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05 若い力




 また別方面で、武将童鬼と乙木商事の戦力が衝突しようとしていた。

 ティアナとティオ。そしてジョアンの三人と、なんと五体もの武将童鬼だ。さらに、数十体の通常童鬼を引き連れている。


「手応え十分、って感じかな?」


 ジョアンが言うと、ティアナとティオも頷いて言う。


「我らが新装備の」

「サビにしてくれる」


 二人は言うと、それぞれの剣を鞘から抜き放ち、構える。

 すると、剣の柄に装着されている魔石のような物質が光を淡く放ち、音声を発する。


『インテリジェンス・ソード。起動』

『連携AI、学習機能、共にグリーン』


 二人が構えたそれぞれの剣から、二人と同じ声質で、どこか機械的な音声が発せられた。


 これが、乙木商事が最近になってようやく開発に成功した、超越した実力を持つ個人の為の専用装備、インテリジェンス・ソードである。


 この装備は単に剣として優れているだけではない。使うほどに、使い手の能力を学習し、剣を通して放つ魔法の使い方から、身体強化、果ては剣の振り方に至るまで補助をしてくれる。


 しかも、この補助は機械的で画一的な補助ではない。状況に応じて、剣の振りに応じて、使い手の呼吸に合わせるように有機的な補助効果を発動する。

 さながら、もう一人の自分と共に連携を取って戦うかのように。


 個人の戦力が兵器を超越するからこそ、その個人の戦力を最大限に伸ばす武器こそが、最強の武器とも言える。そんな設計思想により生み出された武器だ。


「まあ、二人は待ってなよ。俺もダーリンが作ってくれたこの剣の力を試したいし」


 言って、ジョアンが前に出る。剣を抜くと同時に構え、臨戦態勢に入る。

 インテリジェンス・ソードだけでなく、ジョアンの為に最大限チューンナップした特注品のトランセンドアーマー、強化外骨格型の鎧も稼働を始める。


 やる気満々のジョアンを見て、ティアナとティオは身を引く。


「おさきにどうぞ」

「べつに全部倒してしまってもかまわないよ」


 その言葉が皮切りとなった。


「緋炎蹴撃ッ!」


 ジョアンはインテリジェンス・ソードとの連携力を高める為の音声入力、俗に言う技名を叫ぶ。

 同時に、最前列に突っ立っていた通常の童鬼へと飛び蹴りを繰り出す。


 単なる飛び蹴りではなく、燃える炎を纏った空中での連続飛び蹴り。インテリジェンス・ソードとトランセンドアーマーで強化された攻撃は容易く童鬼を吹き飛ばす。


「紅蓮扇ッ!」


 空中での連続飛び蹴り技、緋炎蹴撃から次の技に繋げるジョアン。吹き飛んだ童鬼に向けて剣を振り、刃を象った炎が飛んでいく。

 扇で仰ぐような大ぶりから放たれた炎剣は、回転しながら勢いよく童鬼に衝突し、炸裂と斬撃のダメージを同時に与える。


 一方で、紅蓮扇の反動で少し後退したジョアンは、間合いをコントロールする為にも次の技に繋げる。


「灼火繚乱ッ!」


 剣を握っていない方の手を突き出し、手の平に向けて集まる炎の渦のような魔法を放つ。

 これに複数の童鬼が囚われ、ジョアンが腕を引くと同時に強い力で引き寄せられる。


 そしてジョアンは、寄ってくる童鬼にさらなる技を追撃する。


「爆犀功砲ッ!」


 手に集めた炎が、犀、ではなく良く似た魔物の姿を象って、これが砲丸のような重たい一撃として拳を突き出すと同時に放たれる。

 複数の童鬼を纏めて巻き込んだ爆犀功砲は、直撃した数体の童鬼に深刻なダメージを与え、手足を欠損させる。


 だが、これぐらいはまだまだ序の口。技を繰り出すほどに連携力が高まり、より強い技を繰り出せるようになるのがインテリジェンス・ソードの強みだ。

 ここから、真の破壊力を発揮する。


「魔神炎獄剣ッ!」


 爆犀功砲だけでは巻き込めなかった童鬼も纏めて、巨大な炎を纏った剣閃が叩き切る。

 炸裂する業火と、溜めを作り振り上げられた渾身の剣戟によって、直撃した全ての童鬼が両断。そのまま消滅する。


 寄せた童鬼を全滅させたジョアンは、さらに次の童鬼に狙いを定める。


「朱雀襲爪撃ッ!」


 高く飛び上がったジョアンは、翼のような炎を纏い、勢いよく童鬼の群れのど真ん中に向けて飛び込む。

 その勢いのまま、地面に剣を突き立てると、炎が炸裂。

 近寄ってきたジョアンに向かって、好機とばかりに腕を振り上げた童鬼はみな怯み、動けない。


「鳳凰裂波ッ!」


 さらにジョアンは、身に纏った翼型の炎を、そのまま剣にも宿し、これで回転斬りを放つ。

一度目の回転で周囲の童鬼を斬りつけ、二度目の回転の終わり際に翼型の炎を正面へと放ち、遠間の童鬼にも攻撃を食らわせる。

 巻き込まれた童鬼は、既に瀕死の状態である。


「ハァァァアアッ! 俺たちは、負けないッ! 天光緋翔斬ッ!」


 ジョアンはより巨大な炎の翼を身に纏い、さらに遠間の童鬼に向けて突撃する。

 その過程で周囲に振りまいた炎だけでも、数多くの童鬼が深刻なダメージを負う。


 さらに、突撃を直接当てた童鬼は一撃で消滅。そのまま飛び上がるような斬り上げ攻撃で、周囲の童鬼へ追撃の炎を飛ばす。

 そして着地と同時に剣を地面に突き立て、また炎を炸裂させ周囲にダメージ。


 一連の動きで数多くの童鬼を屠ったが、これで終わりではない。


「焼き尽くすッ! 絶剣紅縛殺ッ!」


 これまで撒き散らした炎が、童鬼の体を拘束しつつ燃え盛る。

 動きを止められた無数の童鬼を、巨大な炎の刃を剣に纏わせ、突撃しつつ一撃で纏めて切り払うジョアン。


 これまで炎に巻き込まれつつも生存していた童鬼全てが、この一撃で両断され、全滅する。

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