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02 その後の人々




 遊ぶゴブリン達を有咲と共に眺めながら、俺はここ十年で起こったことに思いを馳せる。




 金浜蛍一。


 彼は童鬼事変解決の立役者としてルーンガルド王国へ凱旋。

 功績を認められて新たな辺境伯となり、大森林自治区方面、つまり俺の国のすぐ隣に当たる領地を貰い、一国一城の主となった。


 妻は五人もいるらしく、さすが勇者、と関心してしまった。


 今では領民の生活を豊かにする為、西へ東へと駆け回っているらしい。

 勇者の剣技を荒れた土地にぶっ放し、新しい農地を開墾したというユニークな知らせが来たのはいつだったか。




 東堂陽太。


 東堂流超必殺剣術という流派を立ち上げた彼は、しかしスキルだよりの感覚派だった為、門下生には次々と逃げられていた。

 しかし五年ほど前に、かつて東堂に助けられたと名乗る少女が道場に押し掛けてくる。


 幸いにも理論派としての才能を持っていたその娘が、彼の言葉を理解しやすく翻訳することで、東堂流超必殺剣術改め『東堂一伝流』となり、少しずつ門下生を増やしつつある。


 しかしここで調子に乗った、もとい余裕が出来た彼は、自分の流派よりも野球をこの世界に広めようと活動を開始。

 この世界にルールブックが無く、本人も感覚でやってきた為に、細かいニュアンスが伝わらず四苦八苦しているのだとか。


 いくら剣聖の名声があるとはいえ、俺が死ぬまでに普及するのか見ものである。




 松里家勇樹。


 感度三千倍にする魔法を研究していたので、力付くでやめさせた。

 シュリ君に趣深い理由で呼び出され、ノリノリで出向いた部屋に彼が待っていた時、自分の判断が正しかったと確信した。


 勇者パーティの賢者としての実力は確かなもので、今ではシュリ君に代わりルーンガルド王国の宮廷魔術師として活動している。




 レイモンド・シューリヴァリウス・マクスウェル、ことシュリ君。


 彼はルーンガルド王国の宮廷魔術師をやめ、我が家の地下研究所で日夜好き放題な研究を続けている。

 なお、半分ぐらいは怪しくない研究なので問題は無い。


 ところで彼は去年、いつの間にか彼の血を引く子供をこさえていた。

 もう一人の親は誰、とか、どうやって、とか様々な疑問が湧き上がったが、全ての情報は非公開とされた。




 ティアナ。そしてティオ。


 二人は元より冒険者として成功していたものの、童鬼事変でさらに名を上げた。

 そんな二人が大森林自治区に住んでいるということで、ルーンガルド王国から数多くの冒険者がこちらに移住。

 幸いなことに行儀の悪い冒険者は少なく、二人に憧れる親衛隊のような奴らが殆どだった。


 現在は、大森林自治区独自の制度で運用する冒険者ギルドで看板冒険者として活動。


 義理の父親である俺との怪しい関係を噂されているようだが、そのような事実は一切ない。

 二人のスキンシップが激しい為に起こる勘違いだろう。




 ローサ。


 彼女は俺の養子となり、乙木商事の複数の部署で役職持ちとなった。

 実務は服飾部門のみだが、その他の部署からの要望を上に通しやすくするため、顔だけ貸しているような状態だ。


 そんな彼女はルーンガルド王国の王都での事業総括という役職もあり、普段は王都で働いている。

 自身の出身である孤児院への恩返しをしやすいという側面もあるのだろう。


 年に一度、大森林自治区へ帰って来るのだが、彼女が甘えたいだけ甘えさせてやっている。




 サティーラ。


 魔王領とルーンガルド王国の戦争状態が解除され、三年前に魔王軍は解体。領内の各州に分割して配備され、現在は州軍として規模は縮小されたものの残っている。


 彼女はそんな州軍の中でも、天州という有翼種の亜人が治める州に異動となった。


 光と闇を同時に操る姿から、一部の若者から強い憧れを抱かれているらしい。




 レオニス。


 サティーラ同様、州軍に異動。亜州の州軍にて将軍を務めている。

 様々な種類の亜人が共存する州であり、その在り方は今後のルーンガルド王国と魔王領の関係、ひいては大森林自治区にとって重要な意味を持つ。


 度々視察に訪れては、その都度顔を合わせている。

 ヴラドガリアを尊敬する気持ちは今でも変わらず、近況を聞かせろとうるさい。




 イチロースズキ。


 人州の州軍にて将軍を務めてほしいとの声もあったが、本人が辞退。

 誰かを支える生き方が性に合っていると語り、大森林自治区にて冒険者の資格を得た後、人州へと戻った。


 人州に住むのは大多数が人類。亜人と比べ力が弱く、捕虜や土地を追われた少数民族等の子孫が大半であるため、その立場を軽んじる亜人は多い。

 故に人州のほぼ全域で発展が遅れており、このご時世に未だ魔物の危険に怯える集落も少なくない。


 そんな人州に冒険者ギルドの進出を持ちかけ、実現し、善意の冒険者として各地を巡り魔物の討伐に勤しんでいるのが彼だ。

 両手で振るう風の剣から『風十字』の異名で呼ばれ尊敬されているそうだ。




 メティドバン


 童鬼事変後、同様の災害を未然に防ぐための研究に全てを掛けた。

 呪詛、呪怨の力について最近まで研究を続けていたが、限界を感じていた。


 やがて人成らざるモノ、アンデッドの中でも知性を持たず、どこから来るのかも分からない、正体不明の者たちを調べるために旅に出る。


 そういった存在の多くは魔王領の中でも腐海自治区と呼ばれる、外界と隔絶された不毛の大地に生息している。

 当然彼は研究の為、腐海自治区へと足を踏み入れた。


 以来、彼の姿を見た者はおらず、その研究が実を結んだのかどうかも不明となっている。

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