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14 選択の自由




「最強って、そんなん無理じゃね?」


 有咲さんは率直な感想を口にします。ごもっともな意見。なので、冗談めかした言い方ではなく、もっとはっきりした言い方で言い直します。


「まあ、最強というのは極端な言い方ですよ。いざというときどんな選択肢でも選べるように準備しておく、というのが実際のところですね。逃げも隠れも出来るように、戦時中の国境超えを集団で可能な準備をしておく。この国を戦争で勝てるよう裏で進退のカギを握っておく。そして魔王側にも接触しておく。より都合の良い国の方でうまく活動できるよう、どちらの陣営にも根回ししておく。まあ、わかりやすい予定としてはそんなところでしょうか」


 私は、さっと思いつく限り、今の段階で準備できることを言い連ねていきます。

 すると、有咲さんが言い返してきます。


「そんな都合のいい立場になれんのか? ってか、どうすりゃいいかわかんないし」

「やることは単純ですよ。私が強くなればいい。話は元に戻るわけです」


 安全を脅かす三要素。全てに対処できるように強くなる。それは腕っぷしだけでなく、社会的、経済的な力も含みます。喧嘩で勝つ。情報戦で勝つ。資金力で、資産の差で勝つ。


 結局は、思いつく限り全ての勝負に勝てる力を手に入れる。それ以上でも以下でも無いわけです。


「そして強くなるための過程は何でもいいんですよ。正解は無い、というよりは誰にも分からないでしょうね。だから、現時点で私の持てる知識、能力を総動員して力を付けていくわけです。その為にこうしてお店を開き、資本と人材を握る側へと進もうとしているわけです」


 私が言い終えると、松里家君が満足げに頷きます。


「なるほど。納得です、乙木さん。何より、その考え方には個人的にとても同意できます。さすがは、僕が見込んだ方ですね」


 どうやら、私の説明に納得、共感して頂けたようです。これは良い反応ですね。

 一方で、有咲さんは難しい顔をしています。


「そんなの、上手くいく保証無いだろ。失敗したらどうすんだよ?」

「なるほど。確かに失敗すると、少し困りますね」


 有咲さんの心配も、理解できます。きちんと計画を立て、筋道立てた手順で物事を進行しないのでは不安にもなるでしょう。


「ですが、別にそれでもいいのです。失敗しても、上手く行かなくてもさほど困りませんよ」


 そこで、失敗そのものの不安を取り除くような話をします。


「ここは日本とは違います。悪い意味も多いですが、良い部分も多い。幸い、私達は女神様に特別な力をもらってこの世界に来ました。たとえ失敗して底辺に落ちたとしても、這い上がるのは日本よりも遥かに容易です」


 この点こそ、私達がこの世界で有利に活かすべき部分です。たとえ失敗して、底辺に落ちたとしても。私達は冒険者として身を立て、再起するのは難しくありません。現代日本のような便利ささえ求めなければ、この世界でまあまあ豊かな部類に入る生活が出来ます。


「なので、失敗を恐れる必要はありません。チャンスがあるのですから、いくらでも挑戦してみるべきだと思っています。まあ、安定して出世する、というルートと比べたら不安が多いのも事実ではありますが」


 私はそう言って、おおよそ失敗のリスクについて話し終えます。有咲さんは、ひとまず話の内容には納得できた様子でした。


「そっか。そういうことか」


 呟く有咲さんを見て、もう一言だけ付け加えます。


「もしも、有咲さんが私の考えに賛同できないなら仕方ありません。挑戦を強制することは、さすがに出来ませんから。非常に口惜しくはありますが、今から有咲さんが私とは別の選択をしても、それは仕方のないことだと思います」


 私が言うと、有咲さんは驚いたような顔でこちらを見ます。


「どうでしょうか。有咲さんの好きな方を選んでください」


 私は、ここで初めて有咲さんに選択を委ねました。今さらのような気もしますが、ここまで話をした以上、有咲さんの意思も改めて、しっかりと再確認しておかねばなりません。


 少しの間、有咲さんは考え込むように俯いていました。それが顔を上げて、私の方を向き直った頃には、かなり表情が良くなっていました。

 笑顔を向けてくれる有咲さんは、決断を語ります。


「アタシには、やっぱり難しいことは分かんないよ。アタシが困ってたときに、助けてくれたのはおっさんだ。今も、おっさんはアタシが困らないように、嫌がらないように気を使ってくれてる。だから、そんな心配してねぇよ。たぶん、上手くいく。だからおっさんに付いていく。アタシにとっては、それだけ。それで十分」


 そう言って、有咲さんは私と一緒にいることを選んでくれました。

 つい胸に、じんわりとこみ上げるものがあります。


「ありがとうございます、有咲さん」


 しかし、言葉を尽くして語ったりはしません。

 ただ気持ちのまま、感謝を口にしました。

※追記※


長らくおまたせしております、申し訳ございません。


現在、書き溜めが無くなっている状態と、執筆に難航している影響で続きの投稿が出来ておりません。

数話分を書き溜めることは出来ましたが、この量ではまたすぐに更新が滞ってしまいます。

よって、もう少し書き溜めを作った後、毎日投稿を再開しようと思っております。


毎日の更新を楽しみにしてくださっていた皆様には申し訳ありませんが、どうかご理解お願いいたします。

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