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23 カルキュレイターへの期待




「そうですね、まずはシンプルな計算をしてみましょう。一足す一は、いくらですか?」

「二だね」


 私の問いに、シュリ君は答えを出します。


「では、次です。あるところに少年と少女がいます。少年はりんごを一つ。少女はりんごを二つ持っています。少年はりんご一つと半分で満腹に。少女はりんご半分で満腹になります。さて、二人が満腹になるまでりんごを食べた時、残るりんごの数はいくつですか?」

「一つだね」


 これに、シュリ君はまた答えます。まあ、どちらも簡単すぎる問題ですからね。答えられて当然です。

 しかし、重要なのはその『答えられる』という事実です。


「二つの問題に答えて貰いましたが、どちらの答えを導くにしても、シュリ君は頭の中で計算を行いましたね?」

「そうだね。単純な四則演算を頭の中で処理して、答えを導いたよ。それがどうかしたのかな?」

「はい。実は、最初の問いで私は数式を提示しました。しかし、二つ目の問いで私は数式を提示していません。なのに、なぜシュリ君は計算できたのだと思いますか?」

「きゅ、急に哲学的な問いになったね」


 話題の方向性が突如変わったせいか、シュリ君は面食らいます。


「そうだね。多分、答えを導くため、数式に当てはめて考えるのが楽だったからじゃないかな?」

「なるほど。確かに、数式とは数を扱いやすくするために作られた言葉と言えます。数を処理しなければならない問題に直面した時、人は問題の内容を数式に当てはめ、計算し、答えを導きます」


 私のもったいぶった言い方に、シュリ君は眉を顰めます。


「オトギン。何を言いたいのか、はっきりしてほしいな」

「ええ。では次の問いに行きましょう。問題の答えを導く為、数式を扱う場合とそうでない場合。その二つにはどのような違いが存在するとシュリ君は思いますか?」

「むう。また遠回しだね。それは、使う理論の違いじゃないかな? 数式を使う場合には数学という理論で答えを導く。使わない場合は、帰納的なり演繹的なり様々な方法で答えを導く」

「なるほど。では、それ以外に大きな違いは無いと?」

「そうだね」


 よし。満足のいく答えを得られました。これで話が進みます。


「ここで最初の話題に立ち返りましょう。カルキュレイターというスキルは、計算をしてその答えを導くスキルです。その『計算』の中には、どこまでの範囲が含まれると思いますか?」

「どこまでって。それは数学的な範囲に決まって」


 そこまで言って、シュリ君は言葉を止めます。そして数秒の沈黙の後、再び口を開きます。


「いや。そうとも限らないのか。数学的な処理なんて、結局はボクたち人間が勝手に作ったものを基準にした考えにすぎない。スキルは人間の文化が生んだものじゃない。だったら、スキルが人間の文化に合わせた範囲で有効になるとは限らないんだ」


 シュリ君は、少し難しい言い回しをします。これについていけないようで、マルクリーヌさんと有咲さんは首を傾げます。

 ここで、私が補足するように説明します。


「数学というのは、人類が生み出した数字という言語によって形作られています。自然界には存在しないんです。そして、スキルは人間が生み出したものではありません。自然のものです。自然から生まれたものが、人間の生み出したものを基準に作られているというのは、不自然ですよね?」


 私の言葉に、マルクリーヌさんが頷きます。有咲さんはよく分かっていないのか、首を傾げたままです。が、ここでこれ以上説明を続けると話の腰が折れます。今は話を先に進めましょう。


「そう考えると、カルキュレイターというスキルが計算可能なものが数学的処理だけであるとするのは不自然になります。むしろ、数学以外のあらゆる問題について計算し、処理して答えを導くことが可能だと考える方が適切でしょう」


 そうです。つまり、カルキュレイターが計算し、答えを導くのは数式に限らないあらゆる問題全般であると推測できるのです。


「例えば、一足す一という計算は、数式で表すことが可能です。しかし、これは数学的に言った場合の話に過ぎません。もっと言えば『複数の情報を比較し、新たな情報を得る』という処理を数字で表現したものが数式なのです。つまり、数式は計算の本質ではなく、表面に過ぎないんです。そしてカルキュレイターというスキルで処理されるのは、我々人類が表面に与えた数式という皮の部分ではありません。その根源である複数の情報の比較。そして解を得るという行為こそが計算の本質。つまり、カルキュレイターの本領なのです」


 私が説明をするほどに、マルクリーヌさんと有咲さんは困惑の表情を浮かべます。わけがわからない、といった様子で首を傾げます。


「つまり、どういうことなんだよ!」


 有咲さんが不満げに声を荒げます。確かに、要約しなかった私の説明も悪いですね。ここは、分かりやすく何が出来るようになるのかを言ってしまいましょう。


「要するに、めちゃくちゃ頭が良くなるんです。どんな問題でも、必要な情報が揃っていれば答えが出せます。カルキュレイターとは、つまり『絶対に正解する』能力に等しいんですよ」


 私の要約に、有咲さんはぽかんとした顔になります。


「アタシ、別にそんな頭良くなってないけど?」


 そして、私の説をあっさり否定しました。

投稿から一ヶ月ほどが経過しました。

記念というほどではありませんが、数日ほど日に複数回の投稿を続けようと思います。


ストックに関しては問題ない程度に書き溜めてあるので、この後も連日投稿は暫く続きます。

宜しくお願い致します。

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