07 アヴリルと魔王
異世界 八十六日目
今日、魔王軍から守った村で見覚えのある食べ物を見つけた!
確か、日本の有名な食材だ。真っ白で、角ばってて、不透明なゼリーみたいなやつ。
食べて見ると、食感もゼリーに似ていた。
リヒトは『見た目は豆腐で、食感と味はコンニャクみたいだ』って言ってたけど、豆腐って腐った豆だよね? 全然似てないと思う。
で、途中で思い出したの。確か日本食の白いやつ、大豆から作ってたはず。
色々やって、箱に詰めて、固めたものがあの白いやつだったはず。
ってことは、豆を箱に納めて作る料理だから、名前は納豆だったに違いないわ!
だから私は村の食べ物を、納豆みたいで美味しいわ! って評価してあげたの。そうしたら、リヒトに頭を叩かれたの。
うーん、未だに納得がいかないわね。
異世界 九十三日目
魔王軍のスパイが国に侵入してるって話で、前線を離れた。
目的地は、この国にいる伝説のドラゴン、龍神様っていうエンシェントドラゴンを守っている村。
どうやら魔王軍は、エンシェントドラゴンを欲しがっているらしい。
異世界 九十四日目
エンシェントドラゴンを狙うスパイはあっさり見つかった。
沢山の魔物を殺した私が相当憎かったのか、感情が隠せていなかった。
あっさりと仕事が終わって時間が出来たから、せっかくだしエンシェントドラゴンとお話していくことにした。
リヒトは弱っちいから付いてこれないので、村に置いてきた。
エンシェントドラゴンは色んなことを教えてくれた。ステータスの最大値は、SSSSSなんだって。
今の私はSSSS+。もうちょっとで最大値に届く。
異世界 百十五日目
今日のレベルアップで、記念すべき出来事があったので記録しておく。
なんと、ついに私のステータスが全てSSSSSに到達したの!
エンシェントドラゴンの話のとおり、これが最大値なんだとしたらうれしい。
もしかしたら、ようやく魔王と戦える地力が付いたのかもしれないんだから。
異世界 百十六日目
私のステータスがカンストしたみたいだから、いよいよ魔王と戦う作戦が立てられ始める。
って言っても、魔王の居場所はいつもリヒトが把握している。あとはそこへ向かって、魔王を倒すだけ。
国の人たちは魔王軍の陽動がどうとか言ってたけど、大して変わりないと思う。私が強すぎて、雑魚では消耗すらしないから。
でも、作戦が決まるまでは勝手に動けない。
だから最終決戦前の時間を、近くの街でのんびり過ごすことにした。
街をブラブラしてると、黒髪黒目の夫婦が赤ちゃんを抱いてこちらに近寄ってきた。
真の勇者である私に名付け親になって欲しかったらしい。
黒髪黒目の偉大な人物といえば、イチロースズキだ。ベースボールで伝説を残した偉大な日本人。
だからその子には、イチロースズキと名付けてあげた。由来もご両親に教えてあげた。
ただ、ベースボールは理解できないだろうから、私の生まれた国にいた伝説の英雄ってことにした。
まあ、大きく間違ってないし問題ないわね。
異世界 百十七日目
作戦が決まったので、いよいよ魔王討伐に向かう。
でも、その前にミユキに呼び出された。
行ってみると、なんと私の似顔絵を描きたいって話だった。
しばらくじっとしていると、ミユキは似顔絵が完成する直前で手を止めた。
この絵を完成させたいから、無事に帰ってきてって言われた。
必ず帰るわ。私が真の勇者だもの。
異世界 百十八日目
酷い話だ。
魔王と戦いながら、話をした。
色々なことを初めて知った。
魔王もまた、魔族によって異世界から召喚された勇者だった。
地球出身じゃないから、世界は違っていた。でも、境遇は同じようなものだった。
しかも魔族は、最強の勇者を作るために、勇者同士で殺し合わせて、最後に生き残った勇者を魔王にしたんだって。
そうやって生き残った魔王は、ただ死にたくないから戦い続けたらしい。
そしてもう一つ、最悪なこと。勇者同士で殺し合うと、殺した相手のスキルを奪えるらしい。
だから魔王は、幾つもチートスキルを持っているみたいに強かったんだ。
激戦だった。けど私にはアレンジがある。
仲間の力だけじゃない。魔王のチートスキルも見て覚えた範囲でアレンジした。
戦うほどに私が有利になって、最後は私が勝った。
つまり私は魔王を殺して、そのスキルを全て奪ったのだ。ステータス欄には、アレンジ以外にも沢山のスキルが載っていた。
そして、これは、今でも混乱してるんだけど。
SSSSSって書かれてたはずのステータスが、なぜかERRORになっているの。
これって、どういう状況なの?
私は、どうなってしまったの?





