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02 ステータスエラー




 俺の提案に全員が頷く。特定出来るわけではなくとも、より詳細に、具体的に神へ至る条件を整理したいというのは、全員考えていることなのだろう。


『じゃあ、まずはステータスのERROR表記についてだね?』


 シュリ君がまず口を開く。


『勇者アヴリルの手記によると、ステータスはまずSSSSSに到達した。その後しばらくして、正確には魔王を討伐した後、ERROR表記に変わった。つまり魔王討伐が、SSSSSとERRORの境目になってるんだよね?』

「ええ、そうですね」

『ってなると、やっぱり召喚者同士の殺し合いがスキルだけじゃなくて、ステータスにも影響を与えてるんじゃないかなって思うんだよね』


 シュリ君の推測に俺は納得する。確かに、ステータスがSSSSSから成長してどこかでERRORになる、と考えるには、タイミングが噛み合いすぎている。


『だからここからはボクの、推理にはなっちゃうんだけど。召喚者同士で殺し合うことで起こるのはスキルの収奪じゃなくて、もっとこう、魂的な何かを殺した側が全て奪い取る、一種の儀式みたいなものなんじゃないかなって』

「儀式、ですか」

『うん。もっと言えば、レベルアップっていう現象を、もっと極端に効率的にするシステムみたいなものが、召喚者には組み込まれてるんじゃないかなって思うんだ』


 シュリ君の見解は、なかなか興味深いものだった。


『この世界のあらゆる生物は、経験値を得て、レベルが上がり、強くなっていく。この過程そのものが、実は神として必要な力を蓄える為の仕組みなんじゃないかなって思うんだよね。で、普通の手段でレベルを上げても、ステータスがSSSSSに到達しても、実はまだ足りない。見かけ上は最大値まで育っていても、実際はまだまだ上がある。そこを目指しやすくする為に、召喚者には莫大な経験値が与えられていてもおかしくないよね。神様自身が召喚者を作ったんだから、その召喚者に莫大な経験値を持たせていても不思議じゃない』

「ですが、その理屈だと召喚されたばかりの召喚者を殺すだけで莫大な経験値が得られることになりませんか?」

『うーん、そうだよねぇ』


 試したわけではないものの、例えば召喚されたばかりの私を金浜くんが殺すだけでレベルが大幅にアップ、ステータスも一気に成長して最強に! となるような状況は考えづらい。わざわざ召喚者同士で、殺し合うことを神が推奨しているようなものだ。

 召喚者が神に至ることを、既存の神は望んでいる。であれば、神に至る可能性を持った存在の数が減るような戦略は取りたくないだろう。


『であれば、分けて考えて見ましょう。必要なパラメーターは二つ存在する、と』


 ここで、松里家君が話に入り込んでくる。


『一つはレベル、あるいはステータス。召喚者は、これを高めることで神に至る条件を一つ満たす。もう一つは、そうですね、魂の大きさ、とでも言いましょうか。レベルとは別に、誰かを殺すことで魂を吸収する仕組みを召喚者は持っている。吸収した魂の量に応じて、召喚者の魂は大きく成長する』

「なるほど。レベルやステータスを魂の強度、と解釈するとさらに納得が出来る話ですね。大きさと強度、どちらも条件を満たして初めてERROR表記になる、と」


 俺と松里家君の推測を聞いていた有咲が、不意に気づいたように口を開く。


「ってことは、もしかして召喚者同士で殺し合った時に起こることは、神様にとっても想定外、つまりバグみたいなもんってこと?」

「っ! 有咲、そこのところ詳しく!」


 有咲の気付きに、俺だけでなくシュリ君と松里家君も手応えを感じたのか、期待するような視線を寄せる。


「普通の生物は魂を吸収しないで、その大きさを変えられないとするでしょ? で、レベルアップすることで強度だけが増していく。そんで召喚者はイレギュラーで、魂を吸収するシステムが追加で組み込まれてるわけじゃん? ってなると、その追加で組み込まれたシステムの分、召喚者の魂を吸収すると一気に大きくなる不具合が生まれたって不思議じゃないでしょ?」

『なるほど。それなら神が召喚者同士で殺し合うことを望んでいなくとも、結果的に殺し合いが効率的になってしまうこともあるだろうな』


 松里家君が納得した様子で呟く。


「ま、どっちが先かわかんないけどね」

『どっちが先、とは?』

「特殊システム付きの召喚者が先にあって、その餌として魂吸収プログラムを省いた生き物をこの世界に作ったのかも知んないじゃん? だとすると、なんで召喚者同士で殺し合うのが効率的になってんだよ、不自然じゃん、ってツッコミは結局避けらんないし」


 有咲の理論は確かに穴があるが、大枠では利用できると思う。


「そもそも、神に至る条件についての予測が目的です。真実がどちらにせよ、まずは本題を整理しましょう」


 俺が言って、話を纏める。


「勇者アブリルが魔王を殺してERROR表記に至ったこと。龍神の証言、SSSSSがERROR表記に至る条件という話。これらを総合すると、やはり条件は二つあると考えていいでしょう。例え話として、魂の大きさと強度という言葉を使うと、ステータスが魂の強度。隠された条件が魂の大きさ。このどちらも十分に成長することで、初めてステータスがERROR表記になる、と考えられます」

『龍神様は魂の大きさが、勇者アブリルはステータスが先に条件を満たしたから、見かけ上違うタイミングでERROR表記に到達したように見える、って解釈だね?』

「そのとおりです」


 シュリ君の確認を頷いて肯定する。


「そして召喚者同士の殺し合いが、実際に魂の大きさ、あるいは強度を急激に成長させるかどうかは確定出来ません。しかし、可能性は高い。勇者アヴリルが魔王を殺した途端にERROR表記となったことを、偶然で片付けるのは都合が良すぎますから」


 俺が纏めた話に、全員が納得した様子で頷いた。

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