02 最新鋭の攻撃兵器
作戦は、まず戦車や自走砲、戦闘車両による一斉砲撃で開始された。
乙木商事の戦車が持つ主砲は、地球のように砲弾を必要とはしない。土属性の魔法により、資材をその場で砲弾として形成する。
また、砲弾の推進力も魔法によるもので、火薬を必要とせず、砲身全体での加速が可能だ。
故に砲身への熱や衝撃による負担が極めて少ない状態で、マッハ六を超える速度で発射可能となっている。
自走砲については、砲弾を事前に作り用意する仕様である為、一発のコストが高い。が、一方で砲弾そのものを魔道具に出来る為、着弾と同時に破壊的な効果を持つ魔法を放つことが出来る。
使われている技術は、基本的には炸裂弾を魔法で強化したようなもの。着弾と同時に炸裂と、強烈な渦状の運動エネルギーが発生し、破裂した砲弾の残骸が周辺をズタズタに引き裂く。
高エネルギーが瞬時に発生する為、自然と砲弾の残骸は赤熱し、灼熱の竜巻のようなものが発生する。
これらの砲弾を一斉に、集中的に浴びせることで、童鬼へのダメージを狙う。
ただ、残念ながらこれでも童鬼を倒すには足りない。ステータスSSSSSとは、それだけ異次元の存在なのだ。
あくまでも、この攻撃は童鬼の持つリソースを奪う、つまり他の防御行動等を取らせない為に行っているのだ。
つまり、砲撃によって童鬼をその場に釘付けにすることで、本命の攻撃が始まる。
本命とは、航空戦力による空爆。つまり、乙木商事の技術の粋を集めて作った高性能の爆弾で童鬼を葬るか、あるいは吹き飛ばして道を空けるのだ。
砲撃が始まって間もなく、航空戦力が出発。童鬼の上空から、数々の爆弾が落とされた。
乙木商事で扱っている爆弾の中でも、特に威力の高いものが、今回使われている重力波爆弾である。
一定範囲に、極端に重力の大きさが違う場を発生させる。さながら波のように重力場は広がり、その力で空間異常を起こし、断裂させる。
物体の強度に関係なく、空間がねじ曲がって起こる断裂であるため、高い耐久力がある魔物でも耐えることは出来ない。
ただ、これでも童鬼は即死に至らない。重力波爆弾が単発では、その肉体が大きくひしゃげるだけで、断裂には至らない。複数の重力波が重なって、ようやく断裂出来る。
この重力波爆弾により、かなりの範囲で童鬼の殲滅が確認出来た。
しかし、戦いはこれからだ。集中的な爆撃を必要とする為、この攻撃で童鬼を殲滅出来た領域は、数キロ程度。重力波爆弾が、範囲よりも威力を重視した代物であることも影響しているだろう。
ここから、幾度となく爆撃を繰り返し、地中海までの道をこじ開ける。
長い戦いが始まった。
爆撃を繰り返すこと四回。かなりの範囲で童鬼の排除に成功し、此方側の戦力も闇に侵食された大地に少しずつ足を踏み入れ始めた頃。
ついに童鬼による明確な反撃が始まった。
他の童鬼と比べて明らかに体格が大きな、武器らしきものを手にした様子の童鬼が姿を表したのだ。
これを、メティドバンはキャンディゴブリンの中でも戦闘能力が高かった、当時の武将に似た特徴があると語った。
仮称として、この童鬼を『武将童鬼』と呼び、対処に当たる。
特徴としては、やはり動きはステータス相応のものではない。耐久面と、一撃必殺の攻撃力以外は普通の魔物と言えた。
通常の童鬼と異なるのは、この武将童鬼の動作のレベルが高い点だ。
個体によって動きに違いはあるものの、どれもステータスで換算すればSを超える程度の魔物なら可能な行動をする為、これまで通りの方法では撃破するのが難しい。
そこでついに、突出した個人が対処に出ることとなった。





