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22 戦争終結の糸口




「しかし、乙木殿。革命が起こるというのは理解できました。ですが、それは戦争が終わる保証にならないのではありませんか?」


 マルクリーヌさんが、疑問を口にします。確かに、工場を作って技術革命が起こるだけでは、戦争は終わらないでしょう。

 しかし、連鎖的に戦争終結につなげることは出来ます。


「そうですね。例えば、ですよ。例えば一億のゴブリンが一斉に攻めてきたとしましょう。勇者は人類を守りきれると思いますか?」

「それは、不可能でしょう。勇者の皆様がどれほど強かろうと、一億の軍勢を同時に押し留めることはできません。一列に並んで襲ってきて頂けるなら、話は別ですが」

「でしょうね」


 私はマルクリーヌさんの回答に満足し、頷きます。


「では仮に、この国の騎士を総動員すれば、被害を抑え込むことは可能でしょうか?」

「それも不可能でしょう。我が国の騎士は総勢十万にもなりません。ゴブリンであれば、一人あたり二十か三十は殺せるでしょうが、それで一億の軍勢を壊滅させることは無理というものでしょう」

「ですね。まったくもって、そのとおりだと思います」


 私はさらにマルクリーヌさんの意見に同意し、そしてさらなる問いを投げかけます。


「では、最後に質問です。騎士一人辺り、千から二千のゴブリンを倒せるような魔道具を装備として支給します。この騎士が総勢十万の軍勢を作るとしたら、ゴブリン一億の軍勢を撃退することは可能でしょうか?」

「そこまで行くと、妄想の域になります。が、可能と思われます。一億の軍勢と言っても、恐らくは縦に長い隊列を組んで襲ってくるでしょう。これを横に長い隊列で受けるならば、仮定に従えば勝てると思います」

「やはり、そう思われますか。ならば、問題ありません」


 私の言葉に、マルクリーヌさんは首を傾げます。そろそろ、もっと具体的な言い方で説明しましょうか。


「今までの例えは、戦争の敗因の一つを想定したものです。軍と軍が衝突した場合、大きく分けて二つの敗因があるはずです。それは質と量。兵の質が低くて負けるか、兵の数が少なくて負けるか。まあ、作戦が勝敗を左右する部分もあるでしょうが、大きな要因はこの二点で考えて間違いないでしょう」


 私の言葉に、マルクリーヌさんも頷きます。そのまま私は説明を続けます。


「そこで、私は思いました。勝利で戦争を終結させるには、まず大きな敗因となる要素を取り除かねばなりません。一つは量。軍勢に押しつぶされないために私が出来るのは、それ以上の軍勢を作ることではありません。軍勢に対処できるような、優れた騎士を武器によって生み出すことです。勇者ほどの力が無くとも、魔道具で武装を強化された騎士の軍勢を作れば対応能力は上がります。つまり、数の暴力に押しつぶされる可能性を大きく減じることができるわけです」

「つまり、勇者という戦局規模の優位性だけでなく、軍全体を強化することで戦略規模の優位性を得ようということですね?」


 マルクリーヌさんが、上手く理解してくれたようです。私は頷いて肯定します。

 すると、今度はシュリ君がツッコミを入れるように問いを口にします。


「じゃあオトギン。もう一つ、質に関してはどうなのかな? 例えば勇者を全員ワンパンで倒しちゃうような敵が一人いて、そいつが王都へ攻め込んでくるとしたら? オトギンは、そんな化物を相手にどうやって戦争に勝つつもりかな?」

「それは、単純ですよ。勇者か、あるいは私自身が強くなってその敵を倒せば良いのです」

「えっ?」


 私の答えに、シュリ君は驚きの表情を浮かべます。


「勇者はともかく、オトギンが? それは、ちょっと、無謀じゃないかな?」

「そうですね。最初は、あくまでも私以外の誰かを強くする方が可能性も高いと思っていたのですが。今は状況が違いまして」


 そう言って、私は有咲さんの方を見ます。


「な、なんだよ」


 理由が分からないのか、有咲さんは困惑しつつ、こちらを睨み返してきます。


「今は、私には有咲さんという強力な仲間が居ます。有咲さんの力があれば、まあ大抵のことは不可能ではないんじゃないかと」

「そ、そこまで言うか?」


 有咲さんが、照れたように頬を指で掻きながら言います。こちらとしては、本心を言っただけです。決して誇張したわけではありません。


「たしかその子も勇者の一人。スキルはカルキュレイター、計算が上手くなるスキルだったっけ?」


 シュリ君は、疑うような声で言います。


「そうです。有咲さんのスキルは、カルキュレイター。私が期待しているのも、他ならぬそのスキルなのです」

「へぇ。面白いね。理由が知りたいな?」


 私の言葉に、シュリ君は試すような笑みを浮かべます。そして、さらなる詳しい説明を求めてきました。


 ここから先は、推測や勝手な想像、期待が交じる話になります。それに、私の計画の核心部分です。あまり詳しく話すわけにはいきません。

 しかし、今日この場でシュリ君を納得させるには話さなければならない部分でしょう。


 私は意を決して、有咲さんのスキルの仮説について話をすることにします。

本文中の表現が分かりづらかった為、修正しました。


一万の騎士で一億のゴブリンを抑えるというのは、騎士が消耗し切る前に、横長の隊列で交代しつつ受け切るイメージでした。

これは解釈としてもあまり良くないと思い、数の方を確実に勝てる数字に変更しました。

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