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04 決意の夜に




 俺が童鬼を叩く、と決めてから、会議はトントン拍子で進んだ。

 目標は、童鬼が発生する領域、地中海の底にある闇の領域への俺の到達。総力を以て俺をそこへと送り込み、そして俺が呪詛の力で闇の領域へと干渉する。


 そこから先は、良く言えば臨機応変。悪く言えば行き当たりばったりだ。

 不明な事が多いから仕方ないとは言え、ほぼ俺の呪詛の力と、現場での対応力に依存する作戦。いや、作戦と呼べるほどのものですら無いかもしれない。


 だが、これ以外に出来ることが無いのも事実だ。

 無限に増え続ける、ステータスSSSSS相当の化け物への対処などそもそも不可能。好転する可能性のある賭けが、これしか無いと言った方が正しいのかもしれない。




 会議が終わった、その日の夜。屋敷の縁側で、いつだったかのように月を見上げる。

 シャーリーと共に龍神と会い、帰ってきた日のことだったか。


 あの日、俺は改めて自分にとって大切なものが何か、思い返したはずだ。


 自分本位に生きるのでは無く、家族の為に生きようと。その覚悟が決まった日だった。


 同じように月を見上げて、やはり俺の思いに揺らぎが無いことが分かった。


「雄一」


 呼ばれたので振り向くと、有咲が近寄って来る。

 そして隣に座った後、俺の手の上に有咲の手が重ねられた。


「ねえ、本当に行かなきゃダメなの?」


 有咲の問いに、首を横に振る俺。


「有咲も、分かってるだろ?」

「でもっ! 雄一が、消えちゃうかもしれないなんて、嫌だよっ!」


 有咲は、涙を流しながら思いを言葉にして、叫んだ。


「嫌だけどっ! でも、引き止めらんない。それが最善だって、分かるから」


 この結論には、カルキュレイターのスキルを使うまでもない。俺以外、誰も童鬼に対抗出来ないのだから。

 希望があるとすれば、俺の呪詛の力が持つ可能性だけ。


 それが分かっているからこそ。賭けに勝たねば、破滅的な未来が待っていると分かるからこそ。有咲は、俺の決断を否定できないんだろう。


「ごめん」


 俺は、有咲を抱き寄せ、謝る。


「ううん。分かってるから、謝んないで」


 有咲は、俺の胸の中に頭を埋める。

 そんな有咲を慰めるように、俺は出来る限りの言葉をかける。


「そもそも、この戦いで必ず神に至ると決まったわけじゃない。俺も、そうならないよう最後まで努力する。ちゃんと帰ってこれるように頑張る。だから、待っていてくれないか?」

「っ、うん」


 俺が言うと、有咲は小さく頷く。


 そして有咲は俺から離れると、ポケットから小さな、球体状の魔道具を一つ取り出した。


「これ、ウチで開発中の緊急用転移魔法発動装置。貴族の屋敷が幾つも建つぐらいの値段がするし使い捨てだけど、世界中のどこからでもここに帰って来れるような魔法が発動出来る」


 言って、有咲はその魔道具を俺に渡してくる。


「何があっても、帰ってこれるように。雄一に渡しておくから」


 有咲の思いと共に、俺は転移の魔道具を受け取る。


「ありがとう、有咲」


 俺は、有咲を抱き寄せ、額にキスをした。




 翌日。乙木商事だけでなく、俺の伝手で頼れる全ての戦力が童鬼対策の為、動き始めた。

 当然、大森林自治区の俺を含む全戦力も、地中海へと出発する。


 こうしてとうとう、童鬼討伐作戦が開始された。

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