04 異世界召喚
実は私、この不良娘のことを知っています。
名前は美樹本有咲。結婚した僕の姉の娘であり、つまり姪っ子です。恐らく有咲さんは覚えてないでしょうが、小学生ぐらいの頃に会ったことがありますね。
あの頃と比べて、随分大人びています。が、顔立ちはあの頃の面影がそのまま残っています。髪や肌の色が違っても、私が判別できるぐらいに。
「おい有咲、おまえこいつの肩持つのか?」
「ちげえよ。こないだタカシがしょっ引かれたばっかだろ。手ぇ出すんじゃねえぞっつってんの」
「ちっ。おいおっさん! ナメてっとマジで殺すぞコラ!」
男三人は、有咲さんに説得されて引き下がるようです。
どうやら有咲さん、不良グループの中では一目置かれているようですね。
不良になっているのは頂けませんが、リーダーシップがあるのは良いことです。
と、私が無駄で関係の無いことに考えを巡らせた矢先のことです。
突然、六ツ賀谷高校の四人の身体を、まばゆい光が包みます。
「お、おい! 何だこれ!」
「眩しいじゃねーか!」
生徒たちは慌て、互いを見合わせています。
「おい、おっさん! テメェなんかしやがったな!」
有咲さんが、私を疑って胸ぐらを掴んできます。
「いや、私は何も」
「じゃあ何なんだよこれ!」
私に分かるはずがありません。コンビニ店員に、人を輝かせる力なんかありませんからね。有咲さんも、どうやらかなり混乱しているようです。
「ぶっ殺すぞおっさん!」
「テメエどうにかしろやコラ!」
「死にさらせボケェ!」
男三人も、私が原因だと思いこんでいるようです。困りましたね、光る高校生に囲まれてしまいました。逃げられません。
そうこうしている内に、光は強くなります。
そして光が高まり、景色が見えないほどになると、足元に魔法陣のようなものが出現します。
私は高校生に囲まれているので、きっちり魔法陣の中に入り込んでいます。
私が四人になにかしたというか、むしろ私が巻き込まれそうなぐらいですね。
困りました。今日はまだ寝ていないので早く帰りたいのですが。
「おいふざけんなよおっさん! これ消せよ!」
有咲さんが私に文句を行ってきます。でも無理なので、何も言えません。どうしたものか、と考え込みます。
やがて足元の魔法陣も光を放ちます。
そして魔法陣の光が私たちの身体を包んだ後、意識を失ってしまいます。