21 おっさんの現在ステータス
私はステータスプレートを表示し、皆さんに見やすいように大きくして開示しました。
【名前】乙木雄一
【レベル】215
【筋力】A
【魔力】A
【体力】A
【速力】A
【属性】なし
【スキル】ERROR
「はっ、えっ? にひゃくっ?」
私のレベルを見て、ティオ君が驚愕の声を漏らします。
同様に、他の四人も驚きのあまり固まっています。
「お、おっちゃんってホントにすごかったんだ。すげぇ。二百とか、聞いたこともねえよ!」
そして、最初に気を取り直したのはジョアン君。目を輝かせて、私に尊敬の眼差しを送ってくれます。
「Sランクの冒険者でも、レベルは百を越えたぐらいだと聞いたことがあります。なのに乙木のおじさまは、その倍近いレベルだなんて。信じられません」
ティアナさんが、驚きながらも予備知識の解説を加えてくれます。そのお陰か、ジョアン君はいっそう私を尊敬してくれたようです。なにやら私の手を握ってぶんぶん振り回してくれます。相当興奮しているようです。
「まあ、信じられないのは私自身も同意です。二百にもなって、ステータスが全てAというのはいくらなんでも低すぎますよね」
「いや、そこじゃねーから」
私の率直な感想は、有咲さんに否定されてしまいました。
「おっさん、どうやってレベル上げなんてしてたんだよ」
「前にも言ったかと思いますが、自動でレベルが上がるようなスキルを持っているのですよ」
「いや、そうでもなけりゃこのレベルになんねぇってのは分かるから。もっと詳しく教えろよ」
有咲さんに問い詰められてしまったので、ここは正直に詳細を話しておくことにします。話しても誰にも真似できませんし、問題ありませんからね。
まず、最初は『病魔』というスキルと『不眠症』というスキルの組み合わせでレベルを上げ続けていました。
が、四十程度まではすんなり上がったのですが、それ以降は上がり幅がかなり小さくなっていました。百を越えた頃には、ほとんど上がらなくなっていました。
それでも経験値が無いよりは良いと考えて、病魔スキルでのレベル上げは続けていました。
その結果、私が何よりも待ち望んでいたことが起きました。
そう、スキルの成長です。
病魔スキルはさらに上位のスキル『疫病』へと変化しました。得られる経験値量の増加と、さらに特定対象に疾病状態を付与するという効果まで得られたのです。
疾病付与は劇的な効果を上げました。これまでと同様に、私は自分自身へ疾病を付与して経験値取得を狙いました。これにより、私は私自身にダメージを与えて経験値が得られるようになったのです。
私が経験値を得てレベルが上がれば、私を殴って得られる経験値も上がります。
つまり、疾病付与をし続ける限り、レベル上げは効率が落ちること無く続くことになるわけです。
ただ、日常生活に支障が出ない程度の疾病付与に留めている影響で、それほど大きな経験値が得られるわけではありません。
レベル自体は際限なく上がりますが、時間という制約から桁外れなレベルにまでは到達できません。
なので、ステータス的には未だにAという、人間ならありうる範囲に収まっているわけです。
可能なら、千や二千までレベルを上げてしまいたいものですが。残念ながら、そこまで都合よくはありませんでした。
とまあ、一通り説明をしてみたところ。有咲さんも含め、全員がどこか呆れたような表情になっていました。
「おっさん、まさか寝てないだけじゃなくて、自傷癖まであるとは思ってなかったわ」
そして有咲さんが一言。これに、子供たち四人も頷きます。
「おっちゃん。さすがに自分を病気にしてまでレベル上げるのは変態だよ」
なんと、尊敬してくれていたはずのジョアン君にまでダメ出しされてしまいました。
おかしいですね。効率的にいって、これが一番良かったはずなのですが。治癒魔法があれば疫病スキルによる疾病が引き起こす不調は抑え込むことが可能です。なので、魔道具店の経営をしながら何の負担も無くレベルが上がるも同然だったわけです。
極めて合理的であったはずなのに、責められるとは。これは心外です。
とは言え、私に何か至らぬ点があったのも事実なのでしょう。ここはちゃんと指摘してくれた皆さんに感謝しておかなければなりませんね。
「ありがとうございます」
「え、なんでおっちゃんそこで感謝すんの?」
マジで変態じゃん、とジョアン君に小さく呟やかれてしまいました。