19 王都近郊のマルチダンジョン
後日。イザベラさんの許可も出て、無事ダンジョンにはローサさんも同行することとなりました。
さらに数日後、マリアさんから教えられたオススメダンジョンへ向かう準備も終え、私たちは王都近郊にある大型ダンジョン、通称『マルチダンジョン』へと訪れていました。
このマルチダンジョン、正確には中型規模の複数のダンジョンが内部で繋がって出来たものだそうです。
その関係で得られる資源の種類が幅広く、難易度も大型ダンジョンの割に極めて低い。冒険者はもちろん、国にとっても非常に都合の良いダンジョンです。
王都の側にこんな便利なダンジョンがあるというのも都合の良すぎる話です。が、元を正せば恐らくは逆なのでしょう。こうした有用なダンジョンが存在する場所の近くだからこそ、王都のような大都市が発展した。つまりダンジョンに近いと便利なので街を作った、という話なのでしょう。
「では、行きましょうか」
マルチダンジョンの入り口に立ち、私は背後に居る皆さんに呼びかけます。ジョアン君、ローサさん、ティアナさん、ティオ君。そして最後尾に有咲さんです。
「めっちゃ楽しみだ! な、ローサ」
「うん。ちょっと怖いけど。でも、乙木のおじちゃんがいるなら平気」
ローサさんとジョアン君が楽しげに会話しています。
「わたしたち、簡単な魔法なら使えるから、魔物との戦闘にも混ぜてほしいです」
「僕もです。おじさま、よろしくお願いします」
ティオ君とティアナさんもやる気満々の様子。
「子供らがはぐれないよう、見といてやるからおっさんは魔物をきっちり倒してくれよな」
そして、有咲さんが殿を努めてくれます。
「任せて下さい。魔物は私が全部処理出来るはずなので、問題ありませんよ」
マリアさんからの情報によると、マルチダンジョンに出没する魔物はどれだけ強くてもステータスにCが並ぶ程度。それも階層主と言われる、ゲームで言うなればボスに当たる魔物でそのレベルです。
そして、人気のあるダンジョンであるため、罠等は解除され尽くして残っていません。通路は整備され、死角等もほとんどありません。ダンジョンから産出される資源を得るため、長年人の手が入り続けた結果でしょう。
ちなみに、ダンジョンというのは魔物に近い存在だ、ということが研究で判明しています。言うなれば、魔物を生み出す魔物。内部に魔法で作られた広い空間を持ち、そこでダンジョン毎に決まった魔物を生み出し続けます。
そうした行動をダンジョンが行う理由は判明していません。が、そこに目的意識は無い、という説が最も有力です。
長い歴史の中で、子孫を残す機能の弱い生物が種として淘汰されてきました。それと同じように、ただ偶然、魔物を生み出す機能を持った魔物が淘汰されずに残った。これが、ダンジョンという存在についての有力説の一つです。
まあ、神様が人類に遺してくれた神代の遺産、等という眉唾ものな説もあったりしますが。
と、無駄なことを考えてしまいました。今は、ダンジョン探索。資源集めとレベル上げの時間です。
「まずは、皆さんのステータスを見せて下さい。今回のパワーレベリングで、どこまで成長するのか把握しておきたいので」
私は、連れ立つ五人にそう呼びかけます。すると、五人はそれぞれステータスプレートを開示してくれます。
【名前】美樹本有咲
【レベル】8
【筋力】E
【魔力】A
【体力】E
【速力】E
【属性】なし
【スキル】カルキュレイター
【名前】ジョアン
【レベル】4
【筋力】F
【魔力】G
【体力】F
【速力】F
【属性】なし
【スキル】不屈
【名前】ローサ
【レベル】2
【筋力】G
【魔力】E
【体力】G
【速力】G
【属性】土
【スキル】なし
【名前】ティアナ
【レベル】5
【筋力】F
【魔力】D
【体力】F
【速力】F
【属性】氷
【スキル】なし
【名前】ティオ
【レベル】5
【筋力】F
【魔力】D
【体力】F
【速力】F
【属性】風
【スキル】なし
おおよそ、予想した通りのステータスでした。ティアナさんとティオ君は冒険者志望である為かステータスが少し高め。ローサさんが低めというのも予想通り。
ただ、全員がスキルか属性のどちらかを持っているのは予想外でした。特に、ローサさんとジョアン君。
もしかすると、この四人の子供たちは冒険者としての才能もあるのかもしれませんね。