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20 マルチダンジョン初戦




 私たちは陣形を保ちながら、マルチダンジョンを進んでいきます。先頭が私。その後ろにティオ君とティアナさん。さらに後ろにジョアン君とローサさん。最後尾を有咲さんという順番です。


 最初の目的地は鉱物資源が得られるエリアです。ゴーレム系の魔物を生成するダンジョンでは、副産物として鉱床が数多く発見されます。

 こうした鉱床は、ダンジョン内では何度も再生されます。これは、ゴーレム生成時の排泄物のようなものだ、という説が有力です。つまりゴーレムを造った時に生まれる廃棄物が堆積して鉱床になる、といった具合なのでしょう。


 実際、出現するゴーレムの種類と鉱床で得られる鉱物の種類は常に一致します。


 戦時特需で武器や防具は確実に売れるはずなので、目標としては良質な金属資源を回収できれば、と考えています。

 実は、私の持つスキルの一つに『鉄血』というスキルがあります。血液の中に金属物質を溶かし込むというスキルです。これを使えば、アイテム収納袋を使うより遥かに多くの金属資源を回収できます。


 難点は、回収と取り出しどちらも血液から、つまり傷口を作らなければ不可能であるという部分です。また、金属ではない鉱物、つまり宝石や石材等は収納出来ません。

 元は身体から金属製の針山を生やす、ハリネズミのような魔物が持つスキルです。融通が効かないのは仕方ありません。




 鉱物系エリアを進んでいくと、鉱床発見より先に魔物と出くわします。


 ゴーレムです。見るからに金属製の身体をしていて、頑丈そうな相手です。が、実は大した相手ではありません。

 序盤に出てくるゴーレムは、その名もアルミプレートゴーレム。アルミ製の薄い装甲で表面を覆っているだけの、ロックゴーレムに過ぎません。移動速度も遅く、パワーはありますが攻撃を食らう心配はまずありません。

 適当に転がしてタコ殴りにすれば、新人冒険者でも楽に倒せる相手です。


 但し、数が揃うと厄介です。耐久性は高い為、囲まれると突破は困難。無理に突っ込もうものなら、そのパワーの餌食になります。


 そして今、正面に現れたゴーレムの数は八体。新人だと、即撤退が望ましい状況です。


「あの、おじさま。大丈夫でしょうか?」


 不安に思ったのか、背後からティアナさんの声がかかります。


「平気です。この程度なら相手にもなりません。見ていて下さい」


 私は安心できるよう、自信たっぷりな口調で言ってみせます。


 そして私は、真っ直ぐにゴーレムの方へと突撃します。普通の冒険者なら悪手です。圧倒的な攻撃力が無い限り、後退しながら少数と接敵する状況を維持するのがセオリーでしょう。

 しかし、幸いにも私には便利な廃棄スキルがあります。


 私は躊躇なく、ゴーレムの群れのど真ん中に飛び込みます。遅い動きのゴーレムが、私を狙って集まってきます。

 今にも攻撃を受けそうだ、といったところで、私はようやく、とあるスキルを発動させます。



 ドォンッ! と、爆発音が響きます。



 その爆発は、なんと私を中心にして発生しました。私を巻き込みながら、爆発は周囲に集まったゴーレム達を破壊します。

 一瞬で、ゴーレム八体はただの残骸に代わりました。


「ふぅ、よし」

「ちょっと待て! 良しじゃねえだろ!」


 有咲さんの文句を言う声が上がります。


「おっさん今さ、自分も巻き込んで爆破してなかったか?」

「ええ、そうですね。何しろ『自爆』というスキルを使いましたので」


 そう、私が使ったスキルの名前は『自爆』というもの。自分自身ごと、周囲を爆破するスキルです。生命力と魔力を混合して威力を発揮するので、うまく調整すると僅かな自傷ダメージと引き換えに周囲へ高破壊力攻撃を行える便利スキルです。


 ただし、これが使えるようになったのは最近になってからの話。ステータスが低かった、冒険者初期の私では自傷ダメージで死んでいました。

 今はステータスが上がったお陰で、自傷ダメージが気にならない程度まで小さくなりました。お蔭でどんどん自爆し放題です。


 自爆しても治癒魔法で傷を治せば、最終的な消費は魔力だけと同じ。ですので、自爆はステータスさえ足りていればとても優秀な攻撃手段となるのです。


「いや、まあ。おっさんがどうかしてるのは前から知ってたけどさ。にしても自爆はねぇよ」


 とまあ、一通り説明すると有咲さんには呆れられてしまいました。


「乙木のおじさまは、特別なスキルをお持ちなんですね」

「やっぱり、一流の冒険者は違うんですね」


 ティオ君とティアナさんは尊敬してくれます。


「おっちゃんおもしれー!」


 ジョアン君は楽しそうに言ってくれます。


「おじちゃんが平気そうで、安心しました」


 ローサさんは私に怪我が無いか心配してくれたようです。いい子ですねぇ。


「にしてもさぁ。あんな爆発に巻き込まれて平気って、おっさん今どんだけステータス高いんだよ」

「そうですね。お見せした方がいいかもしれませんね」


 有咲さんに言われ、私は自分のステータスを皆さんに開示していないことに気付きました。

 情報共有は重要です。それに、私だけステータスを秘密にするのも不公平で、不義理です。ここはちゃんと開示すべきでしょう。

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