言うなら、やってみる!」
これで、ジョアン君にリーダーとしての振る舞いを学ぶ機会を作ることができました。
続いて、他の皆さんのポジションも決めなければ。
「有咲さんは四人を守る形で、私と一緒に殿を務めて下さい」
「おう、わかった」
有咲さんが隣に寄ってきます。
「ティオ君とティアナさんは属性持ちですから、魔法による援護を考えると後衛につくのが良いでしょう。ローサさんも同様です。と言っても、ローサさんはまだ魔法の使い方が分からないかと思います。ティオ君とティアナさんから教えてもらって下さい」
「わかったよ、おじさま」
「まかせて、おじさま」
「が、がんばります!」
これで、全員の配置が決まりました。いよいよ、五人の冒険が始まります。
まあ、私という保護者付きですが。