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06 看板とメイン商品




 私は家に戻ると、収納袋から幾つかのランプを取り出します。冒険用のランプですが、私はスキルのお蔭で必要ありません。なので、照明魔石が揃って完璧に稼働しだすまでの室内灯に使いましょう。


 既に日も落ち、暗かった我が家かつ未来の店内は、すぐにランプで照らされます。暗い部屋では作業が出来ませんからね。

 ちなみにランプは、クズでない魔石を使う魔力灯です。魔石は本来、こうした道具を使う為に決まった形のものを買うことになります。私もいくつか買って、収納袋に入れてあります。が、ランプの分はシュリ君に貰った荷物に入っていました。

 ほんと、なんでも用意してくれてますね。シュリ君大好きです。


 さて、そんなことより今日のうちにできる残りの作業を済ませましょう。


「さて、有咲さん。看板は出来ていますか?」

「おう、バッチリな!」


 そう言って、有咲さんは看板の方を指し示します。

 そこには『洞窟ドワーフの魔道具屋さん』と書かれた看板があります。おかしいですね。たしか私は『洞窟ドワーフ魔道具店』と書いてくれと頼んだはずですが。

 まあ誤差の範囲内でしょう。オペレーションを守らずアドリブで勝手なことをするのは学生バイトや年配の方の基本スキルですからね。これぐらいの小さなこと、気にしたら負けです。


「完璧です、有咲さん」

「でしょ? 可愛くしろっつたから、アタシなりに工夫したんだからな?」

「なるほど」


 恐らくそれで文面が変わっているのでしょう。確かに私が提案した名前より、可愛げがあります。

 当然、文字も可愛いフォントに仕上がっています。この看板を掲げれば、店が可愛く見えること間違いなしでしょう。


 そして店内には可愛い私。いえ、正確には可愛いと言われる洞窟ドワーフに似た私がいます。若い女性に人気がでるのも無理はないでしょうね。今から楽しみです。


「で、おっさん。商品ってのはどこにあんの?」

「ふふ。それはですね、これです!」


 私は不敵に笑いながら、有咲さんに照明魔石を見せつけます。

 見た瞬間、有咲さんが眉をしかめます。


「なにこれ、石?」

「光る石です」

「光ってねぇじゃん」

「今は光っていませんが、これから光りますよ」


 私は、照明魔石に魔力を僅かに流し込みます。すると、魔石はすぐに反応し、淡い光を放ちます。


「へぇ、けっこう明るいじゃん」

「どうですか。これがあれば二十四時間働けます」


 私が言うと、有咲さんは呆気にとられた顔をします。


「は?」


 そして威圧感のある声を出します。女の子相手でも威圧されると怖いので、勘弁してほしいですね。

 しかし私は威圧にも負けず、有咲さんに詳細を伝えます。


「この照明魔石があれば、二十四時間営業のコンビニを再現することが可能になるんです」

「再現してどうすんだよ」

「夜勤、ですかね」

「そうじゃねぇから。おっさんの働き方とか聞いてねぇから。コンビニ再現すんのにどんな意味があんのかっつってんの。分かれよ」


 ただひたすらにツッコミを入れられてしまいます。冗談を言った甲斐がありました。


「私はコンビニ業務以外の経験がありませんからね。コンビニを再現して、まずは形から入ろうと思います。そして私の知識と、この世界の需要とを照らし合わせながら、店を少しずつ変えていこうかと」

「で、売り物は?」

「それは、この魔石です」

「照明なんか、そんなに売れんの?」

「間違いなく売れますよ」


 私は断言します。これについては自信があります。値段設定等についてはこれから考えますが、かなり高額にしても売れるだろうと踏んでいます。

 少なくとも、最初の需要は爆発的なものになるはずです。


「ま、そういうのアタシ分かんないし。おっさんに任せるわ」

「はい、任せて下さい。ちゃんと有咲さんの生活は保証します」


 私が言うと、有咲さんは困ったように眉をしかめます。


「そういや、儲けなきゃアタシも生活できなくなるんだよな。頑張れよおっさん」

「はい、頑張ります。それに有咲さんも、今から頑張ってもらいますよ」


 言って、私は有咲さんの肩を掴みます。そして背中を押しながら、ある場所に案内します。


「おい、おっさん? なんだよ?」

「お仕事です」


 私は、有咲さんの目の前を指差して言います。そこには、付与魔法の魔法陣が描かれた板が一枚。


「簡単な作業ですよ。私が魔石を渡したら、それをこの円の中に置いて下さい。で、魔法陣に魔力を流す。すると魔石が光りますから、光ったら魔力を止めて下さい。魔法陣と魔石の光が収まるので、そうしたら完成です。こっちの完成品の山の方に置いて下さい。後は、同じ作業をひたすら繰り返します」


 単調作業ですので、これなら有咲さんでも任せられるでしょう。


「分かった。簡単そうだし、任せろ!」


 有咲さんは意気込んで、魔法陣の前に座ります。スカートなので、前から見ると下着が見えるかもしれないような姿勢です。

 ああでも、注意するとセクハラになってしまいます。黙っていることとしましょう。


「ん、どうしたのおっさん。早くしろよ」

「はい。急ぎます」


 私はもう一つの魔法陣の前に立ちます。そして収納袋から魔石を取り出しては付与魔法を施し、魔石を有咲さんに渡します。

 有咲さんは魔石を受け取ると、すぐに付与魔法を施します。ちなみに、魔法陣は私のスキルを指定して付与するようにしています。なので効果範囲に私がいる限り、魔力を流すのが有咲さんでも、ちゃんと私のスキルが付与されるようになっています。

 作業の効率化は基本ですからね。最初から、有咲さんに手伝ってもらうつもりで魔法陣を描いたわけです。



 そうしてこの日は、すっかり夜になるまで付与魔法を続けました。その甲斐もあり、貰ってきたクズ魔石の全てに付与が完了しました。

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