03 孤児院への寄付
従業員を増やしたことで、私の自由時間が増えると思っていました。
が、さほど増えることはありませんでした。
新しい従業員の皆さんに仕事を教えた後も、結局はマリアさんとの約束でティオ君とティアナさんの面倒を見なければならず、あまり店から離れる機会が増えなかったのです。
とはいえ、マリアさん一家は誰か一人が出勤するだけの日でも、ほぼ必ず三人揃って店に顔を出します。用事がある時は普通に外出出来るので、問題は無いといえば無いのですが。
ただ、マリアさんの勤務中にはティオ君とティアナさんの二人に囲まれる羽目になります。
そして二人から、あらゆる手段でパパになってほしいと暗にアプローチされるのです。
正直、精神的プレッシャーが半端じゃありません。
親子揃って肉食系というのは、なんとも恐ろしい話です。
従業員についてはひとまず解決したので、余裕のある時間を使って孤児院へと通いました。
最初の頃は子ども達と親しくなるために遊びを交えつつの交流。一人ひとりに私の顔を覚えてもらい、警戒心が無くなる程度には仲良くなります。
そして、教育用に購入した書籍を孤児院に寄付します。子ども達の将来のために活用して下さい、と言って渡せば、自然とイザベラさんが教育係を担ってくれます。子ども達も、信頼するイザベラ先生の話であれば真剣に聞いてくれるので効果的です。
そうして孤児たちに英才教育を施しつつも、私は既に二人ほどの人材を引き抜こうと画策しています。
一人は裁縫の得意な少女、ローサさん。そしてもう一人は子ども達のまとめ役であり、年長者でもあるジョアン君です。
二人に関しては、既に任せたい仕事や、特別に学んで欲しいことがあります。
なので、イザベラさんに話を通し、お願いしたいことがあるので二人と話をさせてほしい、と頼みました。
結果、私はローサさんとジョアン君の二人とじっくり話をする機会を貰いました。もちろん、イザベラさんという保護者も一緒に話を聞くことになっています。
ある日の午後、私は約束どおり孤児院のとある一室でローサさん、ジョアン君と向かい合います。傍らにはイザベラさん。
私のことを信頼してくれているとは思いますが、それでも子どもだけを相手に妙な話をされるのは困るでしょう。だからこうして場を見守る立場で同席しているのでしょう。
「さて。今回、ローサさんとジョアン君をお呼びしたのは他でもありません。お二人に、私の店に関わるお仕事をお願いしたいのです」
「仕事?」
ジョアン君が首をかしげます。
「おっちゃんのお願いなら別にいいけど、でも俺もローサも子どもだよ? まだ仕事なんて早いよ」
その通り。ジョアン君でもこの世界の成人である十六歳まであと三年はあります。ローサさんは五年か、六年程度でしょうか。
しかし、問題ありません。別に、成人に任せるような仕事をお願いするわけではありませんから。
「もちろん、大人にお願いするような難しいお仕事を頼むわけじゃありません。お仕事というよりは、お手伝い。いえ、お勉強と言った方がいいかもしれません」
そう言ってから、私は順にお願いしたい仕事の内容について説明します。