08 お値段以上
おおよそ、照明に関する魔道具の価値については把握しました。
その上で、照明魔石の価格を考えてみましょう。
性能的に言えば、魔力ランプより優秀です。となれば、一つで金貨数十枚という値段になるでしょう。
と、考えてしまいそうになりますが、それは間違った値段設定になるでしょうね。
実際問題として、金貨数十枚は日本円で言えば数百万円です。実用品に、そこまでのお金をかける人が居るとは思えません。居たとしても、数える程度でしょう。
重要なのは、この商品が広く普及することです。たまたま上位の冒険者に金貨数十枚で売りつけても、それは一度きりの臨時収入です。継続的に利益を上げ続けるには、商品そのものが一般に求められなければなりません。
というわけで、性能的に妥当な値段でも、高すぎるというのはよくありません。
かといって、原材料とかかった労力から逆算するのもよくありません。クズ魔石と少しの魔力で作れるわけですから。やろうと思えば銅貨一枚でも利益が出せます。
けれど、そんなことをすれば既存の市場を過度に破壊してしまいます。誰も照明魔石以外を買わなくなります。そして私は、需要に合わせて膨大な魔石を死ぬ気で付与し続ける羽目になるでしょう。
さすがに、照明魔石を製造するだけで一日が終わるような日々は避けたいです。やりがいがありませんからね。
それに、市場破壊によって起こる悪影響は想像もつきません。どんな形で私の災いとなるのかも分かりません。同業者の恨みを買うのは間違いありません。また、需要の変化がどのような環境の変化を起こすかも分かりません。つまり、市場が読めなくなります。後の商売を考えるなら、そんな真似は止めておきたいです。
何よりも、薄利ですからね。もっと高い値段で売れるものを、わざわざ薄利多売にする必要はありません。
というわけで、値段設定の上で重要な点は三つ。誰もが手に入れられる値段であること。売れすぎによる増産で時間を食われないよう制御すること。競合する商品の市場を破壊しないこと。これらを満たす価格設定が、理想というわけです。
そうなると、参考にすべきはヒカリゴケのランプでしょう。ヒカリゴケは、繰り返し使える照明として一般的に冒険者に好まれています。つまり、ヒカリゴケの価格帯は冒険者にとって手を出しやすいものだということです。
けれど、同じ価格帯ではヒカリゴケと需要を奪い合います。そう考えると、照明魔石はヒカリゴケのランプのワンランク上位の魔道具として売り出すのが良さそうです。
ヒカリゴケのランプは銀貨数枚が主な価格帯で、十枚以上になるものはほぼありません。となると、照明魔石は十数枚程度の価格帯に設定するのが良さそうです。
魔石の大きさが蓄光で蓄えられる魔力量の差、そして発光量の差になります。なので、大きさの違いをそのまま商品ごとの価格差に出してしまえばいいでしょう。
となると、照明魔石の価格帯は銀貨十枚から二十枚程度に収めるのが良さそうですね。
今日は、夜にももう一話投稿します。